サードパーティのCookieの廃止がほぼ確実となるなか、B2C、B2Bどちらのマーケターも、より優れたデータガバナンスとファーストパーティ戦略に注目するだろう。


2024年、消費者とB2Bマーケターは、これまで頼ってきたサードパーティ製のCookieに代わるファーストパーティのデータ戦略に注力することになるだろう。サードパーティのCookieは2024年中には廃止される予定だ。1月上旬に、Googleは同社のウェブブラウザChromeユーザーの1%に対し、サードパーティのCookieを制限する新機能の
テストを開始する。2024年は、より多くのユーザーとマーケターが代替案を探すことに躍起になるだろう。

 

Googleは、サードパーティCookieの廃止期限を厳守する予定

「過去に延期されたことはあるが、Googleは2024年にChromeのCookieを廃止するという期限を厳守するだろう」と語るのは、Yahooの最高収益責任者であるElizabeth Herbst-Brady氏だ。「広告主とパブリッシャーは、より多くのCookieの代替案とIDソリューションを、大規模かつ迅速にテストしなければならない」。

 

同氏はさらに、「2024年前半には、準備を加速するために、さまざまなソリューションのテストが全面的に、さらに多く行われることになるだろう。このように、第3四半期は、テスト、学習、そして採用に焦点を当てた猛ダッシュが予想される。第4四半期には、効果的であることが証明されたソリューションへの収束が見え始めるだろう」と付け加えた。

 

より優れたAIガードレールと顧客データの暗号化

サードパーティCookieの段階的廃止に伴い、マーケターは、最新のプライバシー規制への準拠だけでなく、高度な暗号化を含む顧客データ収集のための新戦略を導入することになるだろう。

 

「2024年、ブランドはサードパーティCookieの廃止と新しい大規模言語モデル(LLM)の出現によって、プライバシーと倫理の新しい課題への対応を準備している」と、米国の検索テクノロジー企業Lucidworksのグローバルセールスエンジニア担当VPであるBrian Land氏は語る。「つまり、マーケティングや顧客のプライバシーデータの扱い方が大きく変わる、ということだ。たとえば、ユーザーデータを収集する新しい方法を見つけ、その収集方法についてより透明性を高めなければならないだろう」。

 

また、同氏は、「LLMの管理に関して言えば、マーケターはユーザー情報を保護するために、高度な暗号化と安全なデータストレージを採用するだろう。心配はいらない。彼らは顧客の信頼と満足を維持しながら、ルールを順守できるように一生懸命取り組んでいる」と付け加えた。

 

AIガバナンスとビジネスへの価値

「特定のマーケティング機能のために新しいAIツールを試している組織は、『生成AI多重人格障害』を回避するために、これらの技術を繋ぎ、集中化されたフィードバックループ(フィードバックを繰り返すことで調整、改善していくこと)の作成に注目するだろう」と語るのは、米国のAIコミュニケーション企業、Persadoの共同創業者で最高執行責任者であるAssaf Baciu氏だ。

 

「企業は、特にマーケティングにおいては、現在の技術スタック全体に無数に散らばっている異種生成AIシステムを管理するために、中心となる生成AIの『頭脳』を導入し始めるだろう」とBaciu氏は言う。「この中心的な頭脳は、CRM(顧客関係管理)がメールに対して行ったように、またCDP(顧客データプラットフォーム)が顧客データに対して行っているように、AIモデルの訓練と意思決定にオーケストレーション(システムやソフトウェア、サービスなどの構築、運用管理を自動化すること)と秩序をもたらすだろう」。

 

組織におけるAIの役割をより適切に理解することで、マーケターはテスト段階を乗り越え、AIがビジネスにもたらす価値を重視するようになるだろう。

 

Persado のマーケティング担当SVPのMichele Nemschoff氏は、「より多くの最高マーケティング責任者たちが、生成AIがいかに効率的かというだけでなく、アクション、コンバージョン、最終的には収益を促進するのに最も効果的であるかにも照準を合わせるようになるだろう」と述べた。「しかし、生成AIがマーケターにとって恐るべき補佐役になったとはいえ、人間とAIが一緒に作業した方が良いことは間違いない。テクノロジーチームと人間チームのコラボレーションを最大化することが、実行への道である」。

 

コンテンツ供給のためのデータ管理の改善

今後1年は、企業はAIを活用してコンテンツを充実させ、より強固な顧客体験を提供するようになるだろう。つまり、マーケターは、より包括的なデータ管理を導入し、情報を見落とさないようにする必要がある。また、情報を探すために人の時間を無駄にしないようにする必要があるということを意味する。

 

「入力として正しいメタデータや命名規則がなければ、AIは適切な結果を提供するための適切なリソースを得ることができない」と、米国のマーケティングデータ管理企業Claravine の最高事業成長責任者であるChris Comstock氏は語る。「したがって、無関係な、不完全な、あるいは一貫性のない情報が多くなり、コンテンツの作成から測定に至るまで、データのギャップが見られるようになる。2024年には、どのような業種であっても、データの一貫性が必須となるだろう。ブランドは、AIとLLMへのすべての入力を管理する方法の必要性を認識する一方で、最適化と測定のためにAIの導入と実装に最終的に投資することになると考えている」。

 

消費者は価値やパーソナライゼーションとデータを交換するようになるだろう

サードパーティCookieが廃止されれば、マーケターは消費者とつながるためのより魅力的な方法を探し続けるだろう。希望の光は、データ提供に対する価値がはっきりしており、ブランドとの交流に利益がある場合は、消費者がデータを共有してくれる、ということだ。ブランドは、この利益とデータの交換についてユーザーに透明性を保つことが重要である。

 

「確実に過半数以上の消費者はパーソナライズされた広告を求めており、価値交換が適切であれば、彼らはブランドがそれを実現するために必要な情報を喜んで共有する」と英国に本社を置くダイナミッククリエイティブ音声広告企業、A Million Ads(AMA)のCEO兼創業者のSteve Dunlop氏は語る。「現在、大規模なパーソナライゼーションは、かつてないほどアクセスしやすく、手ごろな価格で実現できるようになっている」。

 

米国の会話型マーケティング企業Connectlyの共同創業者兼最高技術責任者であるYandong Liu氏は、「オンライン活動やデータ収集に関して消費者のプライバシー意識が高まるにつれ、パーソナライズされた体験の提供と、消費者の情報を高度に安全かつプライベートに保つことの間で、長ったらしい言い訳が増えていくだろう」と語る。「2024年には、個々の顧客体験を提供しながら、プライバシーの権利について教育するバランスを取り続けることが、ブランドの発展と顧客体験にとって不可欠になるだろう」。

 

マーケターは地理的データをさらに利用する

米国の独立系メディアプランニング代理店NOVUSのCMO兼社長であるRob Davis氏によると、ポストCookie時代のもう一つのソリューションは、地理的、地域的消費者データにもっと依存することになるだろう、と言う。

 

「前提は簡単で、同じ穴の狢(むじな)である」とDavis氏。「オーディエンスの特徴や匿名化された個人ではなく場所をターゲットにすることで、(地理的ターゲティングは)プライバシーに準拠したターゲティングの機会を提供し、サードパーティCookieの必要性を大幅に回避する」。

 

同氏は、「前提は簡単だが、実行はそうではない。郵便番号レベルでキャンペーンを設定し、極めてきめ細かく最適化できるようなデータインフラ、人材、手段を持つ代理店はほとんどなく、マーケターはさらに少ない。地理的ターゲティングを実行できる企業にとっては、競争上の優位性となるだろう」と付け加えた。

 

ABMチームは購買委員会のスコアリングを採用

強化されたコンテンツと体験から得られるより多くのデータにより、企業のB2Bマーケターは、主要なグループや委員会をターゲットとする、より包括的な方法を探すようになるだろう。

 

B2Bマーケターは、個人や企業内での特定の役割に結びつけられたMQL(marketing qualified lead:マーケティング活動で獲得したリード=見込み客)の測定にとどまらないことに注目するだろう。その代わり、ABMチーム(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティングの略で、企業を対象とし戦略的にアプローチをしていく、BtoBマーケティングの手法)は個人を識別し、委員会の購入の可能性を決定する全体的なスコアで異なる方法で評価する、適格購買委員会(QBL)スコアを使用するだろう。

 

「購買委員会全体のスコアに加え、営業チームもスコア全体の一部である個々のリードスコアを担うことになるだろう」と語るのは、米国のB2BプログラミングプラットフォームAudyenceのCEO兼共同創業者であるKarl Van Buren氏。「これによって、自分たちのソリューションを支持してくれそうなのは誰か、提供されるソリューションに対してあまりコンテキストがないのは誰か、妨害者になりそうなのは誰か、といったコンテキストを得られる。これらの洞察は、従来のリードスコアリングモデルでは決してできなかった方法で、営業アプローチに情報を提供する」。

 

同氏はさらに、「何百人もの企業のマーケターや代理店のチームメンバーとの関わりから、企業ブランドは2024年のCookie廃止に対して十分な準備をしている。大多数がCookieへの依存を減らせるようにファーストパーティデータ戦略に投資している」と付け加えた。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の12/27公開の記事を翻訳・補足したものです。