消費者はブランドと「価値交換」を意識してデータ提供するも、過剰なパーソナライズは逆効果 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」
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公開日2019/11/25

消費者はブランドと「価値交換」を意識してデータ提供するも、過剰なパーソナライズは逆効果

ブログソフトウェアWordPressのホスティング会社である米国のWP Engineは、同社の依頼によって、ロンドン大学の研究員と英国の市場調査会社Vanson Bourneのアナリストが実施した、「人工知能(AI)がウェブ上での人間のデジタルエクスペリエンスにもたらす影響と、消費者、ブランド、人工知能の関係について」の研究結果を発表した。英国、米国、オーストラリアの消費者および従業員1,000人以上の企業を対象にしたこの調査によって、目的志向消費の時代において、透明性、信頼、人間らしさなどの価値こそが、AIの価値を引き出す重要なカギであることがわかった。

 

米国のグローバルプロバイダIDCは、AIシステムへの世界的な支出は、2018年と比べて44%増加し、358憶ドル(278億ポンド)に達するとしている。この支出増加の大部分を、オンラインでのAI導入が占めている。

 

Chartered Institute of Marketing(英国公認マーケティング協会)の調査によると、この1年間 EU一般データ保護規則(GDPR)とデータに対する権限を消費者に与えるように設計されたプライバシー規制に重点を置いてきたにもかかわらず、英国の消費者の48%は、まだブランドがどのようにデータを活用しているか知らないという。そして、自分の個人情報とオンライン行動のプライバシーについてまだ不安に感じているようだ。消費者は、企業に対して個人データ保護を優先し、使用、収集、評価についての透明性を要求しているため、ほとんどの企業は倫理、データ保護、消費者の権利が持つ役割に関して必要な対話を始めている。

 

英国では、消費者と企業の両方が、データのプライバシーとセキュリティ保護などの問題を重要視している、と回答。そして、企業にはデータを使用する目的、パーソナライゼーションの程度、データ交換における明確で直接的な評価などに対する明確な説明責任が求められている。

 

デジタルエクスペリエンスに参加する際に、ブランドとの間で発生する「価値交換」を意識し、認識しているデジタルユーザーが増えつつある。予想通り、個人情報の共有と引き換えにより良いサービスを受けたいという欲求は、ミレニアル世代が一番高く、年代が上がるほど、パーソナライズされたサービスのために個人情報を提供することを望まない。

 

データ共有は、パーソナライズされたサービスにつながる。この点において、例えばAIは、暑い日にアイスクリームショップの前を歩いているユーザーに対しアイスクリームの広告を表示するというような、非常に高い能力を発揮する。それでも消費者は、そのような広告が、立ち入りすぎて煩わしいと懸念するものだ。英国の消費者の87%は、「気味が悪い」と感じないパーソナライゼーションが重要だと感じており、英国の企業の77%は「気味悪さを避けることが極めて重要だ」と答えている。

 

WP Engineは、今回の調査から、ブランドや企業にとって、重要なポイントいくつか示している。1つ目はアルゴリズムをオープンにすること。仕事の割り振りや、ローン審査、大学入学選考などの重要な決定にAI駆動のプラットフォームを利用する企業が増えている。したがって、これらの決定をアルゴリズムがどのように行うかについてユーザーからの懸念が高まっている。英国の消費者の93%は、パーソナライズされたオンラインエクスペリエンスを構築するために、自分たちのデータがどのように使われているのか透明性のある組織であることが重要だ、と感じている。こうした点を踏まえ、組織は、AIの価値、主に信頼と透明性を、戦略に組み込む必要性を認識している。英国のIT意思決定者の42%は、「AIを使用してユーザーエクスペリエンスをパーソナライズする方法を透明化することが重要だ」と言っている。

 

2番目は、バイアス(偏り)に注意することだ。英国のIT意思決定者の82%は、組織と使用するデータセットにバイアスがないかを自問することが重要だと考えている。この点は、特に、管理のプロセスにより、ブランドの物事のやり方を変えることができる「教師あり学習」と「機械学習」のデータセットに関連性がある。そして、これにより、さまざまな変化に富んだ声を維持する多様で包括的なチームを作る機会を得る。IT意思決定者の80%は、AIシステムを構築し維持するチームは多様であることが重要だ、と考えている。

 

3番目は必要なものだけを使うこと。GDPRにより、世界ではどのデータをどう使うかについて、政府が構造を整えるようになった。このレポートでは、消費者の86%は、組織が使用していないデータの追跡を望まないことがわかった。また、英国の消費者の93%が、組織に自分たちのデータで何をしているのか説明してほしいと思っている。

 

最後に、顧客志向であること。自然言語処理と会話型AIの進歩のおかげで、チャットボットとデジタルアシスタントが人間担当者にかなり近いところまで真似できるようになった。実際、調査に回答した消費者の56%は、カスタマーサービスにチャットボットやデジタルアシスタントが用意されていることが重要だと回答し、企業の82%がそのようなAIを用意していると答えた。しかし、回答した消費者の85%は、チャットボットや顧客向けアプリケーションにAIを使用する場合、いつAIが使われているのかを明確にするべきだと考えている。英国の消費者の85%は「企業がチャットボットや同様の顧客サービスとのやり取りにおいてAIを使用することを開示する義務がある」に「非常にそう思う」と答えた。また、ITの意思決定者の77%は、カスタマーサービスでのチャットボット導入に関して言えば、ユーザーに人によるサービスではないことを知らせる必要がある、と考えている。

 

「AIが企業のデジタル構想にもたらす長期的な利益は、倫理的意思決定価値のコアセットとブランド価値を整合する重要性と深く関係している」と語るのは、WP Engineのヨーロッパ、中東、アフリカ担当MD、Fabio Torlini氏。さらに「AIの収益促進力を、顧客が期待する信頼と安全、価値とうまく統合したブランドは、強力なデジタルエクスペリエンスを生み出すことに成功するだろう」と述べた。

 

ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのイノベーションディレクター、Chris Brauer博士は「私たちの調査によると、AIに投資している企業は、すでに、驚くべき投資利益率とパフォーマンス成果を生み出している。消費者は、デジタルエクスペリエンスにおけるAIの革新が、プライバシーや信頼、透明性の価値を優先し、明確に示すことを望んでいる。AIソリューションのすべての面を実現させる倫理と価値の強固な基盤を築くことによってのみ、企業はAIの本当の価値を完全に活用できるようになるだろう」と語った。

詳細レポートはこちらから。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の11/15公開の記事を翻訳・補足したものです。

 

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