「ソーシャルプルーフ」とは、商品に「保証」を与える個人のインフルエンサーやグループの影響力をいう。これは、人々が影響力を有する人物や多数派に従う傾向があるという原則に基づくものである。人々は妥当性を確認するためにそのような行動をとる。つまり、安全欲求の結果である。
安心と受容を切望する人々は、当然、常に良いことが保証される場所にいるだろう。
それは、バンドワゴン効果(ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果)でも同じように機能する。
人には、他の人が同じことをしているのを見たときに、特定の行動を取らせる認知バイアスが働く。社会的サークルにいる影響力のある人々が特定のイデオロギーを持つ場合、人々はその考え方を採用する傾向があり、そして、より多くの人々がその考え方を当然であると思うほど、その理論の影響力はより実質的なものとなる。マーケティングでは、企業がこの原則を用いて人々に自社商品をひいきにさせるのだ。
たとえば、動画で商品を宣伝しているYouTuberは、その商品に価値があることのソーシャルプルーフとなる。
また、Amazonで高評価を得ている商品は、評価の背後にいる群衆が、その商品が非常に優れていることの統計的なソーシャルプルーフを残している。
さらに、コンバージョン率最適化(CRO)のウェブサイトに、尊敬する専門家が肯定的なレビューを残している場合、それはサービスが有用であることのソーシャルプルーフなのだ。
ここでは10種類のソーシャルプルーフ戦略と、それらがどのように、そして、なぜ機能するかを考えてみよう。
この情報によって、人々が他人を追随する理由の根幹に関する理解を深めることができ、また、これを独自のマーケティング戦略で使用することができる。
1. 専門家の承認
専門家や有名企業、政府機関が商品を承認すると、彼らをフォローする人々はその商品を信じるだろう。これは、人々が専門家や機関を信頼しているためである。
商品がFDA(米国食品医薬品局)認証である場合、人々はそれが安全であると信じる。同様に、医師が薬のブランドを処方する場合、人々はそれを服用することについて、より安全だと感じる。
フォローしている評論家が、あるテレビ番組を酷評した場合、最も直接的な反応としてはおそらくその番組を見ないということになるだろう。不快な経験から救われたという印象である。
人々が専門家の意見を聞くのは、得られた情報によって安心感を得られるからである。
2. 格付け
格付けは、商品やサービスの品質を示す重要な数値証明である。消費者は、肯定的に評価されたものを信頼し、否定的に評価された商品を避ける傾向がある。
これは、人々が群衆に追随するものであり、人間が本能的に、数が多いことに強さを見出すという事実によるものだ。人間は、互いに同一視する社会的存在なのだ。
映画の評価が低くなると、視聴者が減り続ける傾向がある。しかし、前宣伝が素晴らしく、試写会の回数が増加している場合、映画は大当たりする可能性が高くなる。
3. トラストバッジ
セキュリティバッジは、信頼できるセキュリティ機関によって与えられた承認のスタンプのようなものである。これらは通常、金融取引を可能にするウェブサイトで使用される。
消費者は、McAfee、VeriSign、TRUSTeなどのセキュリティプロバイダーを信頼している。バッジは(本物であるならば)、セキュリティ会社がサイトの所有者を精査して信頼性を判断したことを示すため、これらのバッジの取得は、人々にウェブサイトを信頼させることに役立つ。
人々は自身の金銭取引に安心を感じたいと思い、これらのバッジを表示しないオンラインストアを避けるだろう。
4. 大衆の支持
我々の多くは、富、才能、美しさ、受容、そして地位が好きだ。人々は自分自身の理想的なバージョンに惹きつけられ、自分がなりたいと思う人々の意見を信頼する傾向がある。
有名人は、群衆の強力な牽引力である。これは特に、ハリウッド俳優、有名なミュージシャン、尊敬されるアスリートやモデルに当てはまる。彼らが優れたIQを持っているかどうかは関係ない。彼らの影響力に従う人々は、彼らの意見を信じるのだ。
マーケティングにおいて、有名人を使って宣伝するのは一般的なことである。動画で有名人を雇ったり、個人をスポンサーしたり、特定の商品のパートナーシップを組んだりする。
説得力のある例の1つは、マイケル・ジョーダンの影響力によって、バスケットボールシーン、ファン層やシューズ愛好家の市場で定番となっているナイキの「ジョーダン」であろう。
5. ユーザーの声
ユーザーは他のユーザーの意見を聞く。あなたがこれを食べて気に入ったのなら、私も食べる。他の人がどこかに旅行してそこが気に入ったのなら、私もそこで休暇を過ごす。
我々は皆、同じ基本的なニーズを持つ人々であり、他の人が言うことを当然に信じている。特に、多くの人が同じことを公言する場合には。
商品を使用する一般の人々からの証言は、「本物」の要素を提供するだろう。消費者は、有名人の証言はおそらくギャラをもらっているだろうが、実際のユーザーエクスペリエンスからのフィードバックはより信頼できる傾向にあるということを理解している。
ホテル業界は、人々が最もこうした証言を通じて検討を行う業界の1つだ。一人のレビューの良し悪しで、ホテルの評判が上がったり下がったりする可能性がある。
6. 資格証明
無免許の一般人が行う手術を受けたくないと思うだろう。トラクターの運転手が操縦する飛行機に乗りたいと思うだろうか。
人々は能力の証明を信じている。ウェブサイトにビジネス資格証明がある場合、サービスはプロフェッショナルで本物であると見なされるだろう。
デジタルマーケティングコンサルタントを求めているビジネスマンは、そのサービスを遂行している人々の資格を調査する傾向がある。彼らは、CRO(最高リスク管理責任者 / Chief Risk Officer)としての重要な経験を持つ専門家によって運営されているかを知りたいと考えているのだ。
これにより、企業にプラスの影響を与えない低レベルなサービスへの支払いを回避できるからだ。クライアントはお金を失うことを望んでおらず、優れたサービスが提供されることを確信したいと思っているのである。
彼らは、優れたポートフォリオ、顧客層、評判、実績や事業提携の証明を持つ企業を好む。
7. 獲得メディア
これは、企業が直接生み出していないメディア活動だ。支払いを伴うものではない。ただ有機的に発生しているのだ。
いくつかの無料メディアの例:
・ニュースメディアの報道
・専門的な報道機関でのメンション
・専門的なウェブサイトやブログのバックリンク
・オンラインコミュニティでのメンション
・ステータスアップデートやツイートなどのソーシャルメディアでのメンション
信頼性の高いメディアが当然のように商品を勧めていることに人々が気づくと、彼らはそのブランドを「メインストリーム」と考えるだろう。
メインストリームの企業は、信頼できる情報やサービスのソースとして認識されているため、大衆はこれらの企業を頼りにし、信じるのだ。
8. ソーシャルメディア
ソーシャルメディアは今や、さまざまなタイプのソーシャルプルーフが見つかるコミュニティの標準形式である。
有名人、専門家、ユーザー、コミュニティ、友人やその他の影響力が、Facebook、Twitter、Instagram、Redditやその他のソーシャルプラットフォームで広がっている。
ビジネスを行っているのであれば、より多くのリードとコンバージョンを獲得するためにソーシャルメディアに参加するべきだ。
人々は、商品に関する投稿のシェア(支持)、いいね(評価と見なす)やコメント(証言)を信じている。
これらのプラットフォームは情報を非常に速く拡散し、これらのコミュニティで優れたソーシャルプルーフを集めることができれば大きな利益を生むことができる。
9. 群衆の知恵
これは一人の専門家ではなく、グループの集合体の意見である。陪審員による裁判は、部分的には群衆の知恵に依存するものであると考えることができる。
数量の見積もり、一般的な世界認識や空間的推論に関する質問に対して大人数のグループが提供する集約された回答は、通常、グループ内の個人が提供する回答と同程度に妥当であり、そして多くの場合、より優れている。
群衆の知恵から生じる解決策は、グループのほとんどの人が同意するものとなるであろう。
我々は他の人が同意することに同意することから、人々は群衆の知恵に従うだろう。人々が自社商品を承認すればするほど、より多くの人々が誘い込まれて購入するようになるだろう。
10. 家族と友人
家族や友人、特に長期にわたるものは、最も決定的なソーシャルプルーフを提供する。
1つの例としては、母親が選んだ特定の歯磨き粉を使って育ち、今でもそれを使い続けているというものだ。
また、友人が飲んでいるドリンクが何であれ、あなたもそれを飲む。
この原則は、カスタマエクスペリエンス(CX)で用いることができる。ビジネスとマーケティングを計画するときは、ターゲット市場での生活のあらゆる側面を考慮するのだ。どうすれば、顧客を、家族や友人にとっての自社商品のソーシャルプルーフにすることができるかを調べてみよう。
この先数年間の計画を立てれば、顧客とその家族との安定した長期的な関係を構築し、企業寿命を延ばすことができるのだ。
証拠を作る
ソーシャルプルーフの対極にある最も重要な部分の1つは、商品やサービスの完全性である。高品質の商品でない場合、誰もそれについて良いことを言わないだろう。
常に、人々が聞き、読み、見るものが、実際に彼らの得るものであり、それ以下の品質であってはならない。
この原則を理解することは、ビジネスとマーケティングに不可欠である。人間の行動がどのように機能するかを理解すればするほど、誰が自社商品を購入するかを見出すことができるようになる。
安心を感じさせることだ。誰もがそれを切望しており、人々は彼らの生活をより良くすると信じるものに惹かれるのである。
※当記事は米国メディア「Ecommerce Times」の8/3公開の記事を翻訳・補足したものです。