Y世代(ミレニアル世代)を戦略的に獲得すべき時が来ている。

1980年代から2000年代に生まれまた世代を、ミレニアル世代、またはY世代と呼ぶ。この世代は人類史上最大であり、全世界人口の約25%を占めている

しかし、ヘッドラインに「ミレニアル世代」という言葉が含まれる場合、そのニュースは大概ビジネスにとって悪い知らせである。ミレニアム世代はお金を持っていないと言われている。また、彼らは自己中心的だと言われる。そして、企業のマーケティング戦略には興味なく、当然商品を購入しないとも言われているのだ。

しかし真実はニュースとは微妙に異なり、全く絶望的ではない。そもそも、「ミレニアル世代」と聞けば、「40歳未満のすべての成人」と考えるべきであり、それは巨大で、そして非常に多様な集団であると言えよう。ミレニアル世代についての広範な一般論を鵜呑みにするべきではないのだ。それでは、ミレニアル世代は何を望んでいるのか?何に関心があるのか?ブランド、マーケティング担当者、または販売業者として、どのようにしてミレニアル世代を取り込むことができるのだろうか?

 

最新の調査、レポート、および私自身の20年以上にわたるコマース経験に基づき、ここでは小売業者やブランドが、ミレニアル世代とテクノロジーを活用して有意義な関係を築く方法についての、3つの見解を述べよう。

最終的には、ミレニアル世代は世界経済にとって、そして、もちろん個々のビジネスにとってもますます重要な存在となっていくだろうと考えている。

 

1.自社の価値を証明する

ミレニアル世代が彼らの両親よりもコスト意識が高いのは、当然のことである。彼らはあらゆる経済的、社会的混乱と不確実性の中で成長してきたのだ。ミレニアル世代は、年長世代よりも多くの借金があり、雇用も不安定で、将来の財政面において悲観的である。

事実、ある調査によると、クレジットカードを所有しているミレニアル世代はわずか33%とも言われている。これは消費者行動における主要な変化であり、これに対し企業は、テクノロジーをもって対応していかなければならない。

独創的で柔軟な支払いオプションを統合することは、ビジネスにとって有益であることは明白だ。長期的にみると、Visa、Mastercard、そしてPayPalに対応するだけでは不十分なのである。

ロイヤルティプログラムについても同様である。商品購入の際のポイントプログラムをスタートしたり、特典として店舗ディスカウントや無料景品を提供したり、店舗ロケーションにタグ付けしたソーシャルメディア投稿にインセンティブを与えたりする場合でも、ロイヤルティプログラムを効果的に計画し実行すれば、ミレニアル世代に再度商品を購入させることは可能である。

そして、「柔軟性」と「目に見える価値の提供」がカギとなる。ミレニアル世代は、彼らが実際に得るものへの透明性の高さを重視し、得たものの価値を的確に確かめたいと考える。未来志向性が低いため、長い時間をかけて獲得する豪華賞品よりも、ささやかでもすぐに得ることができる特典に、より高い価値を見出す傾向がある。

話を進める前にもう1つ注意すべきことがある。「価値」について言及する際は、「最も低い価格」を意味しているのではない。ミレニアル世代の買い物客は、品質(または、品質が高いと感じること)と耐久性が高い商品に対しては、より高い金額を支払うことが証明されている。もし、自社の製品やサービスが、実際により価値がある理由を示すことができれば、Y世代のオーディエンスに受け入れられるだろう。

 

2.簡略化する

ミレニアル世代は、最初のデジタルネイティブである。彼らは常にネットに接続された環境で育っている。最近の調査によると、ミレニアル世代の50%は、1日あたり最低3時間、4人中1人は1日に5時間以上もスマートフォンを使用していると言われている。そのため、デジタルエクスペリエンスに対する彼らの期待は高い。すべてのチャネルにおいて、テクノロジーは常に、完全に使いやすく機能していなければならない。

それは、デジタルエクスペリエンスを作り出す側にとっては難しい課題である。しかし、ここにも希望の光がある。ミレニアル世代の望む基準を満たす努力をすることによって、他の世代の顧客からの利益も生み出すことが出来るからだ。

Y世代は先駆者かもしれない。しかし、X世代と団塊世代の彼らの両親、叔父、そして祖父母も、それほど遅れているわけではない。すべての顧客にとって、迅速で、便利で、そしてスムーズなデジタルコマースを提供することは必須である。

同時に、コマーステクノロジーの最先端技術は飛躍的に進歩している。 AIAR 、VRなどの流行技術は、電光石火のスピードで小売業界に導入されているのだ。しかしそれが、楽しみや仕掛けとして活用されているだけでは、ミレニアル顧客を獲得することは不可能だ。

ミレニアル世代は、テクノロジーに精通していて、自分たちに歩み寄られた場合に商品を購入する。彼らは新しい技術が、小売業者だけでなく自分達にも有益となることを期待している。つまり、企業はテクノロジーを活用し、よりカスタマイズされたスムーズなショッピングエクスペリエンスを提供するべきである。過去の買い物履歴に基づいたインテリジェントでパーソナライズされたおすすめ商品を紹介、購入したスタジアムの席を簡単に見つけるための拡張現実、または実店舗への来店を感知し特典を提供するジオロケーションなど、テクノロジーを活用し、ショッピングエクスペリエンスのカスタマイズ化、合理化を実現することが可能である。

 

3.常に思い出に残るサービス提供

ミレニアル世代は所持品ではなく、経験(イベント、旅行、食事など)に出費することで最も幸福感を得ることができるという。彼らは、過度に多くの「モノ」を所有することに慎重であり、物理的な商品よりも良い思い出を作ることに価値を置く。ミレニアル世代は、所有することや地位よりも、つながりやコミュニティ、そして真正性を重んじるのだ。

それは、物理的商品在庫を持つファッションや家電製品の小売業者にとって、どういう意味を持つのだろうか?一つには、自社商品のショッピングを、より深くそしてより有意義な経験にする方法を検討する必要があるということだ。ミレニアル世代の共感を得たいと思うならば、商品購入を単なる取引で済ませてはいけない。

デジタルストアでは、買い物客に内容豊かな没入型のコンテンツを提供することが可能であり、また、そうすべきである。従来型実店舗でも、デジタルキオスクや看板で同様の取り組みができるだろうし、イベントやクラス、集会といったユニークなエクスペリエンスを提供することも可能だ。実店舗でもデジタルストアでも、店内の商品を見て回ることは、同じ嗜好の人とつながり、異なるライフスタイルを発見し、自分の夢や欲求を明確にし、見直すチャンスとなる。それら全ては、ミレニアル世代が好む「体験的なライフスタイル環境」を提供することの一部である。

言うまでもないが、すべてのタッチポイントおよびチャネルにわたって、シームレスなエクスペリエンスを提供することは必要だ。それは、自社システムがすべてつながり、統合されていることを確認するための根本的な作業から始まる。顧客が自分の好きな時間に好きな方法で、ブランドと関わり合う(そして、商品を購入する)ことができるように、オンライン、オフライン、モバイル、インストア、eメール、広告などのすべてを同期させなければいけない。

前述したように、「真正性」はミレニアル世代にとって重要な意味を持つ。そして、一貫したブランド・エクスペリエンスを提示することに留意することは、やはり真正性の一部である。もちろん実店舗は、自社ウェブサイトやモバイルアプリと同じ“ルックアンドフィール”を保持する必要があるだろう。しかし一貫性とは、単にブランドカラーを随所に使用することや、広告と同じ気の利いた文章スタイルで店内の看板を飾ることだけではない。

さらに、若い成人層が気に掛ける価値を体現する「強いブランドストーリー」を持つ必要があるのだ。協調性、企業責任、持続可能性、およびコミュニティ志向を示すことだけで成功が保証されるわけでないが、そうしなければ、失敗につながる可能性は非常に高いのだ。

 

全てを達成できるか?

つまり、優れた価値を提示すること、絶対的な利便性を提供すること、そしてシームレスで記憶に残るエクスペリエンスを作り出すことだけをやればいい、と言うのは簡単なことだ。しかし誰も、これらが容易に達成できるとは言っていない。

それでも、現在および将来的にもミレニアル世代の規模と影響を考えれば、そのチャンスは計り知れない。そして、それは決して無視することができないチャンスの1つであろう。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の4/2公開の記事を翻訳・補足したものです。