メールは、ビジネスの宣伝にとっての最先端の方法ではないかもしれないが、時間と労力をかければ、成長に結びつく最も有益な方法の一つとなりうる。
メールマーケティングは、最初で最古のオンラインマーケティング戦略だ。Mark Zuckerberg氏(Facebookの共同創業者兼会長兼CEO)の両親が彼を授かるずっと前から、企業は、メールが顧客に接触するための素晴らしい方法であることに気づいていた。
そして、最初にメールマーケティングキャンペーンが実行されてから40年以上の間に、マーケティングの世界で多くのことが変わった。
従来型マーケティングでの主力であった広告看板、ラジオのスポット広告やダイレクトメールなどは、時代遅れになっているようだ。少なくとも、多くの新しい企業は、そう信じている。「得るは捨つるにあり」で、デジタルマーケティングの世界では、常に新しい試みが生まれているのである。
このような状況において、メールマーケティングは、どうなるだろうか? 50%未満の企業しかメールの自動化に投資していないことから、ほとんどの企業は、メールマーケティングをビジネスのマーケティングの有意義な方法とは見なしていないようである。
しかし、それらの企業は正しいのだろうか?メールマーケティングの役目は本当に終わったのだろうか?
メールマーケティングが、その魅力の多くを失った理由は多々ある。しかし、この実行可能性を見極めるべく、データの内容を見ていこう。
メールマーケティングに賛成する主張
ほとんどのメールマーケターは、40年以上の研究とデータで得られた経験から、メールがビジネスをオンラインでマーケティングするための「最良で最も有益な方法である」と、すぐに言う。
それに、彼らはそのことを裏付けるためのかなり優れた統計を有している。
Facebookの1日あたりのユーザー数は15億人を超えているかもしれないが、メールの1日あたりの実際のユーザー数は38億人を超えているのだ。それについて、少し考えてみてほしい。ほとんどのメールユーザーは、おそらく15歳から64歳の間の年齢であり、その年齢層は地球上に約50億人しかいないことから、メールの市場浸透率は75%を超えているということになる。
もちろん、オーディエンスはFacebookにいるかもしれない。彼らは、Googleを使っているかもしれない。もしかしたら、彼らは百度(バイドゥ / 中国最大の検索エンジン企業)にいるかもしれない。さもなければ、Instagram、SnapChat、WhatsApp、PinterestやTikTok(ショートムービープラットフォーム)で彼らにコンタクトが取れるかもしれない。しかし、必ずオーディエンスがいると保証できるのはどこだろう? それは、受信トレイだ。
一日も欠かすことなくだ。
さらによいことには、人は一日に一度だけメールをチェックするわけではないということである。おそらく、一日に12回以上、それも奇妙なあらゆる場所でメールをチェックすることだろう。
・54%が就寝中にメールチェック
・69%がテレビを見ながらメールチェック
・32%が夕食を食べながらメールチェック
・14%が運転中にメールチェック
・6%が卒業式や結婚式などのフォーマルなイベントでメールチェック
・18%が会話の途中でメールチェック
・43%がトイレでメールチェック
・34%が歩きながらメールチェック
・32%が通勤時にメールチェック
一番よいことは、我々はどこでもメールをチェックするということだけでなく、マーケティングメールを受け取ることも望んでいるということなのだ。
信じられないだろうか?ほぼ4分の3の人は、企業からメールで連絡が来ることを好んでいるのだ。
それゆえ、ほとんどのオンラインマーケティングチャネルとは違って、消費者は、実際のところ、メールマーケティングの対象となりたいと思っている。だが、もしそうであるなら、ほとんどのマーケターが、メールマーケティングは廃れたと思っているようであるのはどうしてだろうか?
メールマーケティングに反対する主張
メールマーケティングが好まれているようであるという事実とその比類なき市場浸透度から考えると、メールマーケティングは、ほとんどの企業にとって大成功を収めていると思われることだろう。だが、前述のように、大半の企業はメールマーケティングを重要視していない。
これらの企業は、間違っているのだろうか?
確かにメールは驚くべきマーケティングチャネルのように思えるが、いくつかの課題がある。メールマーケティングの最大の問題とは、過度の飽和状態であることだろう。
あるマーケティングチャネルに、メールマーケティングと同程度の効果が期待できるとすると、マーケターは即座に、そのチャネルからできる限りの成果を引き出そうとする。そして、そのマーケティングチャネルが長く継続するほど、より多くのマーケターがそこに乗っかり、チャネルはさらに飽和状態になる。
もし、企業が、メールと同じように有力なマーケティングチャネルを40年以上活用すれば、そのチャネルにおけるユーザーの注目を得るための競争は圧倒的に激しくなっているはずである。
たとえば、米国の市場調査会社Radicatiは、メールの負担に関する調査を実施し、会社員が一日に平均126通のメールを受信していることが明らかになった。スパムブロック機能のおかげで、これらメールのうち30通は受信トレイに届かなかったが、それでも調査参加者にはなんと96通のメールが残された。
ダイレクトメールについて言いたいことは何とでも言えるだろうが、直近に、96通のメールを整理しなければならなかった時はいつだっただろうか?毎日ではないだろうか?その量は、実に膨大だ。
我々は、友人、家族、同僚、上司や困窮するナイジェリア王子を名乗る詐欺集団からメールを受信する。しかし、我々が主に受け取っているのは何だろうか?メールマーケティングだ。実にたくさんのメールマーケティングが送られてくるが、残念ながらそのほとんどは役に立たず、興味が持てず、ほしいと思わないものだ。
その結果、我々の多くは、メールマーケティングは迷惑だと思ってしまう。しかし、我々がみな、時折、マーケティングメールの購読に意図的にサインアップしていることを考えるとこれは皮肉なことである。
一体どうしたものだろうか?人は「メールマーケティングを望んでいる」と言うが、マーケティングのメールを受け取るのは嫌いということだろうか?多くのマーケターやビジネスオーナーが、メールマーケティングは機能しないと考えるのも不思議ではない。
何が起きているか?
メールマーケティングは、理論上では、効果的なはずだ。ただ、実際にはビジネスが必要としている結果が得られるわけではなく、そのために多くの企業がそれに投資しないことを選択しているのであろう。
しかし、それはチャネル自体の問題だろうか? それとも実行面の問題だろうか?
突き詰めれば、人々は一般的にマーケティングが好きではないということだ。Facebookの大ファンかもしれないが、正直にいえば、Facebook広告の平均CTR(広告のクリック率 / Click Through Rate)はそれほどよくない。有料検索のクリック率の方がFacebookより高いかもしれないが、それは主に、ほとんどの人がテキスト広告を広告として認識していないことが理由である。テキスト広告が何たるかを知っている42.5%のうち、41%はそれらをクリックすることを拒んでいる。
チャネルに関係なく、ほとんどの人は、癪に障る、無関係なマーケティングコンテンツにうんざりしている。彼らは、どのコンテンツ入手するか、どこで入手するか、いつ対応しなければならないかを自身でコントロールしたいと考えており、これがおそらく、ほとんどの人が「メールマーケティングコンテンツの方を好む」と話す理由だろう。
そうすると、ほとんどの企業でメールマーケティングが役に立たない理由は、チャネル自体の問題ではないということだ。企業がチャネルを効果的に使う方法を知らないということなのだ。
企業がいざ、効果的なメールマーケティング戦略の理解に時間をかけると、驚くべき結果が得られる。たとえば、筆者の経験では、メールマーケティングキャンペーンの平均ROI(投資対効果 / Return on Investment)は約40倍となる傾向がある。1ドルの投資につき40ドルの収益だ。良質なメールは、ツイートよりもクリックをもたらす可能性がはるかに高くなる。スマートなメールマーケティングは、Facebook広告よりもずっと効率的なのだ。
メールマーケティングは、正しく行えば、確実に成功するマーケティングチャネルになりうる。唯一の問題は、ほとんどの企業がメールマーケティングの効果的な使用方法を知らないということだ。
あなたの会社でメールマーケティングは機能するか?
では、誰を信じるべきだろうか?胸をドンと叩いて、「メールマーケティングは、最良で最も有益なオンラインマーケティングチャネルだ」と言うメールマーケターだろうか?それとも、「メールマーケティングは廃れた」と考えている、数えきれないほどの事業主やマーケターだろうか?
あなたの会社は、果たしてメールマーケティングに投資すべきだろうか?
データに基づくと、メールマーケティングに関する議論の賛否双方の立場はいずれも正しく、そしてどちらも間違っている。そう、メールマーケティングから素晴らしい結果を得ることはできるが、それは適切な戦略を有し、必要な時間、労力と費用を投入する心構えがある場合だけである。
その点において、メールマーケティングは、他のマーケティングチャネルとそれほど違いはない。
よって、メールマーケティングに関しては、「メールマーケティングは効果的か?」という質問ではなく、自分に問うべき質問は、「メールマーケティングに力を注ぐつもりはあるか?」である。
その答えが「いいえ」であるなら、メールマーケティングは、おそらくあなたの会社の役に立たないだろう。その答えが「はい」であるなら、メールマーケティングはおそらくあなたのビジネスにとって素晴らしいマーケティングチャネルになるだろう。おそらくそれは、時間を要することであり、ほぼ確実に学習曲線(経験の累積と労働生産性の関係を示す曲線)のように成果が上がるまで停滞期があるだろうが、可能性はある。あなたにやる気がありさえすれば。
結論
マーケターとして我々はみな「楽勝」を求めているため、絶えず登場してくる輝かしく新しいオンラインマーケティングチャネルに注目しがちである。しかし、より従来型の、より確立されたチャネルには利点があるのだ。
メールマーケティングは、ビジネスを促進する最先端の方法ではないかもしれないが、時間と労力をかける意思があるならば、成長をもたらすための最も安定した、最も有効な方法の一つとなりうる。
メールマーケティングに関するデータは、そこにある。一つ確かなことがあるとすれば、メールマーケティングに真に投資している企業は、素晴らしい結果を得ることができるということだ。投資を行わない、またはうわべの努力だけを行っている企業は、顧客をいらいらさせ、遠ざけることになるだろう。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の1/23公開の記事を翻訳・補足したものです。