位置情報や時間情報の進歩に伴い、今や広告主による消費者の動向の追跡と、屋外広告の効果測定が可能に。

英国に本拠地を置く世界最大級のプロフェッショナルサービスファームPricewaterhouseCoopersによると、デジタル屋外広告は2010年から35%増加し、2020年までに従来の屋外広告への広告出稿費を超えると予想されている。さらに驚くべきことは、屋外広告は2018年に唯一成長した従来型メディアカテゴリーで、世界純広告収入予測によると収益は335億ドルに上ったということだ。

 

米国のオンラインストリーミングサービスNetflixはロサンゼルスのSunset Strip(サンセット通り)にあるRegency Outdoorの32枚の屋外広告看板に1億5,000万ドルを支出。オフラインのオーディエンスの注目を集めることに関して言えば、ライバルとなる主要なストリーミングサービス会社の追随を封じ込める好手段であった。このような巨額なデジタル屋外広告を出稿することによって、Netflixは希望する時間と場所に広告を前面中央に表示することができる。

しかしNetflixだけがDOOH(デジタル・アウトオブホーム広告)を活用しているわけではない。Apple、GoogleそしてAmazonは最大の屋外広告利用企業であり、テック企業はDOOHトレンドの最前線にいる。では、DOOHが技術に精通したマーケティング担当者を引き付け、予算を割こうと思わせるのはなぜか。そして、2019年のマーケティング戦略に組み込むべき理由を見てみよう。

 

オフライン・リーチ

新しいメディアや創造的なフォーマットを利用したマルチチャネルキャンペーンが一般的になっている。しかし、マーケティング担当者は、消費者が自由に操作できるスクリーンを利用するという難問に直面し始めている。世界最大の会計事務所でプロフェッショナルサービスファームのDeloitte調査(pdf)によると、他のことをしながらテレビを見ている人がテレビ視聴者のかなりの割合を占め、89%の人は「スマートフォンを使用しながらテレビを見ている」とのこと。視聴者は多数のデジタル機器に囲まれており、実際に広告を見ているかどうかをマーケティング担当者はどうすれば知ることができるだろうか。

これが、OOHが優位な理由である。州間高速道路405号を通勤していても、タイムズスクエアを歩いていても、インパクトがあって創造的なディスプレイを見逃すことは、まず無い。この単純な事実を見逃してはいけない。

そしてDOOHを活用することにより、ターゲットを絞ったエンゲージメントの向上の可能性はさらに広がる。例えば、ヨーロッパの屋外広告会社Exterion MediaTransport for London(ロンドン交通局)が最近実施したキャンペーンがある。最近、Google、Netflix、英国の携帯電話会社O2、米国のエンターテインメント会社Disney、英国航空会社easyJetが、Exterion Mediaの新しい42インチスクリーンの“デジタルリボン”(エスカレーター横の長いスクリーン)のローンチパートナーとして発表された。ロンドン交通局と提携したExterion Mediaの広告は、毎月1,500万人の地下鉄通勤者にリーチする可能性がある。インパクトが大きいハイビジョンスクリーンは、従来のOOOHと比較して、4倍のエンゲージメントを獲得する。

 

ロケーションの活用

消費者が広告を見たとして、それではその「効果」はどうすればわかるのか。

DOOHの最も重要な進歩の一つは、アトリビューション(間接効果)やターゲッティング、測定に位置情報を活用可能となったことである。モバイルの位置情報データが消費者に関するインサイトを提供し、彼らがどこから来たのか、あるいはどこに向かっているのかという情報に基づき、リアルタイムでデジタル広告の表示を更新することができる。さらに、コンテクスト・ビルボード広告では、時間、地域の天気、交通状況にも応じて表示を変更できる。

位置情報を活用したアプローチによって、DOOHをクロスチャネル戦略にDOOHを組み込むことができるのだ。つまり、デジタル屋外広告を見かけた潜在顧客に対して、モバイル端末にフォローアップ広告やコールトゥーアクション広告を配信し、リターゲティングするのである。米国屋外広告協会の調査によると、OOHを併用している場合のモバイルクリック率は15%増加。広告コンサルタント会社のによると、米国の消費者の46%が屋外広告を見た後、検索エンジンを使用している。

 

効果測定の可能性

多くのマーケティング担当者は屋外広告の効果を理解しているが、その有効性の測定は以前から困難な課題だった。最近まで、広告バイヤーはOHHのインベントリー指標をより標準化されたインプレッションに手動で変換していたが、これは時間がかかるプロセスで不正確なことが多かったのだ。

しかしOHHメディアの効果測定が可能となったことは、デジタルがもたらした主な進歩の一つ。広告主は、位置と時間データによって、実店舗の来店といった現実世界での消費者の動向を追跡できるようになった。実店舗来店数は、ほとんどの小売業者にとって重要なKPI(重要業績評価指標)であり、DOOHをマーケティングプランに組み込めば、明らかに効果があるだろう。次のステップは、位置情報を用いて、世帯レベルで取引データと位置情報を組み合わせることだ。これにより、マーケティング担当者は、どの世帯がどの広告に触れているかだけでなく、広告の露出が売上につながっているかどうかもわかる。

安定したハイテク大企業であろうと、新規顧客の獲得を目指している新興企業であろうと、より多くの企業がDOOHキャンペーンの価値に気付いていくだろう。メディアのクロスチャネルとリターゲティング機能によって、創造的で魅力的な、なおかつ邪魔にならない方法で、ブランドが消費者とつながる機会が増えていくのだ。道路沿いのただのデジタル看板ではなく、ロビーやエレベーター、乗り換えの駅、店内の棚のスペースを活用するDOOH戦略によって、ブランドと消費者の関わり方に新たな変化がもたらされるかもしれない。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/18公開の記事を翻訳・補足したものです。