小手先の数字に惑わされず、本当の効果がわかる数字に注目しよう。


マーケター、特にB2Bマーケターは、「バニティメトリクス(虚栄の指標)」に重点を置きすぎていると批判されることが多い。「バニティメトリクス」とは、数値化しやすく、見た目の印象は良くとも、ビジネスの成果に直接結びつかず、実用的な洞察には至らない数値のことである。

ここでは、7つの代表的なバニティメトリクスの指標と、それらがなぜ指標として弱いとみなされるのか、そして何を代替手段にするべきかについて、詳しく見ていこう。

 

バニティメトリクスその1:Webサイトトラフィック(ページ閲覧数/訪問者数)

弱い理由

トラフィックが増えるのは良いことだが、訪問者が適切なターゲットなのか、エンゲージメントが高いのか、コンバージョンに向かっているのかは分からない。関連性のないトラフィックは、結局ビジネスの成果にはつながらない。


代替指標:Webサイトのコンバージョン率(トラフィックソース別、目標達成度別)

優れている理由

コンバージョン指標は、Webサイト訪問者の何パーセントが目的のアクション(フォームへの記入、資料のダウンロード、デモのリクエストなど)を完了したかを示す。オーガニック検索、有料広告、ソーシャルメディア、外部リンクからの流入など、トラフィックソース別にコンバージョンをセグメント化することで、どのチャネルが質の高いコンバージョンにつながる訪問者を呼び込んでいるかを特定できる。


データ入手場所

Google AnalyticsなどのWebサイト分析プラットフォーム。これらのプラットフォームの機能を使用して、目標やコンバージョンを設定する必要がある。

虚栄指標のかがり火(トム・ウルフの小説「虚栄のかがり火」をもじった表現)


バニティメトリクスその2:ソーシャルメディアのフォロワー数/「いいね」数

弱い理由

フォロワー数が多いからといって、ブランド支持やエンゲージメント、売上につながるとは限らない。フォロワーの中には休止状態のアカウント、ボット、ターゲットではないオーディエンスもいるからだ。「いいね」は手軽にできる反応であり、実際の関心や興味を示すものではない。


推奨する代替指標:ソーシャルメディアのリードおよびコンバージョン

優れている理由

この指標は、ソーシャルメディアの施策によって、どれだけのリード(見込み客)や実際の顧客を獲得できたかに注目する。B2Bの場合、SNS広告からのフォーム送信、デモ依頼につながるSNSからのWebサイト訪問、ソーシャルプラットフォームで共有された限定コンテンツのダウンロード数の追跡などが含まれることがある。


データ入手場所

LinkedIn AnalyticsX Analytics、Facebook Business Suite Meta Business Suite) などの各SNSが提供している分析プラットフォーム。SNSキャンペーンで、(Webサイトのアクセス元を特定するためURLに追加する識別情報である)UTMタグを適切に使用できるGoogle Analytics 。SNSリードフォーム(見込み客情報)を取り込めるCRM(顧客関係管理)システム 。

 

バニティメトリクスその3:メール開封率

弱い理由

メールの高開封率はプラスに思うかもしれないが、コンテンツやアクションへのエンゲージメントを保証するものではない。多くのメールサーバーやクライアントは、セキュリティ上の理由からメールを自動的に開封する設定にしており、ユーザーはメールを開封しても、読んだりクリックしたりせず、すぐに閉じてしまう可能性がある。


推奨する代替指標:メールのクリック率(CTR)およびコンバージョン率

優れている理由

CTR(広告のクリック数を広告の表示回数で割ったもの)は、受信者がメール内のリンクをクリックするくらいコンテンツが魅力的であったことを示す。これらのクリック、たとえば、リードマグネット(見込み客が個人情報を提供してでも欲しいと感じるコンテンツ)のダウンロード、ウェビナー登録、販売の問い合わせなどからのコンバージョン率を測定することで、メールでの取り組みをビジネスの成果に直接結びつけることができる。

データ入手場所

米国のクラウド型顧客関係管理プラットフォームを展開するHubSpotのHubSpot、 米国のビジネスソフトウェア開発企業IntuitMailchimp、米国のクラウド型のビジネスアプリケーションを提供するSalesforceSalesforce Marketing Cloudなどのeメールマーケティングプラットフォーム。

 

バニティメトリクスその4:コンテンツダウンロード数

弱い理由

ダウンロード数からは、コンテンツが読まれたか、ターゲットとなるオーディエンスの心に響いたか、リード育成や売上に貢献しているかどうかはわからない。「コンテンツがダウンロードされた」ということ、ただそれだけしかわからないのだ。


推奨する代替指標:コンテンツから創出されたMQL、もしくはSAL数

優れている理由

この指標は、コンテンツから得られた見込み客の質を重視する。「MQL(Marketing Qualified Lead)」は、マーケティングによってさらなる育成(ナーチャリング)を行うべきと判断された見込み客のことであり、「SAL(Sales Accepted Lead)」は営業チームが時間を割いて対応する価値がある、と認めたMQLのことである。これは、コンテンツが理想的な顧客プロファイルに合致し、純粋に興味を持つ見込み客を引きつけていることを示している。

データ入手場所

Salesforce、HubSpotなどのCRMシステム。Marketo米国のソフトウェア企業Adobeが提供)、 Pardot Marketing Cloud Account Engagement)などのマーケティング自動化プラットフォーム。これらのシステムでは、コンテンツのダウンロードや、その後にリードが有望かを判断するための行動も追跡することができる。

 

バニティメトリクスその5:獲得した不適格なリード数

弱い理由

適切な選別を行わずに大量のリードを獲得すると、営業チームは質の低い見込み客に押しつぶされ、時間とリソースを浪費する可能性がある。すべてのリードに同じ価値があるわけではない。


推奨する代替指標:リードから商談へのコンバージョン率 / 商談成立率

優れている理由

これらの指標は、リード獲得の取り組みが実際の営業機会を創出し、最終的に成約につながっているかどうかを測定するものである。リードから商談へのコンバージョン率は、獲得したリードのうち何件が販売機会に至ったかを示し、商談成立率は、それらの機会のうち何件が実際の顧客になったかを示す。


データ入手場所

営業パイプライン(見込み客を顧客へ転換する中で辿る段階的なプロセス)を通じてリードの進行状況を追跡するためには、CRMシステムが不可欠である。

 

バニティメトリクスその6:広告キャンペーンのインプレッション数

弱い理由

インプレッション数は、単に広告が表示された頻度を示しているにすぎない。広告を見た人がいるのか、注意を引けたか、アクションを起こしたかは分からない。これはエンゲージメントやインパクトの指標ではなく、リーチを測定する指標である。

推奨する代替指標:顧客獲得単価(CPA)/広告費用対効果(ROAS)

優れている理由

CPAは、広告活動によって新規顧客を獲得するための平均コストを示し、広告費とビジネスの成果を直接結び付ける指標である。ROASは、広告費1ドルあたりの収益を測定し、収益性を明確に示す。

データ入手場所

Google AdsLinkedIn AdsFacebook Ads Managerなどの広告プラットフォームの分析ツール。また、CRMや販売データと統合することで、実際の顧客獲得と収益を計算することができる。

 

バニティメトリクスその7:サイト滞在時間/訪問あたりの閲覧ページ数

弱い理由

サイト滞在時間が長いということは、一見、エンゲージメントを示しているように見えるが、ユーザーが情報を見つけるのに苦労しているか、タブを開いたままにしている可能性がある。また、多くのページを訪問しているのは、ユーザーがサイト内で迷っている可能性があり、必ずしもエンゲージしているとは限らない。

推奨する代替指標:直帰率(特定のランディングページ)/主要ユーザーのフロー完了率

優れている理由

重要なランディングページで直帰率が高いということは、コンテンツやメッセージがユーザーの共感を得ていないか、ページがユーザーを次のステップに誘導できていない可能性がある。主要なユーザーフロー(たとえば、商品ページを訪問して、カートに追加、決済と進むプロセス)の完了率を追跡することで、Webサイトがどれだけ効果的にユーザーをコンバージョンへ導けているか確認することができる。

データ入手場所

Google Analytics、その他のWebサイト分析プラットフォーム。



※当記事は米国メディア「MarTech」の6/19公開の記事を翻訳・補足したものです。