65%の顧客が、ポジティブなブランド体験は優れた広告よりも影響力があると回答

 

「なぜマーケティングは顧客体験に悩まされるのか」と、米国のソフトウェア開発会社Blueshiftの共同創業者兼CEOのVijay Chittoor氏は問いかけた。

「なぜすべてのマーケターにとって、単に人間中心の体験を作るということが簡単ではないのだろうか。結局のところ、誰もがそうした体験を作りたいと望んでいる。私たちは、すべてのマーケターが顧客とのつながりを心から望んでいると信じている」。

 

ブランドとのやり取りをかつてないほどパーソナライズし、拡張することで、AIはブランドが人間中心の顧客体験を実現するのに役立つ。Chittoor氏は、The MarTech Conferenceのセッションで、その方法を説明した。

 

同氏によると、その答えは、顧客とのタッチポイントが非常に多いことに一因があるという。

 

「10年、15年、20年前は、電子メールなどのチャネルを通じてしか、積極的に顧客を取り込むことができなかった」と同氏。

「しかし、今日、より多くのチャネルがエンゲージメント・チャネルとなっている。マーケターが何百万ものパーソナライズされた体験を考えることは非常に困難だ。また、そのすべては、顧客に対する不完全な理解によって、さらに妨げられているのだ」。

 

役に立つどころか、押しつけがましい

こうしたことから、マーケティングは役に立つどころか、押しつけがましくなりがちだ。そして、それが問題である。Blueshiftの調査によると、65%の顧客が、ポジティブなブランド体験は優れた広告よりも影響力があると回答する一方で、32%の顧客は、たった一度のネガティブな体験で、大好きなブランドから離れると答えている。

「マーケターやカスタマーエクスペリエンス領域の他の機能が顧客をいらつかせるたびに、ある種の摩擦を生み、その顧客を本当に理解していないことを示すことになる」と、同氏は続ける。

 

そこで、AIが貴重な存在になってくる。

マーケターの仕事は、一人ひとりの顧客に次善の体験を提供することだ。AIは、顧客とのつながりを「誰が」「何を」「いつ」「どこで」行うかに対処することで、その規模を拡大することができる。

 

ターゲットは誰か

「どのように正確に顧客をセグメント化するか」「顧客が顧客主導型のカスタマージャーニーのどの段階にいるのかを把握するにはどうしたらよいか」。

 

どこをすすめるか

「メッセージで何を伝えるか。顧客にオファーを出すべきか。別のコンテンツを置くべきか。商品を売り込むべきか。何らかの形でカスタマージャーニーを進めるべきか」。

 

エンゲージメントのタイミング

「今は常時接続の世界だ。人々は常につながっているが、あなたのメッセージに本当に反応してくれる適切なタイミングはいつか。相手をイライラさせることなく、相手に割って入ることができる適切なタイミングが非常に重要である」。

 

どのチャネルでつながるか

「オムニチャネル、カスタマー・ジャーニー・エンゲージメント・サイクルでは、多くのデジタルチャネルがあるが、オフラインチャネルや人の手によるチャネルも数多く存在する」。

 

AIは、何千何万という顧客に対して、彼らの個々の質問に一度に答えることができるとChittoor氏は指摘する。例えば、一般的なマーケティングコンテンツに頼るのではなく、AIはあらゆる情報を駆使して予測的な提案を行う。以前は、何百万人もの顧客に朝8時に一斉にメッセージを送る「スプレー・アンド・スプレー方式」のように、マーケティング担当者にとって最も都合の良い時にコンタクトを取っていた。しかし、AIが人々のオンライン上の行動から、資料を送る最適なタイミングを判断できるようになれば状況は変わる。

 

結果は数字に表れ、それは驚異的である。同氏は、寝具ブランドのTuft and Needleが、電子メールの収益を181%増加させたことを指摘した。同様に、アパレルブランドのJumperは収益の指標となるリードを384%増加させ、自動車用品のeコマース企業Carparts.comはエンゲージメントを400%増加させた。

 

「アナリスト業界で最も信頼されている調査会社のForrester Researchは、非常に多くの異なるチャネルにおいてAIを利用したエンゲージメントが与える影響を数値化している」と、Chittoor氏は述べる。「また、同社によると、平均的な顧客はAIを使うことで1億2,800万ドルの収益アップと781%のROIを達成しており、その中でもAIによるターゲティングが最も重要な部分であるという」。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の4/29公開の記事を翻訳・補足したものです。