オムニチャネル機能の実装が進むECパッケージとカート - どこまでシンプルにオンラインと店舗を連携することができるのか
ECサイトの浸透に伴い、ECサイト単体での施策はある程度限界に到達してきている。そのため、多くの企業で実店舗との連携など様々なオムニチャネル施策を伴ったリニューアルや取り組みが行われている。今回はそのようなECサイトのオムニチャネル化を支援する、ECサイト向けのパッケージとECサイト向けのASPカートを見ていきたい。
<参考>
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オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、辞書的には”あらゆる流通経路”という意味を持つようだ。ECサイトにおけるオムニチャネルというと、オンラインと実店舗を連携し、相互補完的な役割を持たせ、事業活動全体での効果を上げていく、というような包括的な意味を持つまで昇華させて使うケースが多い。具体的にはオンラインと実店舗の商品データ、商品を買った顧客情報、在庫情報などはそれぞれ区別して管理していたものを統合し、ポイントなどの販促施策を有機的に行うことをトータルで行うことを意味する。このように書いてしまうと簡単そうだが、これを実現するためには非常に複雑なシステムと大掛かりな移行が必要となってくる。そのため導入をためらう企業も多くあるのが現状だ。
オムニチャネルを一躍有名にしたのは、米国の老舗百貨店Mecy’sの事例だろう。当時、売上が伸び悩んでいたMecy’sは、2011年にオムニチャネル化することを発表。RFID(無線ICタグ)を使い、店舗とECサイトの 在庫管理・販売の一元化をし、在庫圧縮へ。店員にはモバイル機器を配布し、商品の在庫・商品詳細・ライバル店の商品の価格などを確認できるだけでなく、その場での決済ができるようになったのだ。商品が店舗にない場合、自宅配送も可能。2011年は700万点以上の商品が直送された。ECサイトでの売上高は、2010年から2011年で 40%の増加。このシステムにより、業績が大幅に改善。Mecy’sのオムニチャネル化の成功により、オムニチャネルがグローバルに広まっていったのだ。
今回はそのようなオムニチャネル化を進めるための機能の実装が進む、ECサイト向けCMSパッケージとECサイト向けASPカートを2つずつ見ていく。
<参考>
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EC-Orange 「Orangeオムニ」・「Orange Club」
数年前からO2Oやオムニチャネルというキーワードを軸にECサイト構築パッケージの提供を行っているEC-Orange。ABC Cooking Studio、ドン・キホーテ、さとふるなど、導入実績は740社以上。ショップ型(単店舗)やモール型(複数店舗)、アパレルや専門用品などの多種多様な企業に対応したパッケージ(ショップ・モール・O2O・オムニチャネル・グローバルの6種類)を提供している。
その中のOrangeオムニは、オムニチャネル構築に特化したパッケージだ。
このパッケージは店舗とオンラインサイトを連携させるための3つの特徴を持っている。1つ目は、店舗POSレジとECサイトの売上・在庫・顧客に関するDBを統合管理する。2つ目は店舗での受け取りや店舗での取り置きなどの機能を実装し、店舗とECサイトの相互での送客を促進することができる。3つ目は店舗のPOSレジをたった5分で開設することが出来るため、複数の店舗を持っている事業者にとって導入がスムーズに行える。また、店舗はPOSレジだけでなく、デジタルサイネージとの連携も可能だ。
また、ECパッケージが苦手としているスモールスタートにも対応可能。標準機能を持つパッケージは、コストを抑えたい、オムニチャネルをすぐに始めたい企業にとって、1からオムニチャネルを始めるよりも低予算であるため、手軽に始められるパッケージとなっている。もしも機能に物足りないのであれば、後から追加することも可能だ。
丸善&ジュンク堂での店舗受け取り・取り置きや店舗在庫をECサイトに表示する機能、ハードオフコーポレーションがPOS連動や他店舗からの取り寄せ、店頭・ECサイトの在庫と連動する機能を実装するなど、オムニチャネル化に成功した著名企業への導入実績が豊富にあることも強みだろう。
また、Orangeオムニと連動する形で、オムニチャネルアプリ構築パッケージOrange Clubも提供している。
アプリは、オムニチャネルを行う上で欠かせない、店舗検索・会員証(バーコードでの表示)・カードレス決済(事前にアプリ内にクレジットカード情報を登録する必要がある)・プッシュ通知・ポイント機能・購入履歴の確認・お気に入り商品登録・スマートキー(ホテルのルームキー、宅配ボックスの鍵など)などの多様な機能をもっている。EC-OrangeシリーズやOrange Tabletシリーズと併用することで、店舗やECサイトと連携したサービスを提供できる。
ecbeing 「オムニチャネル+」
900サイト以上の導入実績があるECサイト向けパッケージecbeingは、オムニチャネル+というオプション機能群を提供。
このオプションにより、既存のPOSレジや在庫情報とリアルタイムに連携し、顧客情報・ポイント情報を一元管理することが可能になる。
オムニチャネル施策としては、リアルタイムでの店舗在庫のオンライン上での表示、ECサイト・実店舗の連動企画キャンペーン、店舗内にタブレットコーナーの設置・商品選択・オーダーシートのプリントアウト・決済など豊富な事例がある。THE BODY SHOP、ABC-MARTなどへの実績がある。
オムニチャネルの販促効果を最大限に発揮するためには、ecbeingCampaign+やecbeingCRM+との併用が効果的だ。これ以外にも複数のオプションが提供されており、様々な施策を行うことが可能となっている。
FutureShop 「FutureShop2X」
ショッピングカートASPのFutureShop2とポイント管理ASPのCROSSPOINTが連携したオムニチャネルマーケティングを推進するASPサービスがFutureShop2Xだ。
FutureShop2Xはオムニチャネル化が重要な施策となっている、アパレル・ファッション分野に強みを持っている。もともとFutureShop2が持つ機能とCROSSPOINTが持つ機能をフル活用し、ECサイトから実店舗への誘導、実店舗からECサイトへの誘導に重点を置いた機能展開となる。実店舗・ECサイトの在庫情報や顧客情報の一元管理、会員ポイント統合のほかにも、会員ステージ・クーポン、実店舗在庫表示、再入荷お知らせ、予約販売機能、裾直しの予約など、アパレル・ファッション部門に特化した機能が用意されている。
レディスアパレル専門店flowerの事例を見てみよう。flowerではポイントカードをつくることの煩わしさから、「カードをなくしたい」と強く思っていた。そこで、2013年4月、店舗でCROSS POINTを導入。会員カードをなくし、携帯やスマートフォンの画面上でのバーコード表示に切り替えたところ、1年間で会員数が4倍に。カードをつくるコストの削減にも繋がった。そして、2014年6月にFutureShop2Xを導入し、ECサイトと実店舗の会員ポイントを連携したところ、統合前と比べて新規会員登録数は130%以上に増加。主に実店舗で登録した人のECサイトでの購入が増えたそう。「ポイントを利用して買い物をしてくれたら」というflowerの狙い通りの成果がでた。
MakeShop 「MakeShop for オムニチャネル」
ショッピングカートASPの中でNO1の流通額を誇るMakeShopは、MakeShop for オムニチャネルというMakeShopをベースとしたオムニチャネル対応サービスを提供している。
MakeShop for オムニチャネルは、カートASPをベースとしているため、従来だと比較的大規模な投資がないと取り組みを進めることができなかったオムにチャネルを最低限の投資で進めることができることが特徴だ。他のサービスと同様に、在庫・顧客情報やポイントの統合、POSシステムとの連携、クーポン配信、バーコード読み取りなどに対応している。FAKE TOKYOなどのアパレル系の店舗への導入実績がある。
どこまでシンプルにオンラインと店舗を連携することができるのか
今回紹介した4つのサービスのうち、EC-OrangeとecbeingはECサイトパッケージとなり、ある程度カスタマイズをする前提で作られたパーツのかたまりだ。FutureShop2とMakeShopはショッピングカートASPとなり、決められた項目に値を設定してECサイトを組み立てていくイメージのものとなる。そのため必然的に前者の方が各企業のオムニチャネルの個別施策に対する対応力は高くなる。
しかしFutureShop2やMakeShopも外部サービスとの連携などを柔軟に対応するなど、一般的な企業のオムニチャネルのニーズには十分応えられるだけの柔軟性を備えているといっていいだろう。
EC-OrangeのOrangeオムニとOrange Clubでこだわりのオムニチャネル施策を行うのか、ecbeingのオムニチャネル+やCRM+を活用しオムニチャネルを活用したマーケティングに打ってでるのもいいだろう。アパレル・ファッション系の企業には、業界特有の機能を兼ね備えたFutureShop2Xを使うことをオススメするし、低コストで基本的なオムニチャネル化を進めるならMakeShop for オムニチャネルが向いているだろう。どのような予算感と戦略でオムニチャネル化を推進していくのか。その方向性をしっかり検討した上で、サービスを選定してくといいだろう。