新しい年を迎えた今、コラムニストのTom Mucklow氏は、オンラインショッピングの推進要因となった昨年のホリデーシーズン戦略とテクノロジーについて振り返る。

すでに遠い記憶になりつつあるが、小売業界にとって昨年のホリデーシーズンは、総じて非常に好調であったと言えるだろう。決済調査会社Mastercard SpendingPulseによると、2017年11月1日からクリスマスイブの期間の小売売上高は、昨シーズンより4.9%増加。オンライン売上は予想を上回る18.1%の成長率を記録した。多くのアナリストたちは、新たな戦略とテクノロジーの導入によって、かつてないほど簡単で迅速なオンラインショッピングが実現し、売上増加につながったと分析している。

それでは、ホリデーシーズンに最も効果的であった小売戦略の上位3つは何だったのだろうか?

 

<参考>

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モバイルコマース

小売業界では、モバイル端末でショッピングをする消費者がさらに増加するだろうと予測されていた。調査会社Adobe Analyticsによると、2017年のデバイス毎の訪問者数はほぼ同割合であり、スマートフォンからは全訪問数の45%、デスクトップブラウザからは46%を占めたという。

モバイル端末向けに最適化されたウェブサイトやネイティブアプリ(端末にインストールして使用するアプリ)は、プッシュ通知で最新のセール情報や、位置情報やビーコン(Bluetoothを使った情報収集、発信)サービスを活用した近隣店舗のお買得情報を配信することにより、大きな成果をあげた。パーソナライズされた場所を選ばないショッピング体験を提供することで、買い物客の意に叶うギフト選びに貢献したのだ。

 

新しい決済方法

PayPalの誕生以来、デジタル決済はオンライン商取引の原動力となっている。今回のホリデーシーズンでは、さらに多くの小売業者がかつて一般的であったクレジットカード決済方式から脱却し、新しい決済サービスプロバイダや仮想通貨を受け入れるなどの新たな決済方法を導入。2017年は、PayPalやVenmoなどのピアツーピア決済(個人間支払い)がオンライン決済で頻繁に利用され、Apple Payなどのデジタルウォレットによってワンクリック購入が容易になった。

支払いや商取引に関するオンラインメディア「PYMNTS / Visa」による調査「How We Will Pay」によれば、オンライン買い物客の約66%が、使用端末でシームレスな決済方法を利用することに積極的。また、決済プラットフォーム会社Paysafeの調査によると、米国人口の31%がモバイルウォレットを日常的に使用し、7人に1人が仮想通貨を使用したことがあるという。

デジタル決済ソリューションは、消費者の決済手続きをより迅速にするだけでなく、購買体験における顧客の信頼を高めることができるということである。

 

当日配達

2017年において最も成功したeコマーステクノロジーの1つに、「当日配達」があることは間違いない。インターネット上で最もシームレスな顧客体験を提供する先駆者的企業Amazonをはじめ、全米有数の大型百貨店チエーンNordstromや世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartといった多くの小売業者がこの当日配達を導入。その結果、クリスマスイブ当日まで、オンラインでホリデーショッピングをすることが可能となったのだ。

すぐに商品を手にしたいという現代消費者のニーズに応えた小売業者が売上を伸ばし、競合他社を引き離し、欲しいもの全てをすぐにでも手に入れなければ満足しないデジタル消費者からをも忠実な支持を獲得している。

しかし配送は諸刃の剣でもあり、当日配送よりも短い時間で顧客を失う可能性もある。US Addressyの最近のレポート「Fixing Failed Deliveries: Improving Data Quality in Retail(配送方法の修正:小売におけるデータ品質の改善)」によると、消費者の82%はギフトを購入する際、希望した期限内に配送されることが不可欠だと考えている。しかし過去12か月間において、米国内の買い物客の66%が、配送方法にかかわらず配送が遅れた、または届かなかった、という経験をしているという。

ホリデーシーズンは毎年やってくるが、顧客体験の背景にある小売業者のテクノロジーに不備があった場合、企業の評判は永久に損なわれる可能性がある。配送の失敗や、満足度の低い顧客体験によって生じる企業評価への損害は、財務諸表を見るよりも定量化するのが難しい。

 

実際に配送の失敗による損害はどの程度なのか?ホリデーシーズン中の満足度の低い顧客体験によって生まれた、目に見えない結果とはどのようなものだろうか?

 

将来:ホリデーシーズンに獲得した顧客を、引き続き維持する方法

我々の調査によると、オンライン消費者の75%は過去に購入したことがある小売業者から再購入したいと考えている。しかし消費者の57%は、配送について満足できなかった小売業者から再び購入することはないという。たった一度の不満足なショッピング体験が、1年を通して導入したテクノロジーと戦略による成果を台無しするということだ。そして多くの場合、ただ1人の顧客を失うだけでは済まないのである。

小売業者の60%以上が、オンラインで公開された満足度の低いショッピング体験に対する苦情件数の増加を認識している。膨大な時間をオンラインに費やしているこの時代に驚くことではないが、デジタル顧客獲得のための激しい競争をしているオンライン企業にとっては、大きな問題になっているのだ。

我々の調査によると、買い物客の約3分の1は(配送に対する苦情について)小売業者と直接話すよりも、ソーシャルメディアやレビューサイトに苦情を投稿する方が効果的だと感じている。購入前にレビューをチェックする消費者はさらに増えているので、高い評価の中のたった一つ低評価のレビューが消費者に疑いを抱かせてしまうことになる。

 

買い物客がギフトの購入を検討する際、他の買い物客が希望した期限より遅れて商品を受け取ったことを知れば、その小売業者から購入するだろうか?決して、購入することはないのだ。そして、憤慨した消費者によるソーシャルメディアへの投稿によっても、同様の結果が生じる。

顧客を満足させ、再購入してもらうために、小売業者は何ができるだろう。中には、住所の詳細が間違っているために正しく配達されないケースも多数あるという。正確なアドレスデータを収集するための技術を導入することは、今年取り組むべき最も重要な課題の1つである。

 

UX(ユーザーエクスペリエンス)の質の向上と、正確で有効なアドレスデータの入力を確実にする1つの解決策は、住所の先行入力検証ツールである。我々の調査によると、ユーザーの80%は先行入力検証ツールの導入に肯定的。小売業者にとってもこれにより配送ミスやカートに入れた商品の未購入を大幅に減らすことができるだろう。

 

2018年は、どのようなテクノロジーをテストし実装するかを問わず、企業は常にユーザー視点でいなければならない。決済方法や配送、ユーザーの使用端末における要望に対応することは、eコマース小売業界のテクノロジー進歩のほんの一部に過ぎない。2018年はこれらの各分野において、大きな進歩がみられることだろう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の1/11公開の記事を翻訳・補足したものです。