より競争力のあるeメールマーケティングプログラムを展開するためには、「ロケーション情報」と「顧客行動情報」を適切なタイミングで活用し、顧客に関連性の高いeメールを送信することが重要だ。

多くのブランドは、メール受信者のファーストネームを使用するといった基本的なパーソナライズ戦略から抜け出せずにいる。実際、マーケティング分析会社Yes Marketingが最近実施した調査(閲覧には登録が必要)によると、「適切にパーソナライズされたマーケティングeメールを受け取っている」と感じている消費者は、37%に過ぎないという。

 

さらに、消費者が日々受け取るメール件数は増加し続けている。2017年には毎日約2,690億のeメールが送受信されており、専門家によると、2021年までに1日あたりの送受信数は約3億件に達すると予測されている。

こうした調査結果の数値だけでは説得力に欠けたとしても、消費者の受信ボックスに届く膨大な量eメールを見れば、パーソナライゼーション戦略をステップアップさせる動機となるはずだ。競合他社はすでに高度なパーソナライゼーション戦略を実行している。今こそ、パーソナライゼーション戦略の高度化を先延ばしするのはやめよう。そして、生き残りをかけて必死になっているブランドがひしめく中で、顧客に自社のeメールを読みたいと思わせる、さらには届くのを楽しみにさせ続ける方法を見つけ出す必要があるのだ。

 

すぐにでも試すべき5つのパーソナライゼーション戦略

競争力のあるeメールマーケティングプログラムを実現するため、パーソナライズ戦略を説明する以前に、これから述べる戦略がなぜ非常に効果的であるのかという点について触れておきたい。とてもシンプルに聞こえるだろうが、全てのパーソナライズ戦略は「関連性を高めること」に重点を置いている。自社が収集した「消費者のタイミング」、「ロケーション」、および「行動に関する情報」を適切に活用すれば、顧客とのコネクションを常に強化することができるのだ。以下のアイデアのいずれかを実行すると、eメールプログラムのROI(投資収益率)が改善することが理解できるだろう。

 

 

1.リアルタイムデータをeメールのトリガーとして利用する

このタイプのeメールは、場所、天気、またはその他のイベントなどのリアルタイムデータに基づいてパーソナライズされている。リアルタイムeメールは、最も関連性が高いタイミングに、特定のeメールコンテンツによって、特定の購読者のセグメントをターゲットするものだ。

 

マーケティング担当者はこうしたリアルタイムのデータをクリエイティブに活用し、顧客との関連性を高めることが可能なのである。スポーツや地域活動、天候(雪や雨)などの主要イベントによってeメールの質を向上させ、エンゲージメントを高めることができる。つまり、リアルタイムデータを使用することにより、マーケティング担当者は購読者それぞれの今の状況と、そこから推測される気分に関連性が高いeメールを、最も効果的な瞬間に送信することができるのだ。

 

シカゴに本拠地を置くフードデリバリー会社GrubHubは、eメールを送信する際に、気象データに基づいたリアルタイムデータをうまく活用している。彼らは雨や雪が降っているとき、または異常に寒いときに、フードデリバリーサービスの需要が増えるということを知っている。そしてそのような天候になった瞬間にeメールを送信しているのだ。

Dunkin Donutsは、スポーツイベントに関連して同様のアプローチを行なっている。メール購読者のホームチームの勝利について件名で言及しつつ、地域限定のオファーの提示し、購読者の生活のポジティブな瞬間を上手く利用しているのだ。

 

2.購読者のeメールアクティビティ情報を取り込む

それぞれの企業のESP(eメールサービスプロバイダ)内には、購読者のeメールアクティビティに関するデータが蓄積されているはずだ。いつ最初に購読したか、連続して何件のeメールを開封しているか、または、どの程度アクティブな購読者であるかの情報を把握しているはずだ。これらのデータを、独自の方法で活用し、購読者のエンゲージメントを維持すべきである。

 

例えばブランドは、顧客との関係(例えば、顧客が最初に購読した記念日)における重要なマイルストーンを祝福するために、または、一定期間以上エンゲージしていない場合に再度エンゲージメントを促進するために、パーソナライズされたeメールを送信することができる。

 

日刊ニュースレターを送信するTheSkimmは、購読者のアクティビティに基づいて、記念日を祝福する非常に効果的なeメールを送信している。同社のeメールは、最初に購読した日付や、購読に費やした時間などの個人的な履歴を知らせ、購読者をより楽しませている。

 

3.サイコグラフィックスに基づいてパーソナライズする

マーケティング担当者は、消費者の関心、ライフスタイル、信念、考え方などのサイコグラフィック情報を使用して、eメールのパーソナライズを行うことも可能である。サイコグラフィック情報を利用することにより、自社オーディエンスのセグメントにより関連性の高い画像やコンテンツを特定することができるのだ。

 

ヨット販売会社であるWest Marineは、ヨット愛好家向けeメールを送信する際に、サイコグラフィックデータを利用して、おすすめ商品紹介や画像だけでなく、件名もパーソナライズし、効果をあげている。この会社のメール購読者は、各購読者の趣味に関連したヨット名を具体的に挙げた件名で、そのヨットの画像や商品紹介を掲載するeメールを受け取ることができる。

 

オプトインプロセスまたはウェルカムシリーズの段階で、すべてのマーケティング担当者はメールプレファレンスセンターを拡張し、購読者の特定の関心を明らかにし、同様のパーソナライゼーション戦略を実行するのに有益な質問をすべきである。

 

4.ファーストネームへの新しいアプローチをする

マーケティング担当者が、収集した購読者のファーストネームを使用し、件名とeメールコンテンツをパーソナライズするのは簡単である。しかし賢明なブランドは、より独創的な方法で購読者の名前を使用して、自社製品とのより深いコネクションを作り出している。

 

筆者自身が実際に受信した素晴らしい事例は、カジュアルファッション通販会社であるLands ‘Endからのeメールである。Lands ‘Endはホリデーシーズン向けeメールに掲載した商品画像に顧客のファーストネームを組み込むことにより、よりパーソナルで感情的なつながりを感じさせることに成功した。同社は、購読者それぞれのファーストネームの刺繍を施したデザインがどのように見えるかを示し、クリスマス飾り用の靴下を宣伝したのだ。

 

5.購入確認メールに新たな魅力を与える

ほとんどのマーケティング担当者は、eメールで「注文受領書」を送信する戦略を実行することができる。通常「購入確認メール」と言えば、受信者に購入した商品を確認させ、感謝の意を伝えるための標準的なメッセージである。ほとんどのマーケティング担当者は、購入確認メールを「送信設定さえすればいい」というタイプのeメールに分類してしまっている。しかし購入確認メールは、より個人的なレベルで顧客のエンゲージメントを向上させ、購読者をウェブサイトに誘導し、再購入させることができる大きなチャンスなのである。

 

米国薬局チェーンWalgreensは、特定の商品の収益の一部を、必要とする人々に寄付している。そして、その取り組みに関する情報を購買確認メールで伝えているのだ。Walgreensのeメールは、パーソナルな感謝の意を伝える手紙のようなものであり、どのように購読者の購入が人々を助けているかを知らせている。コミュニティにフォーカスした自社の取り組みを宣伝しながら、件名やヒーローイメージ、ダイナミックコンテンツブロックには、購読者の名前と購入物が記載されている。

 

アイウェアブランドであるWarby Parkerは、パーソナライズされた購入確認メールを送信し、購読者のエンゲージメント向上を図っている。同社は顧客が注文した商品を受け取った後に、購入確認メールを送信。そのメールには、顧客が購入したメガネの手入れ方法や調整方法についてなど、関連性の高い有益な情報を含んでいるものだ。眼鏡は頻繁に購入するアイテムではないため、このようなメールを送信することはとても効果的である。有益で鋭いアドバイスを含んだeメールを送信することにより、顧客は次回別の眼鏡を購入する時にもWarby Parkerを第一の選択として考えるだろう。

 

消費者の受信トレイが多数のメールで溢れる中、マーケティング担当者は、他社より際立たせ、また、エンゲージメント率低下リスクを回避するためにできることはすべて実行しなければならない。自社で持っているデータを活用して、前述のアイデアの1つを実行し、よりクリエイティブで関連性の高いeメールを購読者に送信してほしいと願う。

理解しているとは思うが、名前を入れるだけのパーソナライゼーションしか実行していない場合は、今こそ戦略を高度化しなければならない時なのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の11/8公開の記事を翻訳・補足したものです。