世界経済が、かつて経験したことのない困難に直面していることは事実だ。なかでも、eコマースとD2C・フルフィルメント機能へ及ぼす影響は、特に大きい。これは、人々の自宅に直接商品を出荷するサービスが必要不可欠であり、こうした企業が事業を継続することを多くの政府が認めていることからも、明確に示される。
責任を持ってビジネスを継続し、成長するためには、適切な対策を講じ、状況の変化に迅速に対応するための判断を下すことが重要である。
今は、ただ困難な時期であるだけではなく、一方では、消費者のニーズの変化に対応することでeコマースビジネスが大きく成長できるかもしれないまたとない機会でもある。しかし現在の成長機会自体には、困難な側面がいくつかある。事業を継続することでさえ非常に難しい危機時には、スケーリングはさらに難しいだろう。
ここでは、この厳しい時代を生き抜き、成功させるための4つの重要な戦略を紹介していく。
1. ガイドラインの施行とチームへのサポート
正しいことを実行するのは、従業員、顧客、そして、国全体のためだけではない。それは、優れたビジネスのためでもあるのだ。パンデミック拡大を食い止めることができれば、長期にわたり、より良い状態で事業を継続することができるだろう。
そうすることにより、コンプライアンスや規制から企業を守ることはもちろん、期待以上のことを実行することで、顧客や従業員のロイヤルティを獲得し、全体的な生産性を向上させることができる。マスクや手袋、消毒剤の提供にとどまらず、会話や経済的なサポート、柔軟性も重要となるだろう。
さらに、自社ビジネス内をどのように運営するかというだけでなく、サードパーティのフルフィルメント会社のビジネスがどのように運営されているかということも重要である。3PL(サードパーティー・ロジスティクス)が順調に稼働しているとき、あなたの会社も同様に繁栄するだろう。3PLのコンプライアンスによってダウンタイムのリスクは軽減するため、どのような措置が取られているかを確認するべきである。
この不確実な時期には、D2Cブランドのクライアントの製品の保護と取り扱いだけでなく、日々それらに責任を負う人々に対する不安が高まる可能性がある。社内チーム、および、サードパーティ・プロバイダーとそのチームが、すべての施設で安全で衛生的な環境を維持するために真摯に取り組んでいること知らせることは、大きな効果があるだろう。
以下では、従業員を保護し、サポートするために行うべきことをいくつか紹介する。
- 外部会社に委託して、施設を徹底的に消毒する
- 清掃スケジュールの頻度を上げる
- PPE(マスク、手袋などの個人防護具)の提供
- 6フィートの距離ルールを実行
- 倉庫スタッフへ無料で食事を提供
- フレキシブルな勤務時間を許可する
- 有給休暇の付与
- 現状の困難な時期に勤務する現場チームの賃金を上げる
- 不必要な出張を制限する
個人衛生とPPE(個人防護具)
手指消毒剤、マスク、手袋、消毒剤などの個人用保護具を、全従業員に提供・配布し、新型コロナウイルス感染を防ぐためのベストプラクティスを共有することが重要である。チームメンバーには、定期的に手を洗い、口、目、鼻に触れないようにすることを徹底させる。手洗いが確実に実行されるように、手洗い場や調理場など、建物内のすべての公共スペースにおいて目立つように看板を設置する。
清掃の強化
ワークステーションやカウンタートップ、ドアノブ、トイレなど、職場で頻繁に人が触れるすべての場所の定期的な清掃と消毒の頻度を上げる。従業員に使い捨てウェットティッシュと手袋を提供し、手に触れる頻度の高い表面を、毎回使用する前に拭き取ることができるようにする。清掃業務をサポートするために、清掃シフトを追加し、清掃記録をつけ始めることも可能である。
報酬アップとチームとのオープンな対話
多くのチームメンバーは、学校が休校中のため自宅に子どもがいて、公共交通機関以外の選択肢を探している。このような新しいライフスタイルの変化への対応の手助けとなり、チームメンバーの継続的な努力に感謝すべく、多くの企業がこの世界的パンデミックにおいて、現場スタッフの報酬を10%アップさせている。
また、スタッフと継続的にオペレーション状況についてコミュニケーションをとり、衛生管理、従業員の健康状態、業務オペレーションにおける変更などについて最新の状況を把握しておくことも重要である。
自宅待機措置
急性呼吸器疾患の症状がある場合は、解熱剤や症状を改善する薬を使用せずに、症状が治まってから48時間以上経過するまで自宅待機しなければならないことを、全従業員に徹底する。
出張の制限
全従業員のビジネス拠点間の移動を制限し、危機期間中の顧客訪問を禁止する。倉庫および拠点へのアクセスは、物理的な作業を行う必要のある従業員に限定する。絶対的な必要性がある場合を除き、カスタマーサポート、IT(必要な場合を除く)、管理サポート、または必要のない従業員は現場で勤務させるべきではない。
2. サードパーティ・フルフィルメントへの移行の検討
自社フルフィルメントは、常に課題が多い。フルフィルメントはコアな専門分野ではないにも拘わらず、高コストで、不動産や人員といったかたちの固定費がかかり、本業にとって、多大な雑音となることも。サードパーティのフルフィルメント会社を利用すれば、大きな負担を軽減することが可能になる。そして、COVID-19時代の今、サードパーティにシフトする理由はさらに増えている。
- 需要の変化はさらに激しくなるだろう。3PLを利用することにより、固定費を増加させることなく、物理的フットプリントに柔軟性を持たせることができる。
- 様々な地域の状況は、時々刻々と変化する。
- 大手3PLと協業することで、複数の地点に在庫を置く機会を得ることができ、リスクを分散し軽減することができる。
- フルフィルメント会社は、それ自体が必要不可欠なサービスとして明確に政府によって指定されており、今後もそうであり続けるだろう。自社施設が、全体としてどのように指定されるのか不安がある場合は、3PLで在庫を持つことで大きな安心感を得られる。
- フルフィルメント・ビジネスに特化している企業は、長期にわたり継続し変化する規制やガイドラインに対応できる集中力と、専門的なリソースを有している。
では、サードパーティ・フルフィルメント会社に、何を求めるべきだろうか?以下の点を、確認すべきである。
- 全国に展開していること — 可能な限りベストな輸送価格設定と輸送時間を実現しつつ、リスクを軽減し、在庫を多様化できること。
- 充実したインテグレーションリスト — 3PLが、今日必要とするすべての事項だけでなく、自社ビジネスが進化するにつれて必要となる事項にも対応できることを確認すべきである。また、すべての主要なeコマースプラットフォーム、EDIシステム、返品ソフトウェア、注文管理システムやERPと統合されていることを確認しなければならない。
- 低価格の配送料が望ましいが、最も低価格のフルフィルメントサービスを採用すべきではない。あまりにも低い価格設定には注意すべきである。
3. 迅速な規模拡大への準備
今後数年間のeコマースで生じると予測されていた成長が加速し、この数ヶ月間に圧縮されたこと、そして、ポストCOVIDの世界でも、このシフトが持続し、成長し続けることは、全ての指標によって示されている。
フルフィルメント分野の人間は、今は “毎日がサイバーマンデー “だと認識しているだろう。現在世界中の人々が自宅でオンラインショッピングをしているからだ。
急激な成長を遂げるフルフィルメントプロバイダー見つける必要がある。
平時でも、ダイレクト・ツー・コンシューマー・ブランドのようなデジタル駆動型の企業は、直線的成長を遂げるのではなく、(急激な成長を比喩する)“ホッケー・スティック”のような曲線パターンで成長する。フルフィルメントの観点からは、これは、常に困難な問題である。
自社でフルフィルメントを完結するブランドにとって、スケーリングが難しい理由は明らかである。結局のところ、資本の問題である。こうしたブランドは、スタートさせること自体が難しいうえ、急激に拡大していくためにはコストがかかり、困難である。同様に問題となるのは、多くのフルフィルメント会社が、顧客の規模が突然拡大したときに、対応できないということだ。
スケーリングは、フルフィルメント会社にとっても、極めて難しい問題である。顧客と協業するスケーリングに特化した3PLを探すべきである。そのためには、そのフルフィルメント会社が急激な成長に対しどのように対応するのかの具体的な事例を確認すること、そして、急激な成長を遂げる予定であることを明確に伝えておくことが重要だ。その会社が、スケーリングに対して月並みである場合は、他を探し続けたほうがいいだろう。起こる可能性のある最悪の事態の一つは、自社が突如大きな成功を手にした時に、フルフィルメントシステムによって失敗することである。
4. フルフィルメントプロバイダーと真のパートナーになる
eコマース会社とフルフィルメント会社の関係は、その関係の両サイド間のインテグレーションとコラボレーションが、より大きな成功へ直接的に結びつくという点で、ほとんどのクライアントとプロバイダーとの関係とは異なる。
より多くの情報、データ、および予測を提供することで、3PLパートナーは、規模拡大において卓越したサービスを提供してくれる。eコマースは複雑なエコシステムであり、製品自体の開発と生産を除くと、フルフィルメントはブランドが”現実世界”に示す最も重要なものとなる。こうした(役目を担う)3PLとは、真のパートナーシップを築きたいものである。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の5/18公開の記事を翻訳・補足したものです。