限界を迎えた日本の物流システムが行うべき変革 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」
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物流・決済・業務
2017/10/06

限界を迎えた日本の物流システムが行うべき変革

限界を迎えた日本の物流システムが行うべき変革

 

EC業界全体に激震が走ったのは今年の3月7日だった。ヤマトの全面値上げとAmazonからの撤退も辞さないとの日経の報道は、価格競争、サービスレベル向上のための競争に入ってきていると思われた国内のEC物流システムの根底を大きく揺るがした。それから半年以上が経過し、ヤマトを含む各宅配事業者は値上げや、場合によっては取引停止を行うなど、EC事業者にとって大きな影響を及ぼしてきている。今回はこのような次の時代に突入したといっても過言ではない“物流新時代”において、EC事業者、そして物流システム全体として何を行なっていくべきか考えていきたい。

 

<参考>

疲弊した世界に誇る繊細かつ高度な物流・宅配システムを救え - 今、EC業界としてやるべきこと

 

※当記事は発送代行サービス「リピロジ」を提供するスタークス社から情報提供を受け、今のEC業界において、物流システム全体として何を行っていくべきかを考えた一例を解説した記事である。

 

 

ヤマト問題以降、EC事業者が直面している問題

 

ヤマトが決断した全面値上げ。今まで過剰なサービスで宅配の現場が疲弊して料金とサービスが釣り合わなかったことは事実として理解できる。そのためこれは宅配事業者が悪いということではない、むしろ今まで過酷な条件をよく受け入れてくれてEC業界を支えてきてくれていた、という感謝の気持ちすら持っているということを前置きしておきたい。

ただ、この突然の値上げの影響でEC事業者と宅配事業者のパワーバランスは完全に崩壊し、多くのEC事業者が、宅配事業者からの一方的な値上げ要望や突然の契約解除などにさらされているという状況に陥っているようだ。実際にどのような事象がEC物流の現場で今起こっているのだろうか。

 

一方的な大幅値上げ要求

パワーバランスが崩れたことにより、当初より交渉力が弱かった中小のEC事業者は、一方的な値上げ要求にさらされている。宅配事業者から、EC事業者の物流倉庫に値上げの打診があった。提示された金額は、1個当たり数百円以上という、数円単位での切り詰めを行っているEC物流の現場からしたら大幅な値上げということになる。その値上げにより、EC事業者側の利益は年間で試算すると数千万円単位で減じることとなり、そもそも薄利での事業構成だったこともあり、EC事業部自体のの存続が危ぶまれるまでになったというケースがある。

 

荷受け拒否

宅配事業者から、荷受け拒否されるという事態も発生している。ある宅配事業者の取扱荷物量トップ100にランクインしていたあるEC事業者は、その宅配事業者より荷受け拒否の連絡を受けた。宅配事業者からすると、取り扱い総量を減らしたい意向があるため、荷物量が多い事業者にも容赦なく打ち切りの連絡を行っているようだ。そのEC事業者は、他の宅配事業者と交渉し、無事に契約まで漕ぎ着けた。しかし、以前のような配送費で送ることができないだけでなく、またいつか荷受け拒否の連絡が来るのではないかと不安な毎日を過ごしている。

 

 

今の日本の物流システムの限界と来るべき最悪の未来

 

そんな中、将来的には、荷物を送る総量と、宅配可能な総量の需給ギャップがますます拡大し、EC事業者は商品を発送することが出来なくなる時代がやってくる可能性があるというのだ。

宅配サービスが生まれた頃、まだ「ネット通販」という概念はなかった。そのため宅配サービスはCtoCへの配送が基本となっていた。例えば、故郷から遠く離れた大学に進学した息子のために畑でとれた野菜を母親が送る、などのニーズである。しかし、1990年以降、インターネット通販の台頭によってCtoCに加え、BtoCの宅配ビジネスが勃興。さらなるECの流通総額の増加に伴い、今も宅配便の荷物量は年々増加している状況だ。また日本人のライフスタイルも変化していることも、宅配の現場への負荷を増やしている。専業主婦が多くいた頃に比べ、今の日本は共働きや一人暮らしが多くなったため世帯数が増加し、在宅時間も減少した。世帯数が増えればその分の注文数も増え、在宅時間が減少すればその分の再配達が増加する、という状況が発生しているのだ。これに加えて配達の時間指定サービスも、宅配の現場への皺寄せを増やしている。これによって、宅配ドライバーの労働時間は増加し、「過酷な労働環境」と呼ばれるようになった。こういった背景からドライバー数は年々減少している。

このような背景の中、宅配業界では年々宅配便取扱数が増えているにもかかわらず、モノを運ぶドライバーが減少するという「需給のギャップ」が生じ、広がっている。その結果、今の状況を打破できなければ、いずれ「モノが運べない時代」がやってくることが予測されている。

 

 

最悪の未来を変えるには物流の「構造改革」が必須

 

このような予測される最悪な未来を手をこまねいて待っているわけではない。EC業界を支えるEC物流をより効率的にし、需給バランスを維持するための取り組みが各方面で進んでいる。前回の記事では、ドローンの活用、宅配ロッカーやコンビニ受け取り、再配達を減らす取り組み、さらには配達状況確認アプリなどを紹介したが、ここではよりドラスティックに物流の構造改革を行おうとしているサービスを紹介していく。

 

AIによる自動配送

宅配ドライバー不足を人工知能(AI)を利用して解消する動きが出てきている。株式会社DeNAヤマト運輸株式会社が4月17日から地域・期間限定ではあるが、「ロボネコヤマト」というAIを利用した配送サービスの実用実験を開始している。

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ロボネコヤマトは、AIによる自動運転機能を利用しており、宅配便を欲しい場所に欲しい時に配達してくれる、「ロボネコデリバリー」と、地域商店の商品を欲しい場所で欲しい時に配達してくれる、「ロボネコストア」の2つのサービスを提供。湘南地区からスタートし、実用箇所を着々と増やしていく予定としている。今後のサービス提供に期待が高まっている。

 

<参考>

ヤマトとDeNA、自動運転による物流サービスを見据えた実用実験「ロボネコヤマト」を始動

 

 

シェアリングエコノミー活用

宅配ドライバーやトラックの不足を、ここ最近注目を浴びているシェアリングエコノミーを活用することで埋めていこうというサービスもある。ラクスル株式会社ヤマトホールディングスが資本提携を行い開始した、シェアリングエコノミー型の運送マッチングサービス「ハコベル」だ。

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ドライバー不足や、車両が不足している現状において、荷主と運送会社を仲介することで、より効率的な配送を行えるようにマッチングするこのサービスは、無駄な時間や費用が軽減され、配送会社やドライバーの枠を超えた効率化の可能性が見込まれている。

 

<参考>

ラクスル、シェアリングエコノミー型ネット運送・配送サービスを関西エリアで開始

ハコベル、経済的に最適ルートを算出するコンサルティングサービスサービス開始

 

 

CBcloud株式会社が提供する荷主とドライバーをマッチングするクラウドソーシング・プラットフォーム「PickGo」は宅配ドライバーのシェアリングサービスだ。

サービスには2種類あり、for Businessは事業者とプロの配送ドライバーを直接つなぐプラットフォーム。for personalは一般の個人がプロの配送ドライバーを見つけるためのプラットフォームだ。中間マージンを排した直接マッチングのため、スピード、コスト共に格段に改善することが期待されている。

 

 

在庫分散による荷物移動総距離の低減という考え方

宅配ドライバー不足を解消するのではなく、荷物を運ぶ総距離を減らすことで、物流の負荷を減らしていこうとするサービスもある。スタークス株式会社が提供する発送代行サービス「リピロジ」だ。

従来の物流業界では、荷物を1つの発送拠点から全国に配送しているのが一般的だ。なぜならば、複数拠点を持つと在庫管理などの業務負担が増えることが懸念されてきたからである。しかし、全国のあらゆるところで製造された商品を1拠点に集め、それをまた全国に発送するという荷物の動きを考えた場合に、非常に無駄な配送が行われていることは想像に難くない。

そこでリピロジではEC事業者と倉庫の両者に向けられて自社開発したWMS(倉庫管理システム)を駆使し、複数拠点からの配送を実現した。これによって、EC事業者・倉庫会社の業務負担を減らすことが出来、複数拠点倉庫の品質を透明化することにもつながった。この比較によって、誤出荷率などの品質面でも大幅な改善が見込まれたという。さらに倉庫業務にも自社開発のWMSを導入したことで、複数拠点であっても在庫管理は一元化することが可能になった。

そして、複数拠点化は最適ルートでの配送に繋がるため、配送コストの削減・業務効率アップだけでなく、物流業界全体の課題解決にも一役買っているといえよう。

 

 

EC物流高負荷時代にEC業界全体でできること

 

今や、これまでにないくらい物流への注目は高い。再配達をしてくれた宅配ドライバーに労いの言葉をかけるようになった、という人も多くなってきているなど、消費者の意識も変わりつつある。また、ファッション通販サイトロコンドが「急ぎません。便」を導入したところ、初日購入者の20%が「急ぎません。便」を選択した、というニュースもそのような消費者の意識の変化を表しているといってもいいだろう。さらに数日前にはZOZOTOWNが送料を消費者が自由に決める「送料自由」を導入するなど、送料というものに対する考え方が変わりつつあるのは間違いない。日本国民がそれだけ物流システムの改善に興味を持つということはとても良い傾向だ。しかし、宅配を毎日のように利用し、再配達してもらうという便利な現状に甘んじていることは確かである。実際に何か行動に移すという人はまだまだ少なく、さらなる改善が必要だろう。

そんな中、EC事業者はどのようなことができるのだろうか。市場にはここで紹介したような物流の構造改革を行うような様々なサービスが登場してきている。各EC事業者が物流システムに頼りすぎることなく、可能な限りの無駄を排除して物流高負荷時代を救っていく必要がありそうだ。予測されている最悪な未来が杞憂に終わるような展開を期待したい。