あなたの会社は、売買できるほど価値のあるデータをどれくらい持っているだろうか。ここでは、データから真の価値を引き出すための5つのヒントを紹介する。

「データは資産である」。これは、ベンダーのプレゼンや会議、広告で数えきれないほど耳にする言葉だ。また、一部の企業にとって、データはまさに「資産」である。

例えば、Googleのようなハイテク企業は、データの価値の上に成り立っている。Googleはウェブ上のデータ分析から始まった。検索エンジンをデータ収集の中心に据え、隣接する分野のデータ収集とそのデータからの分析を提供することができたのだ。Googleが新規顧客を獲得するたびに、市場にサービスを提供するために収集した個人情報が追加される。同社の広告の優位性を支えているのはデータである。

Google、Amazon、Apple、Microsoftの価値を合わせると5兆ドルと言われている。これはほぼオランダの価値に匹敵する。それでは、これらのハイテク企業の成長を支えるものは何だろうか。

それは、「データ」だ。彼らは以下のようなデータを持っている。

・消費者の購買についてのデータ。

・自社が開発したデバイスから得られるデータ。

・クラウドやゲームなど、自社が提供するサービスから得られるデータ。

これら全てのデータは、企業としての全体的な価値を押し上げるだけの力がある。

しかし、あなたの会社にもデータがある。そのデータは、おそらくGoogleと同じようにあなたのビジネスにとって価値があるはずだ。ここでは、あなたの会社のデータを最大限に活用するための手順を紹介する。

1.データの市場価値を評価する

自社のデータの市場価値を評価する前に、他人が欲しがる可能性がある資産(データ)を持っているか、その資産を他人が利用可能なものにできるかを判断する必要がある。これらの状況ごとに詳しく見てみよう。

他人がお金を支払うような資産を持っているか。

自社の情報が貴重だと思っていても、他の人にとってもそうとは限らない。例えば、あなたがトラクターの会社を経営していて、そのトラクターのIOT(モノのインターネット)データを収集している場合、ディーラーが部品の故障時期を予測する情報に対してお金を払うと考えるかもしれない。しかし、ディーラーは「その情報であなたの製品により良いサービスを提供できるようになるため、とにかく持っておくべきだ」と考えるかもしれないのだ。

他のデータ資産も見てみよう。疑わしい人物がウェブ上で閲覧していたURLについて何年も情報を集めていたとする。その情報は、セキュリティ・アプリケーション・プロバイダ、セキュリティ担当者、政府、民間企業にとって価値があるだろうか。あなたにその答えはわかるだろうか。

ここに、パーソナルデータ(あなたのデータ)の見方を知るための簡単な計算機がある。この計算機は英国の経済紙Financial Timesが開発したもので、あなたが持っている情報にどれくらいの価値があるかがわかる。これは、そのデータに関連のある価値を理解するための最初のステップである。

他の優れたプロダクト・マネージャーと同様、市場調査を実施して、自社のデータがどのような市場セグメントに訴求するのか、それらのセグメントがその情報に対していくら支払うかを判断する必要があるかもしれない。この情報をもとに、「パッケージ」化したデータ製品を販売し始めることができるのだ。

持っているデータを「販売」する権利はあるか。

マーケターがデータの購入を考えるとき、通常は重要なメールアドレスを含む顧客リストを思い浮かべるだろう。そのようなデータは、カリフォルニア州消費者保護法(CCPA)やEUの一般データ保護規則(GDPR)といった規制の下で収集されてきた。

いずれの包括的規制の下においても、まず消費者の個人データを処理するには法的根拠が必要だ。同意(またはオプトイン)は最も一般的な法的根拠である。ただし、同意とは、個人データを収集する際に提示した目的にしか使用できないことを意味すると覚えておいてほしい。

それ以外の目的で使用する場合は、顧客にその旨を伝えなければならない。したがって、顧客データの販売を計画している場合は、まず顧客にデータの販売に関して通知し、同意を求める必要がある。そうでない場合は、プライバシーに関する声明を変更する必要がある。

たいていの場合は、データをどう使用するかについての意図は、プライバシー声明に含まれている。しかし、今現在、プライバシー声明にデータの使用意図が明記されていないのに、顧客データを販売したい場合、変更について顧客に通知することなく、声明を変更することはできない。顧客にオプトアウトする機会を与えなければならない。この措置は利用可能な状態で保持するデータ量、ひいてはデータ収益に影響を与える可能性がある。

2.製品の品質を評価する

それでは、プロダクトオーナーが「製品」の品質を確保するために、何をしなければならないかを考えてみよう。最初に、販売できると判断したデータの品質を見極める必要がある。データには、定期的に管理しなければならない性質があることを忘れないでほしい。その内容は次の通りである。

・正確性:データフィールドはどれくらい現実を表現しているか。フィールド内の情報は妥当か。

・完全性:データセットに含まれるフィールドのうち、実際にデータがあるのはいくつか。

・カバー率:販売するデータセットが、買い手が必要とする市場セグメントやユースケースをどの程度カバーしているか。

・一貫性:どれくらいデータの書式が統一されているか。データは同じフォーマットで日付が入力され、住所は同じように省略されているか。

・重複:データセット内のレコードに重複しているものがいくつあるか。バイヤーは同じレコードに2回お金を払うことを好まない。

・適時性:販売するデータセットは最新のデータで構成されているか、新旧が混在していないか。バイヤーは何に興味があるのか。

・詳細さ:データセットはどれくらい詳細か。これは、ウェブトランザクションから得た非構造化データを販売する場合に特に役立つ。画像を販売する場合、画像に適切で一貫したタグ付けがされているかを確認することは、ほとんどのバイヤーが求める細部である。

ほとんどのバイヤーは、購入したデータの品質報告書を要求する。これでバイヤーを惹きつけるに十分な品質の識別可能なデータセットができた。では、次に何をすればいいのだろうか。

3.ROIのための戦略を立てる

データを販売するための戦略を立てるには、数え切れないほどの質問に答えなければならない場合がある。ここでは、その一部を紹介する。

・データはユースベース(利用ごとに料金を支払う形式)で購入されるのか。

◦言い換えれば、バイヤーは特定のイベントのためにデータを独占的に使用することができるが、別のイベントにそのデータを再び使用することはできない。

・データセットはサービスとして提供されるのか。

◦この場合、バイヤーは必要に応じてデータにアクセスすることができるが、データセット全体はあなたの手元にあり、おそらくこのアクティビティ専用のクラウドに保存されるだろう。

・データセットの使用権を、ある企業からその企業のパートナーや再販業者に譲渡することは可能か。

・データはどのような形式で提供されるか。FTP(ファイル転送プロトコル)などセキュリティの確保された方法で転送されるか。

答えるべき最も重要な質問は「なぜデータの販売を検討しているのか」である。会社の新たな収入源にするためか。パートナーとよりよい関係を築くためか。社内に新しいビジネスを立ち上げるためか。まず、データを売却する目的を明確にしなければならない。

戦略策定の次の段階は、顧客がそのデータを購入する理由を確実に理解することだ。そのためには、購入予定のバイヤーがデータを購入するかどうかだけでなく、いくらなら買いたいと考えているか、どのような形でデータを提供してほしいのかを確認する初期調査が必要かもしれない。初期調査に取り組むことで、この事業を明確にすることができる。

そして、データのパッケージ化、販売、販売監視にかかる費用に対して、予想される収益を評価しなければならない。多くの場合、組織はこれが専門的な取り組みであり、日常的な取り組みのために設置されたデータチームだけでは管理しきれないことを忘れている。企業のデータを販売するためには、組織全体からの全面的なサポートが必要だ。

データを販売する理由や方法について大きな決断を下す前に、Doug Laney氏の著書「Infonomics」を読むと、データを真の資産に変える際に考慮すべきすべての背景について、よく理解することができる。

4.製品としてのデータに対する組織的なサポートの開発

この事業に対するROIによって、製品としてのデータを組織的にサポートするための最初の一歩を踏み出すことができる。データの販売には、運用体制、マーケティングプログラム、報告が必要になる。この枠組みの実現には、予算、人材、そして経営陣のサポートが必要だ。その中でも、経営陣のサポートは最も重要な要件である。

組織的なサポートは、データの管理とその品質を確保する責任があるチームにも及ぶ。品質指標が社内外で可視化されることで、彼らの仕事の成果が脚光を浴びるようになる。マネージャーや対象分野の専門家は、この新しい視点が自分たちの仕事に及ぼす影響を理解する必要がある。

あなたの組織にまだガバナンス機能がないのであれば、経営陣は間違いなくある程度の説明責任を要求してくるだろう。それが、最後のステップにつながる。

5.運営に対するガバナンスの確立

組織がガバナンス会議やデータポリシーを作成しても、あるいはデータチームが適切に管理していることを確認できていても、データの販売を開始すると、データに対する説明責任に新たな重点が置かれる。これには通常、正式な仕組みやプロセスが必要だ。

データガバナンスとは、情報を効果的かつ効率的に活用するためのプロセス、ポリシー、役割、指標、基準の集合体である。ガバナンスプログラムの作り方や維持の仕方について理解が必要だと感じたら、John Ladley氏の著書「Data Governance」を読んでみてほしい。

データから得られる価値のすべてが、公開市場で販売することによって得られるわけではない。データの価値は他の方法でも活かすことができる。新型コロナウイルスのパンデミックが始まった頃、米国の航空会社American Airlinesは同社のロイヤルティプログラムのデータを担保に、CARES法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act:コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法)に基づいて政府から2つの融資を受けた。このローンはそれぞれ45億ドルと評価された。当時、American Airlinesは、第三者評価機関が自社データを195億ドル~315億ドルと評価したと発表していた。

データを販売するにしても、融資の担保にするにしても、あるいは会社の業務をより効率的にするにしても、以下に述べる最初の一歩が最も重要なのだ。

・データに何を求めるかを決定する。

・データの使用または販売に向けて準備する。

・経営陣の支持を得る。

※当記事は米国メディア「MarTech」の12/22公開の記事を翻訳・補足したものです。