新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、モバイルは、この非常事態を乗り切るための最新の情報を必要とし、合理的な利便性を求める人々の生活の中心となった。今年のカスタマーエンゲージメント戦略を考える上で、必ず検討しておきたい、モバイルとデジタルマーケティングの特定の側面の重要性を示す10の統計を厳選した。

 

1) モバイルアプリのオーディエンスは2020年に前年比31%増。2019年の16%増より上昇

 

 Airship(カスタマーエンゲージメント・プラットフォームを提供する米国企業)内チームは、2021年にモバイルとデジタルのエンゲージメント向上を成功させるためのアドバイスを提供している。

Airshipの「State of Global Mobile Engagement 2020(グローバルなモバイルエンゲージメントの現状 2020年)」レポートは、モバイルアプリを活用するオーディエンス全体が増加しただけでなく、アプリの平均開封率と通知の直接開封率が劇的に上昇し、位置情報共有のオプトイン率が数年ぶりに増加したことも明らかにしている。レポートの全文では、さまざまな業種や地域の数値の比較を確認することができる。

 

 

2) 新型コロナウイルスのパンデミックによって、eコマースへの移行が約5年早まった(IBM

小売業者は、この加速度的成長に直面し、顧客が、現在、そして将来に求め必要とする体験を提供するために、eコマースと組み合わせた店舗の役割を再考することが重要だ。消費者がクリック&コレクト(オンラインで商品を購入し、リアル店舗や宅配ボックス、ドライブスルーなどの自宅以外の場所で商品を受け取るようにする購買スタイル)を好む理由が、安全性から利便性へと変化するのに、パンデミックの発生からわずか数か月しかかからなかった。レポート全文はこちらから。

 

 

3) 企業のCX(カスタマーエクスペリエンス)評価で「非常に良い」と回答した消費者の94%は、今後もその企業の商品やサービスを購入する可能性が高い(XM Institute(エクスペリエンスマネージメントに関する米国企業)の調査

継続的なテストや実験によって、大きなビジネス成果をもたらす小さな改善を促すことができる。テストや実験は、多くの場合、すべての人を対象とする前に、最初は少数の顧客に焦点を当てて行われる。このエビデンスに裏付けられたアジャイルなアプローチは、収益の向上だけでなく、製品リソースを最もインパクトのある分野に割り振ることができ、業績やユーザーの維持に対するリスクを軽減することができる。レポート全文はこちらから。

 

 

4) 52%の顧客はオファーが常にパーソナライズされたものであることを期待しており、これは2019年の49%から増加(Salesforce(クラウドコンピューティング・サービスを提供する米国企業)の調査「State of the Connected Consumer」)

ロイヤルティを築くためには、顧客のニーズを理解し、顧客の時間と関心を大切にしていることを示す必要がある。スケジュール化したキャンペーンやブランドメッセージをやめ、役に立ち、有用で、コンテキスト性の高い情報を個人に届けるのだ。業界アナリストによると、顧客行動をトリガーにしたメッセージは、通常のマーケティングメッセージの少なくとも3~5倍の反応率を示すといい、パーソナライズされたプロモーションやアンケートやレビューを完了するためのインセンティブを追加することができる。レポート全文はこちらから。

 

 

5) オムニチャネルエクスペリエンスに投資する企業数が20%から2020年には80%以上に急増(PwC(英国に本社を置く世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム)の調査「Retailing 2020::Winning in a Polarized World 」)

 このパンデミックの間、最強のブランドは非接触型コマース、独占性、希少性、コンテンツを重視し、フリクションレスな最高のサービスに乗り出してきた。今年のマーケターは、これらの要素を組み合わせ、互いに価値を提供し、顧客の維持と生涯価値を高める直接的な顧客関係の拡大に焦点を当てるだろう。そして、それは、アプリ、SMSやモバイルウォレットなどのネイティブなモバイルファーストチャネルをマスターし、顧客のライフサイクル全体を通して最適なメッセージを送信し、取引を行うことを意味する。2021年には、マーケターは、最適化を強化し、カスタマージャーニーやビジネス目標への影響とメッセージエンゲージメント指標に焦点を当てるだけでなく、デジタルプロパティやメッセージングチャネル全体のエンドツーエンドのユーザーフローを最適化することで、個人の好みとビジネスの収益に役立つようになるだろう。レポート全文はこちらから。

 

 

6) 2022年までに、モバイルウォレットが、現金より好まれる支払い方法に(Mordor Intelligence(インドの市場調査・コンサルティング企業)のレポート「2019 Mobile Payments Market – Growth, Trends, and Forecast (2020-2025)」)

このパンデミックの間、多くの統計がモバイルウォレットの勢いが増していることを示しており、今後も継続すると示唆している。Mordorの調査において、買い物客の57%が、パンデミック後もモバイルウォレットの使用に安心感を覚え、非接触型決済を継続したいと答えている点を考慮しよう。また、消費者の30%は、今回初めてモバイルウォレットでの取引を行った。モバイルウォレットの仕様開始後、消費者の平均注文量は2.4%増加し、取引頻度は23%以上増加した。消費者は、より合理化された利便性を求めているため、クーポン、ロイヤルティやギフトカードなどのモバイルウォレット機能は、店舗での買い物において、消費者にとって魅力のあるものとなるだろう。レポート全文はこちらから。

 

 

7) オンラインショッピングをするサイトを決めるにあたり、より多くの買い物客は信頼性(70%)と利便性(68%)を優先(Facebook IQ(米国のマーケティング企業)のレポート「The Future of Shopping has Come Early」)

消費者は利便性を優先し、スピードと利便性を高め手間を省くことができる商品を選択している。大手コマース企業は今後数年間で、サブスクリプション、自動補給、予知保全、マーケットプレイスの運営や決済サービスなど、物理的な商品に付随するサービスからオンライン収益の10%を生み出すようになるだろう。レポート全文はこちらから。

 

 

8) 新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、ユーザーあたりの平均アプリ開封率とプッシュ通知の平均直接開封率はともに29%増加(Airshipのレポート「State of Global Mobile Engagement 2020」)

Airshipの別の調査によると、使用開始後90日間に通知を受け取ったアプリユーザーのリテンション率は、受け取っていないユーザーのほぼ3倍となるが、パンデミックにより、アプリと通知へのエンゲージメントはさらに高まったという。しかし、優位性を得るには、まずユーザーにこれらのメッセージを送信する許可を得る必要がある。オプトイン率の最適化とは、価値を適切に位置付けるためにさまざまなアプローチをテストすることであり、それはブランドやアプリの業種によって異なる可能性がある。ここでは、すぐに活用できる10の実用的なアイデアを紹介しよう。

 

 

9) 76%の顧客はコンテキストに応じて異なるチャネルを好む(Salesforceの調査「State of the Connected Consumer」)

現在の多くのジャーニーには複数のデバイスやチャネルが関係しているため、顧客は、デジタルと店舗のタッチポイントで、一貫性とつながりがあるエクスペリエンスを期待している。小売業者は、顧客とその好みを認識するための戦略を立て、さらにチャネル間での実験を調整し、顧客がどこを小売業者と交流する場に選んだとしても、価値のあるセグメントが一貫性を感じることができるものにする必要がある。

 

 

10) 32%の顧客は、たった一度の悪い経験で好きなブランドから離れていく(PwCの調査

言い訳は無用だ。自社と競合する優れたブランドはあまりにも多く存在するので、意思決定や提供するエクスペリエンスを、ユーザーから取得したデータに基づいたものであり、時間と共に、繰り返し改善されるようにしよう。企業はこの未曾有の時代に生き残りをかけ、緊急性をもって対応してきたが、消費者の行動や期待も同様に急速に変化している。これまで以上に、消費者の期待は多くの場合、すべてのブランドの中で直近に体験した最高の体験に基づいているため、その水準は常に引き上げられているのである。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の2/2公開の記事を翻訳・補足したものです。