2020年当初を思い返してみると、新型コロナウイルスのパンデミック発生を予測していたとしても、2021年になってもまだ話題になっていると予測したり、世の中のほとんどすべてが変わってしまうことを理解したりしている人がいたとは思えない。

 

このように考えると、予測することは、むしろ皮肉であると思える。それでも、B2B決済には、2020年の出来事から生まれ、今年1年で展開されるだろう、いくつかの明確なトレンドがある。

そこで今回は、2021年に注目すべき決済自動化のトレンドを紹介しよう。

 

小切手決済の利用は減少

決済自動化のビジネスケースは、主にコスト削減と買掛金(AP)の効率性に焦点を当てている。新型コロナウイルスとリモートワークが、同ビジネスケースを後押しした。

 

今でも多くの企業が、小切手を切るために社員を出社させることを、安全上の理由でためらっている。しかし、より耳にするケースは、サプライヤーは小切手を受け取ることを好まないため、バイヤーにACH(自動資金決済センター)による決済を求めているということである。

サプライヤーのデジタル決済への対応がさらに顕著に進むと、小切手はさらに廃れていくという、転機を迎えていると考えられる。

 

ACHの問題点

事業者がより多くのサプライヤーへの支払いをACHクレジット決済するようになると、ACH決済の実際のコストとそのリスクを実感するようになる。

 

ACHの手数料は、取引ごとに25から50セントと安価に思えるが、サプライヤーが有効化するのにかかる時間、費用、義務を考慮すると、実際のコストは1.40ドルから3.79ドルの間になる。これは小切手を処理するのにかかるコストとほぼ同額だが、これに不正防止コストは含まれていない。ACH決済詐欺が増加している。特に、詐欺師がベンダーを装い、APチームを信用させ、詐欺用銀行口座に送金させるベンダーEメール侵害(VEC)スキームが増えている。

 

多くの企業は、小切手処理プロセスに関しては高度な管理が行われており、銀行は、ポジティブペイ(ほとんどの銀行で採用されている不正検出ツール)や受取人ポジティブペイ経由で管理している。しかし、ポジティブペイによる管理は、ACHでは常に行われるとは限らない。長い間銀行は、小切手詐欺のみを中心に対応してきたため、ACHの詐欺対策には苦労していることが多い。

 

しかし、今やACH詐欺は増加しており、ACH決済プロセスは小切手と比較にならないほど高速なため、そのリスクはさらに高まる。悪徳業者に資金が届く前に問題を認識しなければ、盗まれた資金を回収することはほとんど不可能だ。

 

これらの問題が発生することにより、さらに多くの企業が、自社チームの過重労働を防ぐため、決済プロセスの外注を推進する可能性がある。

 

デジタルトランスフォーメーションの波及効果

2021年には、企業は複数のデジタルトランスフォーメーションの波及効果を分析し整理するだろう。企業は緊急にデジタル化を進める必要があり、通常なら実装に時間がかかる変更のために計画を立てる時間がなかった。

 

これは外部の利害関係者にも影響を与える。部門や業界を超えた、迅速で戦略的なデジタル化による同様の波及効果が見られるだろう。そして、これは、新たなニーズに対応するソリューションプロバイダーが出現し、変革と自動化のより戦略的な第二波につながるだろう。

 

電子データによる売掛金プロセスの高速化

小切手が長期間好んで使われてきた隠れた理由の1つに、売掛金(AR)部門が小切手を簡単に照合できることがある。資金とデータは同時に表示され、送金データは小切手の控えに記載される。そこから、AR部門は、請求書に対してどう資金を適用させるかを正確に把握することができる。取引銀行でロックボックスサービス(会社を通さずに銀行が小切手を直接処理するサービス)を利用していれば、小切手の詳細を入力する必要もない。

 

最近まで、このシンプルさはACH決済には導入できなかった。AP部門スタッフは、自社口座にあるACH入金を確認できるが、データが決済に付随しないため、それらの入金をどう適用すればいいかを必ずしも知らされるわけではない。Nacha(全米自動決済協会:the National Automated Clearing House Association)やThe Clearing House(米国預金取扱機関向けリアルタイム決済プラットフォーム)のリアルタイム決済(RTP)ネットワークにより、ACHの決済データ転送が改善された。フィールド数や文字数は限られるが、適切な方向への大きな一歩である。

 

サプライチェーンファイナンスの扉を開けたデジタル化

サプライチェーンファイナンスに関しては、かなり前から電子請求書が使われていたヨーロッパと比べて、アメリカは遅れをとっている。アメリカでは、データを利用したより迅速かつダイナミックな引受を実現することで、サプライヤーとバイヤーの双方にとってのより高い流動性とより多額の運転資金を創出する大きなチャンスがある。

 

PO(商品名や出荷条件などの販売条件を記載した発注書)発行から決済処理まで、全てのデータの流れにアクセスできる、よりスマートなシステムは、事前承認済割引や融資オプションをサポートできる。これは紙ベースの環境では実現できなかったが、企業によるデータのデジタル化に伴い、このようなサービスがさらに増加するだろう。

 

ビジネス向けトランザクション型ソーシャルネットワーク

バイヤーとサプライヤー、そしてAPとARを別々の独立した組織と考えることは時代遅れになりつつある。どのAPチームにも対応するARチームがある。すべての企業がバイヤーでありサプライヤーでもある。

 

これらの全てのつながりが見えてくれば、資金、PO、請求書、契約、およびその他の文書の常に繰り返される交換の背後にある、金融専門家の巨大なソーシャルネットワークが見えるようになる。しかし、企業には、それらの機密性の高いデータを安全に扱うために必要な体制が整っていない。

 

B2Bソーシャルネットワーキングのコンセプトを利用して、「Facebook for Business」のプロト版のようなものを自社製品に組み込んでいる金融機関もある。しかし、より広範な機能を持つものや、広く採用されているものはまだ無い。

 

テクノロジー企業が集まって、その広大なネットワークを共有するか、1つの企業が適切なソリューションを開発、販売するかにかかわらず、市場は新たなビジネススタンダードを受け入れる用意ができている。企業をバーチャルな暗黒時代からルネッサンスへ導くプラットフォームを作ろうとしている。そうなれば、大成功を収めることができるのだ。

 

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の2/5公開の記事を翻訳・補足したものです。