メッセージングと自動化の時代が目の前に!

2020年に素晴らしいカスタマーサービスエクスペリエンスを提供するための基本は、2019年のそれとほぼ同じであろう。顧客は、手間をほとんどかけなくても使い勝手のいいチャネル内で、彼らに代わって問題を解決してくれることを期待している。しかし、シームレスで非同期、パーソナライズされたカスタマーサービス用プライベートメッセージングチャネルが増加するに伴い、ブランドのコンタクトセンターはそれ相応の適応をしなければならなくなっているのだ。

 

顧客のサービスに対する期待値が高くなっていることは、間違いない。カスタマーサービスの将来において、応答の迅速さや音声の親しみやすいトーンだけが注目されることは、もはやないだろう。2019年には、エフォートレス(手間を要しない)なサービスによって、消費者が何を必要と感じるかが方向づけられた。つまり消費者は、利便性からチャネル内での解決、担当者の専門知識すべてまでを同時に期待していた。多くの場合、ブランドは、消費者の需要に対応することを目指し、カスタマーサービスアーキテクチャの一部としてエフォートレスなサービスを提供しているだろう。そして、一部のブランドは他のブランドよりもこれをうまく実施しているのだ。

 

エフォートレスなカスタマーサービスの提供は、2019年と同様、2020年にも重要な意味を持つ。しかし、顧客の期待は大きくなり続けている。以下は、進化する顧客の好みへの適応に関する今後一年間の予測である。

ヒント:この予測は、プラットフォームの機能とボット(自動化されやタスクを実行するアプリケーション)テクノロジーのイノベーションと密接に関連しており、ブランドは2020年に後れを取らないために双方を採用しなければならない。

 

1.人工知能の現実

過去数年の間、有望な多くの改良が実現し、企業がカスタマーサービス実務において人工知能を適用する方法が変わってきている。

・機械学習の速度や費用、利用しやすさの改善

・人間とボットが同じ会話で一緒に作業できるようにする非同期メッセージングの登場

・音声アシスタントが有意義な役割を果たすことを可能にする音声認識の改善

 

2.機械学習の普及

わずか数年前、最も高度な機械学習技術(ディープラーニングを想定)の費用は高額で、大規模に実装することは困難だった。しかし、近年のソフトウェアとハードウェアの大幅な進歩のおかげで、この種のテクノロジーは、はるかに低価格かつ迅速に実行できるようになった。

今日、機械学習を実行するために必要なほとんどすべてのことは、オープンソース(プログラムのソースコードを広く一般に公開し、誰でも自由に扱ってよいとする考えに基づいて公開されたソフトウェア)プラットフォームとクラウドの組み合わせから利用できる。その結果、データから学習できる「真の」機械学習を行うことが非常に容易になった。

これにより、2020年には、もっと自然に会話ができるボットから、カスタマーサービス担当者の業務をより助けるバックヤードの進歩(回答の提案やインテリジェントルーティング(最適経路選択)など)まで、全面的な大幅改善が可能になるだろう。

 

3.メッセージングの増加:ボット+人間は暗号を解読するか

完全なリアルタイムの対話(従来のウェブチャットなど)では、ボットから人間に引き継ぐことは非常に困難だ。顧客はそこにいてリアルタイムの応答を待っているが、人間の担当者に取り次ぐのに時間がかかる可能性がある。それに担当者は、会話に参加し顧客の手助けができるようになる前に、ボットと顧客の会話のやり取りを読んで状況を把握しなければならない。

 

過去一年間で、カスタマーサービスのためのソーシャルメッセージングチャネルの使用が大幅に増加した。現在、Facebook Messengerでは、企業と消費者の間で、月に100億件を超えるメッセージが送信されているという。メッセージングは非同期であり、即時の応答は必要ではないということだ。10〜15分以内での応答は迅速であるとみなされる。

 

つまりボットは、より複雑な問題の処理は人間の担当者に円滑に引き継ぎ、単純なタスク(フライトの状況確認など)を処理することができるということだ。ボットと人間という組み合わせは、メッセージングにおいてのみうまくいく。ボットは、より多くのタスクを処理できるようになり、サービスの会話の大半に関わるようになるだろう。

 

2020年には、カスタマーサービスでのメッセージングの使用が、飛躍的に増加するだろう。WhatsAppApple Business Chat(Appleが開発した、テキストベースでユーザーと企業・お店が対話を行える機能)の両方が、2019年にビジネス向けのメッセージングプラットフォームを全面的に開始しており、この傾向はすでに現実のものとなり始めている。

 

4.音声アシスタントとカスタマーサービス

過去数年にわたる音声認識技術の進歩により、音声アシスタントはついに役に立つようになった。特にこの18ヶ月で、自宅でも、携帯電話でも、GoogleのアシスタントAmazonのAlexa、AppleのSiriなどが普及している。

来年には企業が、顧客の音声アシスタントから直接問い合わせされた基本的なサービス問題を手助けする、初めての「音声ボット」を開発し始めるだろう。また、非常に進化した音声ベースのボットがコールセンターで使用され始め、インタラクティブな音声応答システムは進歩していくだろう。(Alexaベースのテクノロジーは、コールセンターですでに利用可能である!)

 

電話での音声アシスタントを使用すると、Apple Business Chatのようなメッセージングチャネルを通じて簡単に企業とやり取りすることができる。つまり、Siriに質問すると、メッセージングでボットからの回答をダイレクトに受け取ることが可能となるのだ。

 

5.ボットは一次担当者に取って替わる

多くのコンタクトセンターには、顧客の問題を見出し、基本的な問題に対処する一次担当者が配置されている。これらの担当者は、比較的スキルが低く、厳密なマニュアルに従っており、実質的な変更や譲歩を行う権限を有しないことが多い。顧客を手助けすることができないと判断した場合、彼らは、顧客を満足させるために大きな変更を行う能力を有する、高度な訓練を受けた上位担当者に事案を引き継いでいるだろう。

2020年末までには、カスタマーサービスの問い合わせの大半は、メッセージングチャネルから寄せられるようになり、ボットが「一次的な」問題を自動的に処理するようになるだろう。カスタマーサービスの担当者は、単純なタスクを行うよりも顧客を手助けことに重点を置き、承認者やエスカレーション対応者としての役割を果たすようになると予想される。

 

一部のチャネルでのAIの使われ方と違って、顧客は、ボットでいら立たしいほど困らされることは決してない。ボットは、いつも、人間とかかけ離れた単なるメッセージなのである。全般的に見れば、AIは、顧客により満足度の高いエクスペリエンスを提供する。顧客は、ボットが顧客の問題を解決するスピードや利便性に満足し、人間によるサポートは、友人にメールを送るのと同じくらい簡単なものになるだろう。

これにより、ブランドは「一次」担当者を再配置し、顧客により高額な商品を販売することを含め、より高価値のタスクに集中させることができるようになるのだ。AIは最終的に、スタンドアロンのボットの形態ではなく、人間と密接に連携して、カスタマーサービスに自身の居場所を見つけるだろう。

 

6.つながっている世界

技術が進歩しデジタル変革の真っただ中にいる我々は、これまで以上につながる距離が近い世界に生きている。さらに、デジタルの世界はインターネットをはるかに超えている。それは、デジタルデバイスを使った通信によって構築された、世界的なつながりの融合である。これは、2020年以降のブランドと消費者のエンゲージメントに大きく影響するだろう。

より多くの消費者とブランドが、デジタル変革の波に乗り始めるにつれ、間違いなく消費者の期待は高まっていく。この選択に遅れを取る企業は、よりデジタルに精通した競合他社に顧客を奪われてしまう危険性があるのだ。

ブランドは、メッセージングチャネルを活用するだけでなく、友人とつながるような気取らないエクスペリエンスを顧客に提供していく必要がある。2020年には、メッセージングがカスタマーサービスを成功させるためのあらゆるサポート戦略の最前線にあり、カスタマーエクスペリエンスの向上や運用コストの削減を推進することは間違いない。

適応自動化のサービスの利点について、顧客により多くの情報を与えることに重点を置くブランドは、その利益を享受し、今日の「常にインターネットにつながっている」世代(Z世代と呼ばれる、2000年、もしくは1990年代後半から2010年の間に生まれた世代)の注目を集めていくことだろう。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/12公開の記事を翻訳・補足したものです。