オンライン上でドロップシッピングとオリジナルプリント商材のフルフィルメント(ECサイト販売業務全般の代行)を行うサービスであるPrintfulが、ネットショップの開業・運用に関する様々なトピックについて解説しているPrintfulブログにて、「世界中で急成長しているアパレルEC | 国別の市場規模ランキングと成功の秘訣」を投稿し、ファッション・アパレルECの市場規模と最新トレンドについて解説した。その一部を紹介する。

 

2020年の新型コロナウイルスの影響で、多くのアパレルショップがオンラインショップを開設、または強化している。「巣ごもり消費」により、多くの人がネットで買い物をする傾向にあり、今までにはなかった商品の需要も出てきた。このような点も考慮してネットショップ開業を検討してみるのが良い。

世界全体のファッションECの市場規模は、現在5600億ドル、2024年までには8700億ドルにまでのぼると言われている。ファッションECは日本でも成長を続けている分野で、経済産業省によると2018年度の物販系分野のアパレルECの市場規模は1兆6400億円で、前年比伸び率が7.7%である。

 

それでは、ここで世界の国別ファッションECランキングを見ていく。

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どの市場でもファッションECの売り上げは毎年増えるのみで、全ての国で例外なく市場の成長が見られる。中国とアメリカが飛び抜けて大きい市場を持っていることがわかるが、上位10位のうち5か国(中国、日本、韓国、インド、インドネシア)がアジアの国々で、世界的にアジアでの需要の高まりが目立つ。Statistaの「世界の国別インターネット利用者(2019年6月)」を見ると、この5か国のうち4か国(中国、インド、インドネシア、日本)がトップ10に入っている。さらに、「世界の国別人口ランキング (Statista 2019年)」を見ると、中国とインドは、人口、インターネット利用者数の両方で、世界1位、2位を占めていると分かるため、ECサイト市場規模のトップに来るのも納得できる。日本は209億ドルで世界的に4位にランクインし、2024年までにはさらに40億ドルの成長を経て252億ドルまで成長する見込みである。また、ドイツ、韓国の市場規模も日本に拮抗してかなり大きいものとなっている。2019年のインターネット利用者数のデータでは、韓国はトップ20に入っていないため、驚きの結果となった。成長率で伸びが最も高い国は、トルコ(129%)で、パキスタン(106%)、インドネシア(96%)などの国が続いた。

単に市場の大きさだけを見ると、中国、アメリカ、イギリスがトップだが、自分のショップを海外に展開していきたい場合ポイントになるのは言語の問題である。トップ11位内で英語圏は、アメリカ、イギリス、インド、カナダ、オーストラリアの5か国である。また、ランキング上位には入っていないものの、アジアの国でも、シンガポール、マレーシア、フィリピン、香港では英語が日常使われているため、海外進出を考えている場合、英語は欠かせないと言っていいだろう。

そして、圧倒的な市場規模で、やはり中国を忘れることはできない。数年前は日本に観光で来た中国人観光客が「爆買い」をする報道が目立ったが、最近ではあまり聞かなくなった。その背景は、中国でも日本製品を購入できるようになったことがあると思われる。しかし、それでも、中国で購入できる日本製品の値段は高いため、日本に観光で訪れる中国人は「爆買い」はしないにしろ、本国より低い値段で購入できることは魅力的なのかもしれない。そして、中国では、クオリティの面においては疑問がある安価な商品も販売されており、そのような商品を嫌う中国人も少なくないため、「品質の高い日本製」をアピールすることができれば、約13億の人口を持つ日本の隣国市場は大きな存在である。

 

次に、世界の各地域別に2020年と2024年までの成長予測のランキングを見ていく。

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ヨーロッパで1位のイギリスでは、Statistaの調査によると、2019年に最も人気の高かったECサイトのカテゴリーは「ファッション&スポーツアパレル」で60%だった。イギリスは、ファッションにおいては世界のリーダー的存在である。単にECサイトのトップカテゴリーになっているというだけでなく、常に世界の流行の先端を担っている。例えば、現在ファッション業界は世界的に倫理性・持続可能性を重要視する方向に向かっているが、その分野のスタートアップ・関連会社の数でイギリスは世界一である。イギリスでは全ジャンル総合でAmazonが人気だが、ファッション関係のサイトでは、顧客満足度が高い大手百貨店のJohn Lewisも人気である。

ヨーロッパで2位のドイツも、ネットショッピングで最も人気のあるカテゴリーはファッションである。最も人気のあるECサイトはAmazonと地元のOttoで、この2社が市場の半分を独占しているというのが現状である。その他の人気ECサイトは、ZalandoBonprixなどがある。

ラテンアメリカで1位のメキシコは、2016年の「メキシコインターネット協会(AMIPCI)」による調査では、ネットショップに出品するカテゴリーの1位が「アパレル・アクセサリー」とのこと。また、メキシコのオンラインショップ利用者は、海外からの購入に関しても積極的なようである。ネットショップ利用経験者のうち、「海外から購入したことがあるか」の質問に対して、60%が「ある」と答えた。地域別に見ると、61%がアメリカから購入した経験があり、41%がアジアから購入した経験があると答えている。海外から購入する理由としては、海外から買っても安い(61%)、メキシコにはないユニークな商品(53%)、ブランド商品などでメキシコに存在しない(44%)といった意見が多く見られる。

ラテンアメリカで2位のブラジルは、日本国外で日系人の人口が最も多い国(約160万人)で、日本とも関係が深い国である。経済大国としては世界9位、南米最大の人口を誇る国で、インターネット利用者の数としては世界第5位の約1億4900万人(2019年 Statista)である。2016年には、国民の人口約4分の1がECサイトで購入をしており、eコマースの成長が著しい国である。2011年には楽天が現地企業を買収してブラジル市場に進出している。アルゼンチン発で南米最大のオークションサイトMercado Livreはブラジルでも人気で、米Amazonもブラジルに現地法人を設立し、徐々に拡大しつつある。

*メキシコ、ブラジルのデータは「本貿易振興機構 (ジェトロ)による中南米のeコマース事情」を参考

 

次に国内のみでショップを展開するのと、国外に視野を置いて展開するメリット、デメリットについて見ていく。

国内の客層を想定してショップを展開していく

海外のAmazonやAlibabaで低価格の商品を仕入れて、日本のAmazonや楽天に出すというモデルはすでに定着している。

メリット
・始めるのが簡単
・ネット上(国内、国外)で仕入れる、(ディスカウントショップなどの)実店舗で仕入れるなど、チョイスが豊富

デメリット
・他に同じ商品を扱っているショップがたくさんある
・価格競争になる

 

海外の客層を想定してショップを展開していく

東京は世界でも有数のファッション都市として注目を集めている。伝統と現代がミックスされて、欧米の都市とは違った個性を放つ日本のアパレル商品は海外の人にとって魅力的である。
もちろん、東京を拠点にしていなくても、日本人としてのセンスを世界にアピールできるだろう。

メリット
・ニッチな商品を扱える
・競争相手は少なくなる
・リピーター獲得もしやすくなる

デメリット
・顧客対応、集客で外国語が必要
・場所によっては送料が高くなる
・外国語で対応できるカスタマーサポートが必要
・国によっては扱える商品に規制がある
・国によっては運送会社の信頼性が疑問(紛失した場合の対応等)

 

最後に、アパレル業界ECで成功するには。

ファッションに限らず自分のショップを開く際に重要なのは、どんなニッチ(カテゴリー)の商品を扱うか、自分のショップのUSP(Unique Selling Point=ショップのユニークさ)である。ファッション、アパレルの商品カテゴリー内でも様々な商品があるので、どんな商品を扱うかは重要である。

どのようにして選ぶか分からない場合は、以下のような点に注目してみる。
・商品の需要は常にあるか
・季節によって需要の違いがあるか(夏物、冬物、etc.)
・どのような客層をターゲットにするのか(性別、年齢、世代、テイスト)
・値段

ファッションカテゴリーのどんな商品が人気か、どんな商品の需要があるかを調べるには、Amazonなどの人気ショッピングサイトに行き、ベストセラーのページを調べてみるべきである。Amazonは、ここまで見てきたランキングに入っている多くの国で利用できるため、特定の国を視野に入れている人は、その国のAmazonを調べてみると参考になる。また、インスタグラムなどのSNSで、自分の扱いたいカテゴリーの商品は多くの人にシェアされているだろうか。中国では、インスタグラムとAmazonが合体したアプリと言われている「小紅書(RED)」が人気がある。これも流行をチェックする際の参考になる。

どんな商品を扱うにしても、同じ種類の商品を扱っているショップは他にたくさん存在する。「商品カテゴリーの選定」と「ブランド感」をいかにアピールできるかが成功のカギになる。

 

ファッションECは、国内でも海外でも特に成長が著しい分野である。ファッションはどの国、文化でも存在するカテゴリーで、単に生活必需品というだけでなく、アート、デザイン、ポピュラーカルチャーにも深く関わっている。また、性別、世代、テイスト、文化の違いによって様々なファッションが存在し、需要は永遠に衰えることがないだろう。ただ漠然に自分の好きな商品を売るというだけでなく、消費者のニーズやトレンドなども考えながらの長期的なプランニングが必要である。