限られた工数で中小EC事業者がどのように手間をかけずにサイトを立ち上げ成長させていくのか

 

ECサイトを手軽に開設できるサービスは市場にいくつか登場しているが、そこで売上を上げていくこと、さらにはそれほど大きな手間をかけずに運営をしていくこととなると、非常に難しいのが現状だろう。技術の進歩が早く、売上をあげるためのソリューションは枚挙にいとまがないほど市場に乱立している。しかし、それらのサービスをチョイスし、導入し、活用して売り上げを作るのは至難の業とも言える。今回は、フロント業務を中心に、工数も費用も限界のある中小のEC事業者がどのようにECサイトを構築し運用していき、成長曲線に乗せていくべきかを考えていきたい。

 

※当記事はWeb戦略をカタチにする会社として、Web制作や運営代行を行うヘノブファクトリー社から情報提供を受け、中小のEC事業者のECサイト運営の効率的な方法の一例を解説した記事である。また以下で解説する内容についてのセミナーが9/13(水)に予定されている。

※9/13(水)開催予定のセミナーは終了いたしました。

 

ここ数年で中小EC事業者が直面しているよくある課題

 

年々競争が熾烈になり難易度が増しているECサイト運営だが、ここ数年、中小EC事業者はどのような課題に悩んでいるのだろうか。ECサイトを開設するところから代表的な課題を見ていこう。

 

サイトを開設するサービスの選択肢が多すぎて違いがわからない

ECサイトを開設するサービスはここ数年非常に増えてきている。中でも簡単に開設することが出来るサービスは乱立。そのため、実際には開店を志すEC事業者が、どのプラットフォームを利用してECサイトを運営すればよいのか、その違いやメリット・デメリットは何なのかが非常にわかりにくくなってきている。モール、カート、フリマ、オークション、無料カート、単品通販サイト、海外通販と、たくさん存在するサービスの違いや特性の理解が進まずに理想的なツールを選択できないという課題がある。

 

<参考>

ECをはじめたい!ときの選択肢 - 7つのプラットホームの存在を理解しよう

 

自社の強みやオリジナリティを表現しようと思うと手間と費用は相変わらずかかってしまう

それなりにしっかりとしたECサイトを運営しようと思った場合、選ばれるのがカートシステム。カートならば比較的簡単に店舗を運営できると言うが、提供されているテンプレートを選ばずに、少し独自のカスタマイズをしようと考えた途端にハードルは一気に上がってしまう。結局制作会社に依頼しなければそれなりのサイトにならないなんてこともあるのが実情だ。カートに限らず、商材や業種を踏まえたオリジナリティ豊かなサイト構成を目指そうとすると、かなりの手間が必要になることは珍しいことではない。

 

売上アップのサービスが乱立し、活用方法も難しい

開店後に売上を上げる方法も多種多様である。MAツール、接客ツール、CRMツールなど、顧客を細かくセグメントして売上向上を狙うツールが様々に登場してはいるが、どれも難しくて、しっかりと活用するためのハードルは極めて高い。かといって売上をしっかり上げてくれるワンストップサービスは、非常にお金がかかるため、売上が上がっていないうちから選べるサービスではない。開店したはいいが、そのような状況行き詰り、EC事業の担当者が辞めてしまい、ECサイトが中途半端な状態で放置されてしまうという状況に陥ることもしばしば見かける。

 

<参考>

EC業界カオスマップ2017 - 転換率向上サービス編

EC業界カオスマップ2017 - CRMサービス編

 

このように、モノをオンラインで売る環境は確実に整ってきてはいるが、選択肢を上手く活用して売上アップというゴールに到達させるための方法や作業は、難易度が増している状況である。そもそもECは「商売する力(≒マーチャンダイズ)」「作る力(≒クリエイティブ・プログラミング)」「広める力(≒マーケティング)」の3つが必要な難しいジャンルの商売である。そのためECサイト運営の全てを1社で行おうとすることは非常に難易度が高いのだ。

 

 

中小EC事業者がECサイトを開設・運用する際に必要な3つの考え方

 

このような課題に直面することの多い中小のECサイト事業者だが、どのようにそれらの課題をクリアしていけばいいのだろうか。これらの課題をクリアするための3つの考え方を紹介していく。

 

費用はサービス利用料+手間のトータルで考える

中小のEC事業者が一番気にする部分は費用だろう。ECサイトを開設するのにいくらかかるのか、月間のランニングコストはいくらなのか、など費用が非常に気になるだろう。しかし、実際はそれらのサービスを使った初期費用や月額費用とは別に、サイトの制作費用、コンテンツ制作費用、運用代行費用、コンサルティング費用など多くの付随する費用がかかることになる。それらの外注を利用せずに自前でやることも不可能ではないが、サイトの品質、運営時の売上の上がり方などに大きな差が発生してしまうことになる。そのため、費用と手間と効果の3つのバランスをしっかり見極める必要がある。

 

コンパクトにやるべきことに注力する

新商品企画、売上目標設定、写真素材・テキスト素材の準備、特集ページ制作、メール配信、SNS更新…。これはECを運営するために必要なフロント業務のごく一部である。しかしこれらの業務を全て自社(EC事業者)で行うことは得策ではない。EC運営で売上を上げようと思うと自社で多くのことをやりたくなってしまうものだが、そうではなく、緊急性があるものや、重要で事業者だけしかできない、やるべきことに注力することが重要である。

EC事業者はEC事業者でないとできない業務、すなわち「想い」を形にする業務を中心に行っていきたい。また技術的な業務には時間をかけるのはのぞましくない。例えば、上手のピンクのエリアに該当するような業務はEC事業者が行うべきだが、他は外部に委託していっても良い業務だ。

  1. 自分しかできなくて緊急度が高く、重要なこと、
  2. 緊急度が高く、重要だけど、他の人に任せられること、
  3. 自分しかできない、重要なこと
  4. 重要だけど、他の人に任せられること、
  5. 重要じゃないが、自分しかできないこと、
  6. 重要じゃなく、他の人に任せられること

これら6つの観点に業務を分解すると、EC事業者がやるべきことは1,3,5の項目である。他の人に任せられることは任せて、自分しかできないことのみに注力することが売上を向上させるためには必要不可欠と言える。

 

アウトソースを活用し業務の分担をしっかり検討する

より具体化してみよう。中小EC事業者がEC運営の全ての業務を行うことは、効率が悪い上に結果を得にくい。難しいことにこだわりすぎず、難しく外部に委託することが可能な業務はしっかり任せることが一番である。今回は以下の6つの業務領域について、どのようなことを中小EC事業者が行うべきで、どのようなことを外部に委託すべきかの一例を紹介したい。

 

企画

企画部分では、キャンペーンや特集の基本的なアイディアをしっかりEC事業者は考えていくべきだ。それを実際のページに反映したり、モールなどのキャンペーンに乗せたり、リードをどのように獲得していくのかなどのテクニカルな部分は外部に任せていきたい。

EC事業者:商品企画、特集企画、キャンペーン、割引・セール企画
外部:商品説明ページ企画設計、特集の構成、キャンペーン訴求設計、セールからのリード(見込み客)獲得設計

 

集客

集客業務では、店舗の“想い”をユーザーにしっかり伝える部分をしっかり行っていくことが重要になる。テクニカルでトレンドに流されやすい部分は外部に委託していくと効果が上がりやすいだろう。

EC事業者:ブログ、Facebook、Instagram、Twitter更新、商品記事、メルマガ作成
外部:SEO対策、有料広告配信、アフィリエイト、メールマーケティング

 

デザイン
デザイン業務は専門性も高く、ユーザーに商品の良さを伝えるためのスキルなども必要になるため、サイト全体のデザインやランディングページなどはブロに任せるのがオススメだ。デザインテイストや伝え方が決まった後は、そのページを複製して情報を追加したり、新商品のページを作るような業務は事業者がどんどん行うべき内容となる。

EC事業者:新商品アップ、商品詳細ページへの情報追加、複製ページ制作、コンテンツデザイン
外部:サイトデザイン、導線改善、特集ページ制作、LP(Landing Page)制作、訴求ページ制作、バナー制作

 

サイトメンテナンス・組み込み

サイトメンテナンスについては、更新などの日常業務は可能な限りEC事業者側で行っていく必要がありそうだ。新規ページを1から構築したり、プログラミングが発生するようなものは外部に委託すると効率が上がる。

EC事業者:既存ページの更新、編集、情報の上下入れ替え
外部:新規コーティング、機能拡張プログラミング、モジュール追加

 

販促・マーケティング

この領域はオンラインについてはほとんど外部に委託するのが理想的。店舗がある事業者は店舗での販促や、チラシなどのオフライン施策をしっかりおこなっていくことが事業者としては重要なポイントになるだろう。

EC事業者:店舗での販促、チラシやハガキ・FAXなど、イベント販促
外部:SNSマーケティング、メールマーケティング、記事制作、動画告知

 

分析

分析業務は必要最低限のデータにはしっかり目を通していく必要がある。思った以上にデータをみない事業者が多いが、主要のKPIをしっかり設計してモニタリングをすることは定期的に行っていく必要があるだろう。

事業者:主要KPIの定点チェック、売上状況のチェック
外部:主要KPIの検討、KPIの定点チェック、週・月次でのレポーティング、改善提案、コンサルティング提案

 

このように業務の分担を行うことで効率が上がることはもちろん、外部の専門チームを上手に活用することで、売上の向上も見込める。業務の種類をしっかりと理解して役割分担をすることは思った以上に重要なポイントになる。

 

 

成長している事例

 

このような考え方をうまく適用して成長曲線に乗っていった事例をいくつか見ていこう。

 

ヤミツキカリー(カレー販売)

レトルトカレーの販売を行うヤミツキカレー。このサイトでは、カレー単品の販売だけでなくセット販売なども実施。

ここでは当初から売上が40%も改善。その理由は非常にシンプルで商品が売れない理由を取り除いたことだという。たとえば在庫がなくなるリスクを減らすことや、新商品の画像やテキストの素材を早めに準備すること、そして決めなければならないことをスピーディに決めることなど、少し気をつければ出来ることをしっかり行うことが重要だという。そういったことがしっかり行うことができる事業者は売上が上がりやすくなるだろう。

 

ゆとりの空間

料理家 栗原はるみ・栗原心平のオンラインショップであるゆとりの空間

ここでは、役割分担を事業者と運営代行でうまく切り分けて、売上を約16倍に引き上げることに成功した。EC事業者側では、特集企画・販売強化する商材の決定・キャンペーン企画などを実施。この時期はどの商品の販売を強化し、顧客のメリットとなるキャンペーンはどのような企画なのか、というところを具体的に検討。そのアウトラインに沿って運営代行会社が新しいページを作成し動線となるバナーの追加、コーディングを行った。これにより、スムーズに新しい特集企画のアップやキャンペーンの実施ができ、PDCAを短いサイクルで数多く回すことができているため、効果につながったという。
さらに今までは解析や集客アドバイス、制作などを複数社に分けて依頼していたが、1社で解決できるようになって費用削減や外部業者とのコミュニケーションに関わるコストも大幅に減ったようだ。

 

レザーハウス

レザーハウスは、革ジャケットや革財布をはじめとして、革のお手入れ用品も取り扱っている革製品専門店だ。

ここでも事業者と運営代行で役割分担を行うことで、月次売上が9ヶ月連続前年比20%以上増加した。当初「夏の予約販売特集」と称して、季節感をもたせた特集ページを企画したが、思うように成果が出なかった。そこで、訴求内容が間違っていないか、キャンペーン内容が正しく伝わっているのか、販売意欲を高められているのかという点を徹底的に分析。今まで行っていなかった会員へメールでの先行配信を行う他、予約販売ページのクリエイティブも改善をした結果、施策開始からたった3時間で結果を出すことができたようだ。

 

 

役割分担を明確にし、難しい部分に時間をかけないことが理想的なECサイト運営

 

このように、中小EC事業者が手間をかけずにサイトを立ち上げ成長していく方法を見てきたが、中小EC事業者に大切なことは、難しい部分に時間をかけないことだということがわかる。ECサイト運営は非常に難しい部分が多く、それを自社だけで行うことは現実的に不可能だ。そこに貴重な時間を割いてしまうのではなく、FacebookやInstagramといったSNSの活用や、新商品企画など、事業者側が行う必要があったり、事業者側だからこそ持っている商品への熱量を伝えたりといったことに力を入れた方が、工数も費用も限界のある中小EC事業者には重要なのではないだろうか。

また、開設だけでなく運営もトータルで考えていくことも大切である。ECサイトはもちろん放っておくだけでは成果が出ない。きちんと運営を考えることで成果もついてくるのである。当たり前のことであるが、その点をしっかりと理解し、どこまでを事業者が行い、どこまでを外部に委託するのかまで考える必要がある。アウトソースを上手く活用することでECサイトを成長曲線に乗せることができるだろう。

 

今回ここで解説した内容についてのセミナーが9/13(水)に予定されている。もし興味のある方は参加されることをおすすめする。

※9/13(水)開催予定のセミナーは終了いたしました。