使用されていない倉庫のスペースを活用して、中小事業者でも簡単に物流業務をアウトソースできるクラウド型の物流サービスが、いま主流になりつつある。極めてシンプルな操作で、物流の知識がない人でも利用できるサービス。実際に導入している企業は、どのような点をメリットと捉えているのだろうか。そこで、株式会社オープンロジが提供する物流アウトソーシングサービスを導入している株式会社Payke(ペイク)の担当者に話を聞いた。

 

<参考>

【徹底解剖】EC物流を根底から覆す!全11のクラウド型物流サービスとその選び方

 

※この記事は、クラウド型物流システム「オープンロジ」社の協力のもと、クラウド型物流サービスの今を考察した記事である。オープンロジに関する資料は以下からダウンロード下さい。

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バーコードひとつでインバウンドの「言葉の壁」を乗り越えるPayke

 

まずは、クラウド型物流サービスを導入したPaykeのサービスの概要から見ていこう。

 

——Paykeの概要について教えてください。

我々は「世界の消費高を上げる」をミッションに掲げ、買い手(消費者)、作り手(メーカー)、売り手(ベンダー)の3方をつなぐプラットフォーマーとして、消費高を上げるためのソリューションをご提供しています。私たちが商品を購入する時、物体そのものの価値に魅力を感じて購買の意思決定をするということは多くありません。その商品が持つストーリーや口コミ、効果効能など、商品を取り巻く付加情報を知ることで初めて購買意欲が湧き、それが結果的に購買行動に結びつくのです。しかし消費者が手に取るタイミングで表示されている情報量は少なく、パッケージという物理的な面積の制約もあり、商品名や価格など、必要最小限の情報に留められています。そういった状況を現状のなかで商品価値(情報)を流通させ、オフラインにおける情報格差を埋めるためのソリューションを提供しています。

具体的には、まず買い手(消費者)に向けてモバイルのアプリケーションをご提供しています。カメラを起動するとバーコードの読み取り画面が表示され、端末の設定言語に合わせて商品情報が表示されるというシンプルな仕組みになっています。主に訪日外国人をターゲットにしているため、日本語をはじめ、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語、タイ語、ベトナム語の7言語に対応しており、この7言語で外国人観光客の約80%をカバーしています。モバイルアプリは現在連携アプリも含め400万ダウンロードいただいております。

作り手(メーカー)向けには、クラウドで管理画面をご提供しています。管理画面上から消費者に商品の魅力を伝えるための商品情報の登録と、オフラインの消費行動データ解析をすることができます。商品情報の登録については、テキストや画像はもちろん動画などの情報をランディングページを作るようなイメージで自由にカスタマイズできます。また、Paykeではいつどこで誰にどんな商品が手に取られたかというオフラインの消費行動をリアルタイムで収集しているので、消費者の使用言語、国籍、性別、年代などのデータも併せてご提供することができます。これまで、オフラインにおいては購買に至る前のデータ、消費者が商品を選ぶ段階でのデータは明らかになっていませんでした。けれどPaykeは消費者が商品に興味を持って初めてスキャンするため、メーカー様はその商品がどんな性年代や国籍の方に興味を持たれたかというオフラインの消費行動を知ることができます。こちらは、消費財メーカー、一般医薬品、化粧品、食品メーカーを中心に、1,200社程度のメーカー様に導入いただいています。

売り手(ベンダー)向けには、店頭に設置するタブレットをご提供してます。タブレットにはモバイルアプリと同様にカメラがついていて、商品のバーコードをスキャンするだけで商品情報を引き出すことができます。サービスの背景としては、訪日外国人の全員がPaykeアプリのユーザーというわけではないため、モバイルアプリを持っていない人でもモバイルアプリと同じユーザー体験ができるようにということで開発したプロダクトです。タブレットは主にドラッグストアや大手スーパー、ディスカウントストアなどにご提供しています。

 

 

クラウド型物流アウトソーシングサービス導入前の状況

 

このようなサービスを提供しているPaykeだが、どのような目的でクラウド型物流サービスを導入していったのだろうか。

 

——クラウド型物流アウトソーシングサービス「オープンロジ」を導入したきっかけを教えてください。

今は店舗向けタブレットの発送管理をオープンロジさんにお願いしていますが、導入を検討したのは2018年の秋ごろです。ちょうどタブレットサービスについて更なるグロースを図るタイミングで、まさに管理体制を整えていこうというフェーズに入り始めた時でした。当時はタブレットの物流に関しては本当にひどく、ほぼ何もしていないという状況だったんです。中国の工場で作られたタブレットがそのままオフィスに送られてきて、倉庫エリアには段ボールが山積み。物流を管理する専任の人間もいなかったので、総務や法務のバックオフィスを兼任しているスタッフがタブレットの入出庫を管理しているような状況でした。管理に関しては、商品のシリアルナンバーをチェックしてスプレットシートに記入するという非常にアナログなやり方で、営業は営業で、遠隔地から受注を受けたらスーツケース一杯に詰めて自分たちで運ぶ、という方法でやっていました。当時はオフィスに1000台ぐらいの在庫があって、そもそもタブレットがどこの店舗に何台設置されているかということすら管理できていない状況でした。

 

——当時最も大変だったことは何ですか?

管理ができているようでできていなかったことです。担当者が兼任ということもありましたし、当時は営業サイドの管理もずさんでした。いつどのタイミングで何台発注して、そのタブレット端末がどこに行ったのかということが、一度外に出てしまったらまるで分からない。投資家からもさすがにこれはまずいと指摘を受けて、体制を整備するということで投資家経由でオープンロジさんをご紹介いただきました。

 

——タブレット端末の管理ができていないことで困ったことは何だったのでしょうか。

一番困ったのはコスト管理ができない点です。タブレットは会社にとって大切な資産なので、そこを管理できていないというのは企業としては由々しき事態です。当時はどの店舗に何台設置されているかを把握できていない状態だったので、お渡ししてから一度もその店舗を訪問せず、設置してもフォローもできない、さらには忘れてしまうようなケースもありました。タブレットはハードなので故障することもあり、故障したら我々にご相談いただくケースもありますが、使えないからと店舗の裏に放置されているようなこともありました。そもそも受注を受けたらスプレットシートに記入して勝手に持ち出して良いという流れでしたが、まずそれをきちんと書いている人と書いていない人がいた。在庫管理していた人間もその都度対応できないので、申告した台数と全然違う台数を持って行ってしまうケースも頻発していたのです。棚卸しをしていなかったので数が合わないんですよ。

 

——それはどのぐらいの規模で起こっていたのでしょうか。

最初に確認した時点では、行方不明になっているタブレットが100台弱ぐらい。デモ機として持って行くこともあったので、どんな経緯で行方不明になったのかも分かりませんでした。また、契約期間が終わって社内に持って帰ってきたタブレットがその辺に置きっぱなしになっていたり、契約が終わってもそのまま店舗に放置されていたり、返却されたタブレットの管理ができなかったことも苦しかったですね。在庫管理をしていた人間からは「どうにかしなければ」という意見も出ていましたが、現場の人間はタブレットが会社の資産という意識はなく、危機感はありませんでした。全体の数が管理できていなかったので発注タイミングも分からず、完全にそこは感覚値になっていて、恥ずかしながらそんな状況でした。

 

 

クラウド型物流アウトソーシングサービス導入後の変化

 

このような課題を持っていたPaykeだが、クラウド型物流アウトソーシングサービスを導入した後、どのような変化が起こったのだろうか。

 

——オープンロジ導入前後の流れを詳しく教えていただけますか?

自社で倉庫を借りるというのは選択肢としてはなくて、物流に関しては基本的にはまずはアウトソースをしたいと思っていましたが、自分も含め物流の専門家がいなくてどうすれば良いか分からない状況でした。倉庫に預けるということは分かるけれどそこから配送もしてくれるのかなど、仕組みがまったく分からず、その辺りからオープンロジの営業の方に色々お聞きするようになりました。アウトソース先を選ぶにあたって重視していたポイントは、自社システムとの連携です。どの店舗にどのタブレットが設置されているか・ちゃんと起動しているか、ということを自社システムで管理するため、アウトソース先が持つ配送先およびタブレットのシリアルNo情報を自社システムと連携させられることはマストでした。

もう1つのポイントは、工数の削減。まず、タブレットを店舗に置いて持ち帰ってという一連の作業を営業が行うとミスが多発するので、発送までプロの方にお願いしたいということがありました。またシステム操作の手間がかかると導入してもなかなか皆使ってくれなかったりするので、その手間がかからないことも重視していました。

そのためオープンロジのシステムを使うと何ステップで発送まで完了するかということを、導入前に何度も質問させていただいた記憶があります。

 

——オープンロジのシステムについて全体的に印象はいかがでしたか?

システムの連携については、自分たちが実現したい要件が今の機能では対応できないけれど、次のバージョンの機能でカバーできるということを教えていただいていたので、不安はありませんでした。クリティカルなポイントは押さえていましたし、利用料も想定していた金額の半分ほどとかなりリーズナブルでした。導入前には、オープンロジさんともう1社のサービスを比較しましたが、もう1社は我々が重視していたポイントにおいて機能的にカバーできていない点がいくつかあったので、迷わずオープンロジさんを選びました。導入にあたって物流の専任は設けませんでしたが、フローや営業の入出庫に関するルールをきっちり設計して下ろしたので、かなりスムーズに導入できた記憶があります。

 

——実際にオープンロジを導入してみて、どのような点がメリットだと感じましたか?

これまで申し上げた課題がまだ完全には解決しきっていない部分はありますが、シリアルナンバーをはじめ、どの店舗にどれだけの台数が入っているかということが管理できるようになったのは自分たちにとっては大きな一歩だと思っています。タブレットを受注した際は、オープンロジを使って入出庫の作業を行うという流れは定着していて、入出庫に関する工数、実際の発送の業務にかかる時間は大幅に短縮されました。管理担当者は、以前は1日1時間前後タブレットの台数を数えるといった管理の時間に充てていましたが、それが今ではほぼなくなっています。オープンロジから出された入出庫のレポートを見ながら確認したり、営業から来た出庫依頼をシステムに飛ばす程度なので、管理担当者の負担は半分ほどになっていると思います。営業担当も、入手庫に関わる営業の工数は以前の2、3割削減できています。強いて要望を言えば、返却されたタプレットは一度うちのオフィスを経由して、シリアルを確認して箱に入れてから再度倉庫に持って行くので、そこが少し手間ではあるかもしれません。

社員の意識的には、在庫管理がどれだけ重要かということが浸透してきたと感じます。入出庫に関するトレーニング資料には在庫管理の目的も明記していますが、タブレットが会社にとって大切な資産だということがようやくみんな分かってきたようで、あるべき姿に近づいてきました。在庫管理ができていないと需給の予測ができないと先ほど言いましたが、今後は積極的に在庫管理のデータを活用して、需給の予測をしていきたいですね。

 

——他に活用している機能はありますか?

出庫依頼を保留しておく機能を、在庫の仮押さえとして使っています。営業は契約が確定ではないけれど、確率が高そうだという段階になると在庫をキープしますが、以前は在庫の山から物理的にキープするということをしていました。それがシステム上でキープできるようになったので、これは重宝しています。機能面で言うと、オープンロジさんのシステムは何より使いやすいんですよ。在庫管理の素人でもすぐに分かる画面なので、実はそこが一番ポイントが高くて。弊社の開発チームにオープンロジさんの管理画面を見せながら、「これだけパッと直感的に分かるようなUXで画面設計しないと使えない」という話までしたぐらいです。

 

 

クラウド型物流アウトソーシングサービスの導入を検討している企業へのメッセージ

 

このようにかなりの効果が見られたPaykeだが、今後導入を検討している企業へのメッセージを聞いてみよう。

 

——物流アウトソーシングサービスの利用者はEC事業者が大半を占めていますが、御社のようにBtoBを中心とした企業にも勧めたいですか?

はい。先ほどから申し上げている通り在庫は資産なので、スタートアップのように人的リソースもコストも限られているような状況でも、その仕組みは早いうちから作っておいた方がいいと思います。理由としては、資産管理は当然早いうちからやっておいた方がいいというのが1つ。それから、既存のフローの中に定着するまでには一定の期間が必要なので、そこも踏まえて早い段階からやるべきなのではないでしょうか。

また、アウトソースはコストがかかるものというイメージがありましたが、実際は価格もリーズナブルなので経営の観点からも早めに対策しておいた方がいいと思います。在庫の管理から発送までワンストップでやっていただけるというのはものすごく使い勝手がいいですし、オープンロジにおいては何しろ画面が使いやすい。APIとの連携もできるのでシステムとしての柔軟性も高く、そこも含めて検討する余地はあるのではないでしょうか。少なくとも弊社はオープンロジのシステムに助けられています。

 

——最後に、会社としての今後の展望についてお聞かせください。

今はオフラインにおける消費行動のデータと多言語化された商品データを収集していますが、今後はその動きを広げていくと同時に、将来的にはオンラインとの統合を含めて消費行動のデータを収集・解析し、最適なチャネルから最適な情報を流通させ、消費者の購買意思決定の機会への介入数の最大化と購買意思決定率の最大化を図り、結果、消費高を上げるというミッションを達成したいと考えています。

 

 

クラウド型物流アウトソーシングサービス「オープンロジ」とは

 

オープンロジとは、EC事業者と物流倉庫を結び付けるクラウド型物流アウトソーシングサービスだ。

※オープンロジに関する資料は以下からダウンロード下さい。

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「誰でも簡単にECが立ち上げられるのなら、商品が売れたあとの物流業務も簡単にしようというコンセプトでオープンロジを始めました。利用開始時は問い合わせや見積もりは一切不要で、インターネット上で誰でも簡単に申し込みが可能です。価格や重量ごとに固定料金を設けているので、そもそも見積もりをする必要がないのです」とオープンロジの伊藤氏。

最大の特徴は、料金体系が明瞭化されていること。倉庫利用料と配送料はサイズごとに分かれており、海外配送やオプションについてもシンプルかつ明確に料金が提示されている。月間の出荷件数に関わらず、固定費ゼロ・従量課金で利用できる良心的なサービスだ。

さらに、細かい現場業務の効率化にも積極的に取り組んできた。例えば、入庫予定にない商品が入庫された場合、その商品の写真を撮り、アップロードするだけでEC事業者に自動でメッセージが送られ、連絡を受けた事業者はURLをクリックするだけで詳細を確認でき、3パターンの中からどのように処理をしてほしいのかを選択することで、作業指示を出すことができる。最終的には作業者が使う端末に反映され、一連のやり取りは履歴に残るため現場が混乱することもなく、円滑に行われるようになる。

オープンロジの新しい形のサービスシステムは、倉庫会社にとってもメリットがある。EC事業者からの要望はオープンロジ側がヒアリングしてシステムに反映させていくため、倉庫会社がシステムについて考える必要は一切ない。また、同一のシステムを利用する提携倉庫のネットワークが広がれば広がるほど同じオペレーションで業務を行えるので、1つのEC事業者が膨れ上がってしまった時には分散して運用ができるというメリットもある。

「物流の未来を動かす」というミッションを掲げているオープンロジ。伊藤氏は今後について「情報の処理を効率化していくだけでなく、EC、物流、配送が連携していくネットワークの構築が重要だと考えている。EC事業者が直接配送事業者と連携を取ることは難しいので、我々が取りまとめて1つのオペレーションでそれを実現したい」と話した。

 

オープンロジのようなサービスはここ数年で続々と生まれている。これまであまり大きな改革が見られなかった物流業界にも、クラウドネットワークを有効的に利用し、効率的な運用を実現できる未来の形が見えてきたのではないだろうか。

 

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