消費者の購入経路は、検索エンジンから、オンラインマーケットプレイスなどに移行している。

 

最近のデータから、デジタルコマース分野で起きている劇的な変化が浮き彫りとなった。現在、eコマース市場の消費者の60%以上がAmazonでオンラインショッピングの検索を開始しており、Googleなどの検索エンジンで購入を開始する消費者の割合を上回っている。わずか数年の間に大きく進化したeコマースの世界は、ダイナミックな消費者基盤だけでなく、激しく変動する世界情勢をも反映し続けているのだ。

 

<参考>

消費者の商品検索の44%がマーケットプレイスから始まる

消費者の67%はオンラインショッピング時にインスピレーションを得たいと考えている

Amazon vs 検索エンジン、どちらの対策を重点的に行うべきか - 「都市伝説」に対する検索エンジンサイドの調査結果

 

 

パンデミックが世界の動向に与えた影響がいかに深刻かつ複雑であったかは容易に想像がつく。これには、多くの要因の中でも、オンラインショッピングが消費者の日常生活の基盤に変化したことが含まれる。Amazonは、自社とオンラインマーケットプレイス・コマースを、検索ベースの消費者習慣の長期にわたる支配に対する決定的な手ごわい競争相手として位置付けている。

 

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オンライン購入ジャーニーの大部分はAmazonと検索エンジンから始まるが、すべてではない

オンラインカスタマージャーニー全体において、Amazonの継続的な優位性を否定することはできない。ただし、現実は決して単純ではなく、車線を変更して他の小売業者を利用する消費者層が目立ってきている。Amazonがデジタルコマース分野で生み出した競争力のバランスを維持するためには、消費者の軌道修正の要因を認識することが重要である。

 

調査対象となったオンライン買い物客の約半数は、検索エンジンから購入を開始しており、それはAmazonとGoogleの非常に激しい競争を反映している。この巨大テクノロジー企業二社にとっては不本意なことではあるが、多くの消費者が、小売業者のサイトや他のマーケットプレイス、ブランドのWebサイトで商品検索を開始しているのだ。

 

Amazonが本当に卓越しているところ、見劣りするところ

調査では、消費者の3分の2近くが、競合他社の価格の方が良ければ、Amazonよりも別の小売業者を選ぶと回答。しかし、Amazonは2022年初めにプライムメンバーシップの価格を再び引き上げたものの、eコマース大手の同社は、自社の買い物客がこのプラットフォームを低価格と結び付けているという事実から利益を得ている。

 

オンラインショッピングを利用する買い物客は、あらゆるタッチポイントを起点としてデジタルコマースを巡る。こうしたインスピレーションを得る瞬間に、影響力は戦略的に重要となる。Amazonは、豊富な商品群とユーザーインターフェースにより、単純なトランザクションエクスペリエンスから多くの消費者がインスピレーションを得ることができるサイトに進化したのだ。

 

パンデミック時代の成長に必要不可欠な配送サービス

Amazonは、デジタル消費者向けに高まっている配送オプションの重要性をうまく利用している。オンライン買い物客の大部分は、より便利な配送オプションを利用できることが、別の小売業者を選択するきっかけになると考えている。飛行機、トラック、バン、船などの自社ネットワークの開発に多額の投資を行った結果、Amazonは米国で最も大規模な配送サービスの1つに成長した。そのロジスティクス・オペレーションは、今や米国郵政公社UPS(米国の貨物運送会社)に匹敵するほどだ。

 

弱点か、伸びしろか?

いくつかの分野がAmazonの成長率を阻害しており、Walmart、Netflix、Disneyなどの競合他社は、それらを活用するために精力的に努力している。オンライン買い物客がどこでお金を使うかの選択に影響を与える要因として、より優れた、より専門的な商品群、実店舗を訪れるオプション、魅力的なロイヤルティプログラムなどが挙げられる。

 

顧客維持には、ロイヤルティへの報奨が必要

オンライン小売業者はカスタマージャーニー全体を念頭に置きつつ、顧客獲得と同じくらい、顧客維持を望んでいる。Amazonプライムは、既存顧客を維持することを目的につくられたメンバーシッププログラムの代表的な例である。スーパーマーケットのロイヤルティプログラムは、既存顧客を維持するための小売業者の取り組みの好例だ。実際、スーパーマーケットのロイヤルティプログラムは、Amazonプライムよりも全体的に人気があるとのデータもある。

 

多目的オンラインプラットフォームか否か

注目すべきことに、消費者の大多数は、Amazonを主に商品の購入に利用される小売業者と認識し続けている。多目的オンラインプラットフォームに変革するための多大な努力に巨額の資金を注ぎ込んだにもかかわらず、Amazonを重要なエンターテインメントサービスとみなしているオンライン買い物客は4分の1以下である。

 

Amazonは、2021年に映画・テレビスタジオのMGMを84億ドルで買収するなど、エンターテインメント業界における自社事業の拡大に数十億ドルを投資したにもかかわらず、この現実に直面している。ここ数年間、Amazonは膨大な資金を投じて大ヒット映画の買収を推進してきた。Michael B. Jordan主演、Tom Clancy原作の『ウィズアウト・リモース(Without Remorse)』 に1億500万ドル、Eddie Murphy主演の『星の王子ニューヨークへ行く2(Coming 2 America)』の権利に1億2,500万ドル、また、Chris Pratt主演のアクションスリラー『トゥモロー・ウォー(Tomorrow War)』には、なんと2億ドルという巨額の資金を費やしたのだ。

 

デジタルコマースのリーダーAmazonと、選択肢を好む消費者

オンライン買い物客の約半数が検索エンジンで購入を始めているが、同じくらい多くの人が、Amazonで購入を開始することを選択している。現在、デジタルコマース分野では、AmazonとGoogle間で非常に激しい競争が繰り広げられていることは否めない。小売業者のサイト、他のマーケットプレイス、ブランドのWebサイトで商品検索を開始する消費者が非常に多いことを考慮すると、この巨大コマース企業二社は、自身を取り巻く世界と同じように動的に変化する顧客基盤に適応するのが賢明だろう。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」5/2公開の記事を翻訳・補足したものです。