顧客一人一人の嗜好や特性、行動履歴に合わせて個別にマーケティングを行う「One-to-on e Marketing」は、2019年も引き続きもっとも注目すべきバズワードの一つといえる。4月に米国で開催されたマーケティング・テクノロジー・ツールのカンファレンス「MarTech West」では、アプリケーションとやり取りに必要なプログラミング言語やフレームワーク、およびツールの概要がまとめられた「テクノロジスタック」を通じて、顧客それぞれとのパーソナライズされたつながりを構築するためにどのような取り組みをしているのかについて、語られていた。しかし、真にone-to-oneのマーケティングを実現したマーケターは少なくとも今の時点では誰もいないと言えるだろう。

ここでは、顧客志向のブランドは、より効果的に顧客のニーズに応えるために自社プロセスを常に適応させ、改善を行っている。このようなブランドが、one-to-oneパーソナライゼーションに近づくためにメールマーケティングで取り組むべき5つのステップを紹介しよう。

 

1.整頓されたデータ

コンテンツがどれほど魅力的であったとしても、購読者の受信トレイに届かなければ意味がない。全てのEメールキャンペーンのポテンシャルを最大限に引き出すために、健全なデータ運用を実践してほしいということだ。これには、アクティブではない購読者、偽アカウント、そして重複するEメールアドレスを定期的に削除することを含む。経験上、これらの作業を実行することにより、小売業者にとってより多くのコンバージョンを見込める繁忙期である休暇シーズン中に、平均直帰率(サイト内で1ページしか閲覧せずにサイトから出た確率)を60%低下させる可能性があるとみている。

 

2.ISPによるメール到達率評価

GmailやYahooなどのインターネットサービスプロバイダ(ISP)との良好な関係を確立し維持するために、ブランドは、Eメールのベストプラクティスに従うことが必要不可欠だ。主要ISPによる悪評価によっては、ブランドからのEメールを購読者が目にする機会が減少し、結果的にコンバージョンと収益の低下を招くことになる。

だからこそ、ISPによる評価を監視する必要があるのだ。我々はISPと良好な関係を継続するために、ターゲティング、配信頻度、展開戦略を定期的に見直し調整している。私が話をした小売事業者は、これらを調整したことにより、昨年だけでGmailの受信トレイへの到達率100%を達成し、平均開封率が18%増加、平均直帰率が48%減少したという。Gmailが購読者の市場シェアを伸ばし続けていることを考慮すると、それらの改善は非常に大きな影響を与えたといえる。こういった調整を行うことにより、ブランドにあまり興味のないオーディエンスを特定するだけでなく、同セグメント(購買行動の似通った顧客層集団)のエンゲージメント指標も減少させた。

 

3.使いやすいEメールテンプレート

我々マーケティング担当者は、効果的なEメールがレシポンシブデザインを使用し、ダイナミックなコンテンツを提供していることを認識している。しかし、すべてのEメールがこれらの機能を利用しているわけではない最大の理由は、作成に必要な膨大なリソース量にある。マーケティング担当者が合理化されたプロセスと適切なツールを使用していない場合、アイデアの創造から実際に新たなEメールキャンペーンを作成し展開するまでに、2週間以上かかることがある。そのため、開発者がコーディングをサポートしなくても簡単にコンテンツをカスタマイズできるツールを使用すると、よりインパクトのある電子メールを作成することが可能となるのだ。

マーケティングチームはこういったドラッグアンドドロップ機能によって、コーディングを必要とせずにダイナミックなキャンペーン構築が可能となる。実際コンテンツ制作期間が大幅に短縮されるため、チームはより多くのオーディエンスに向けて関連性の高いコンテンツを作成できるだろう。

 

4.ダイナミックコンテンツ

ダイナミックコンテンツは、各メール購読者セグメントに対応しているため、オファーやプリヘッダー(件名の次に表示される内容補足テキスト)のような小さいアイテムに対してこれらの機能をより有効に活用すると、効率が大幅に向上する。小売業の場合、多くの商品が在庫から割引オファーに移行するが、それらは瞬時に変更される可能性もある。(これに対応するため)テンプレート内に自動化されたコンテンツを構築することにより、クリエイティブチームの作業を必要とせず、直前の変更が確実に実行されるだろう。これにより、制作作業が大幅に削減され、クリエイティブチームは本当の意味でのデザイン業務に集中することができる。

 

5.”Eメールトリガー”がもたらすメリット

頑強なトリガープログラムは、Eメールプログラムのパーソナライゼーションを実現するための最も簡単な方法といえる。最終的な目標は、関連するコンテンツをタイムリーに配信することであり、販売促進メッセージの平均的な開封率を大幅に上回ることだ。それは100%を越えることが望ましい。自社プログラムを後押しするための独自な方法を見つけ出すため、購読者の行動や購入履歴、ブラウザ上の行動傾向、好みのデータ、または興味についての情報に注目してほしい。これらのトリガーを活用することにより、コンテンツ制作過程のメンテナンス業務を大幅に減らしつつ、収益の飛躍的な向上が実現するだろう。そして、独創的なアイデアを試すためのテストラボとしてのメリットをもたらす。

顧客とのコミュニケーションや認識の向上、そして最終的には収益の増加を図るための最良の方法は、顧客それぞれに個別のコンテンツを提供することであるとマーケティング担当者は認識している。我々は、顧客へ適切なコンテンツを適切なタイミングで送信する必要がある。これは、少数の贔屓客しかいない小規模企業では可能なことだが、そのレベルの個別化されたコミュニケーションをより多くのユーザー、または顧客ベースに拡大することは、現時点では不可能だ。しかし、そういったコミュニケーションの実現には日々近づいており、ここで説明してきた手順に従うことにより、マーケティング担当者は私たちが思っているよりも早くone-to-oneパーソナライゼーションの実現を達成できるかもしれない。

 

※当記事は英国メディア「Marketing Land」の5/10公開の記事を翻訳・補足したものです。