今日の消費者は、デジタルの世界に住んでいると言ってもいいだろう。つまり、ワンタッチで必要なすべての情報を検索し、管理下に置くことができるのだ。そしてその傾向は2020年になった今年も強まっていくだろう。

これに加えて、広告用掲示板やテレビ広告などの従来のアウトバウンドマーケティング手法(企業側から消費者に積極的に売り込みを図る手法)による消費者への影響理力はなくなりつつある。そして、消費者は、ブランドや企業が、顧客の個々のニーズや好みに応じて、発信するメッセージに変えることを期待している。

 

状況は変わったものの、eコマースビジネスは、雑音をはねのけ、潜在顧客を販売ファネルにおける購買の段階に進ませることに役立つコンテンツマーケティング戦略を作成することができる。

 

Content Marketing Institute(CMI / コンテンツマーケティングの教育やコンサルティング等を行う米国の組織)によると、コンテンツマーケティングは有料検索広告の3倍のリードを獲得することができるという。

またDemand Metric(カナダの経営顧問企業)は、コンテンツマーケティングが従来のマーケティングより62%費用が安いことを見出した

 

こうしたことは素晴らしいことではあるが、一体それがどのような効果を有するかについて「十分理解している」と自信を持って言えるだろうか?

 

用語の定義

CMIは「コンテンツマーケティング」を、「明確に定義されたオーディエンスを引き付けてつなぎ留め、最終的に収益性の高い顧客行動を推進するための、有益で、関連性があり、一貫性をもったコンテンツの作成と配信に特化した戦略的マーケティングアプローチである」と定義している。

 

要約すると、適切なメッセージを、適切なオーディエンスに、適切なチャネルにおいて、適切なタイミングで伝えるということだ。このアプローチを行えば、コンテンツ施策は期待するオーディエンスにリーチし、発信する情報はタイムリーで話題性があり、価値の高いものになるだろう。それにより、ビジネスが信頼に足る、洞察力のある、信頼性の高いものとなる。

 

コンテンツマーケティングをよりよいものにするのは何か?

従来のマーケティングとは、アウトバウンドマーケティングのことを指す。これは、マーケティングの“古い方法”として認識されている。つまり、テレビ広告、広告掲示板の広告や勧誘の電話などの戦術を通じて、大衆をターゲットにする方法だ。

これによって、メッセージとブランドは大勢の人々の目の前に現れるが、適切な人々はそれを見ないかもしれない。この種の広告はたくさんあるが、消費者への影響力はなくなりつつなる。研究結果が、これを裏付けている。

 

Harvard Business Review(米国の経営学誌)によると、勧誘の電話は、90.9%効果がないという。

Arris(英国に設立された米国の電気通信機器製造会社)の世論調査は、我々の84%がテレビ広告を早送りしていることを示している。

 

それに比べて、コンテンツマーケティングは、企業が、ターゲット顧客がすぐに利用可能な、価値のある、インサイトに富んだコンテンツを制作することを重視している。コンテンツマーケティングは、オンライン検索やソーシャルメディアの検索チャネルを通じて顧客から企業にアクセスする必要がある。そのため、アウトバウンドマーケティングと比べてあまり押しつけがましくない。

 

戦略を立てる

実際に効果的な、成功するコンテンツマーケティング戦略を立てるには、基本に戻る必要がある。

ブログやVlog(動画や映像を用いたブログ)をすでに公開しているかもしれないが、自社のオーディエンスとペインポイント(想定顧客の痛点)に対する十分な理解なくしては、取組みは無駄になるだろう。

精巧な戦略を立てて取り組むために、次の4つの手順の実行をお勧めしたい:

 

1.特定

自社のオーディエンス、ビジネスや提供する商品やサービスについて、詳細な調査を行うことから始めよう。

 

オーディエンスの課題と彼らが得ようとしているものを明確にして、彼らの質問に対する回答を提供するコンテンツを作成できるようにすることだ。次に、顧客のコンテンツ消費習慣を掘り下げて調査するのだ。

 

顧客が情報を見つける方法と好きなコンテンツフォーマットを検討しよう。それは、オンラインのソーシャルメディアチャネルかもしれないし、さまざまな出版物、報道機関や雑誌などのオフライン媒体の可能性もある。顧客が、オンラインコンテンツを好む場合、どのようにそれを受け取りたいだろうか?

 

オンラインで大ヒットしているコンテンツのタイプの一つは、動画だ。それは、今年の重要なトレンドであり、2020年も引き続きその成長が続くと予想される。

 

Wyzowl(米国の動画制作会社)が行った調査の参加者の72%は、商品やサービスについて知識を得る場合、文字よりも動画を見ることを好んだ。

TopRankBlog(米国のデジタルマーケティング代理店Top Rank Marketingが発行するマーケティングブログ)が調査したマーケターの73%は、YouTubeを使ってコンテンツを配信していた。

 

リサーチにおけるもう一つの重要な側面は、競合他社が何をしているか、そして自社がビジネスを行うより幅広い業界で何がトレンドになっているかという点を調査することである。これは、皆が議論し、関与していると思われる注目のトピックを明らかにするのに役立ち、これらのトピックに関する自社の見解を共有して会話に加わることができる。

 

2.計画

調査を実施したら、実行計画を作成しよう。

 

3~6ヶ月間の計画を立てることをお勧めする。これにより、効果的にキャンペーンを実行し、最もよい結果が得られるコンテンツを特定するために必要なコンテンツ量を制作するのに十分な時間が得られるからだ。

 

そして、自社の計画に含めるべきものは何か?

  • 目的 — 自社の活動の目的を計画に含めることは不可欠である。最終的な目標にフォーカスした取り組みを実行するのに役立つからだ。目標を、個々のコンテンツごとにブレイクダウンしてもよい。たとえば、あるコンテンツはブランドの認知度を高めることを目的とし、別のコンテンツはユーザーが自社サイトにたどり着くためのクリックを促すことに特化させる場合である。
  • オーディエンス — 複数のオーディエンスタイプがある場合、エンゲージメントしようとしているさまざまなタイプのオーディエンス向けに、特定のコンテンツを制作することが有効だ。それぞれのオーディエンスタイプには、異なる問題があるからだ。オーディエンスのタイプに基づいてコンテンツをブレイクダウンすることで、各グループに適切な量のコンテンツを制作したかを確認することができる。
  • 毎月のテーマ — コンテンツマーケティングプランで筆者が使用しているのは、毎月のテーマとトピックだ。テーマは、業界のトレンドや季節的な事柄に基づくものでも、オーディエンスの抱える問題に対応するものでもよい。それらは、その月に引き続き制作するコンテンツをまとめる傘のように機能するはずだ。たとえば、ある月のテーマが「データ」である場合、「データストレージ」、「データクレンジング」、「データキャプチャ」など、その月を通してより小さいサブトピックに分割することができる。
  • コンテンツの量 — 毎月のテーマを決定したら、その月に制作するコンテンツの量を決定する必要がある。「柱」となるテーマから着手して、その後に小さな「クラスター」コンテンツでサポートするのが有効だ。これにより、コンテンツ制作の労力を最大限に活用し、大きなコンテンツを小さな一口サイズに分割することができる。
  • コンテンツフォーマット — 最後に、制作するコンテンツフォーマットを決定する必要がある。オーディエンスの好みに応じてさまざまなコンテンツフォーマットを制作することで、オーディエンスを引き付けることができる。ガイド、ブログ、動画ブログ、ソーシャルメディアのポストカード、インフォグラフィック(情報を視覚的に表現した資料)、テンプレート、チェックリスト、クイズ、ケーススタディ、レポート、Webセミナー、投票やポッドキャストから選択できる。ウェブサイト用に多種多様なコンテンツタイプを作成することは、Google検索アルゴリズムやソーシャルメディアアルゴリズムでのアピールに役立つ。新しい多様なコンテンツが好まれている。それらが、検索ランキングやソーシャルメディアのフィードでの表示を上位に押し上げているということだ。

 

3.チャネル幅の拡大

すべての活動内容を計画したら、コンテンツの制作と公開を始めよう。

 

コンテンツが、プロモーションと、オーディエンスのまだ知らないかもしれないことを伝え、付加価値を高める情報・知識とがミックスされたものであることを確認しよう。このミックスアプローチは、ビジネスをソートリーダー(特定の分野で影響力がありリーダーシップを取る者)として位置づけることにも役立ち、信頼性を高め、潜在顧客から信用を得ることができる。

 

最初に実行した調査結果に基づいて、完成したコンテンツアイテムをオーディエンスが最も使用するチャネルに配信する必要がある。それは、ソーシャルメディア、電子メール、特定の出版物やダイレクトメールかもしれない。複数のチャネルで拡散させることにより、オーディエンスとの複数の接点が設けられ、これにより、ブランドを潜在顧客の存在させ続けることができる。

 

オンラインデジタルチャネルを使用してコンテンツを配信する場合は、できるだけキーワードとハッシュタグを使用することを忘れないように。オーディエンスが、情報の検索に使用しているのと同じキーワードを使用すると、検索ランキングの上位に表示される。これにより、ターゲットとしたいオーディエンスにコンテンツが表示される可能性が高まるのだ。

 

ハッシュタグは、検索に基づいてコンテンツを分類するという点で、キーワードと同様の方法で機能する。TwitterやLinkedInなどのチャネルでは、3つのハッシュタグを追加するのが最も効果的であるが、Instagramでははるかに多くのハッシュタグを使用できる。

 

4.レビューと改善

コンテンツを配信したら、リアルタイムでパフォーマンスをモニタリングし、何がうまく行っていて、何がうまく行っていないかを確認するためにその取り組みを振り返る必要がある。

 

ソーシャルメディアでのコンテンツのパフォーマンスを確認しよう。最高レベルのインタラクションを達成したのはどのコンテンツだろうか?また、オーディエンスに最も人気があったのはどれだろうか?

Googleアナリティクスを確認して、トラフィックはどこから流れてきて、訪問者がホームページにアクセスしたときに何をしているかを明確にするのだ。人々が最もアクセスしている特定のブログはあるだろうか?

人々が、自社コンテンツにどのように関与しているかを再検討することで、オーディエンスが好むコンテンツのトピックとフォーマットや、どのコンテンツをもっと制作すべきかを明らかにし、オーディエンスにまさしく彼らが求めるものを提供することができるのだ。

 

最後に

2020年となった今でも、コンテンツマーケティングを適切に実行すれば、ブランドを、商品が提供できるものに関する回答と情報を探しているオーディエンスの前に押し出すことができることに変わりはない。

コンテンツマーケティングは、「発信して忘れる」テクニックではないことを覚えておくとよい。これは、企業の認知度を高め、自社の専門知識を明示するための、定期的に実行すべき、一貫性して焦点を絞った製作プロセスであるべきなのだ。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/21公開の記事を翻訳・補足したものです。