コンビニエンスストアのECサイトはどこに活路を見出して行くべきか

 

コンビニエンスストアといえば、今や家や会社の周りに多く見ることができ、使わない日はないというくらい生活に密着しています。しかし、コンビニがネットショップを持っていて、それを使ったことがあるかと言われると、使ったことがある人はあまり多くはないのではないでしょうか。

デジタルの世界では、リアルの販路やチャネルの多さが仇になることは珍しくありません。例えば国土が狭く、そこかしこにショッピングモールが乱立しているシンガポールではECの普及があまり進んでいません。少し事情は違いますが、このコンビニエンスストアのECもその悪循環にはまっていると言っても過言ではありません。

今回は、コンビニエンスストアのECの奮闘から、今後の活路をどこに見出していくのかを考えてみたいと思います。

 

 

コンビニECとは

 

コンビニECは通常のECと異なり、宅配便を使って商品を受け取るだけでなく、受け取り先をコンビニにしてその場で代金を支払うこと(コンビニ決済)ができるサービス全般を指します。すなわちコンビニECはコンビニエンスストアが運営しているECサイトだけを指すものではなく、コンビニで受取・決済を行える他社のECサービスも含まれます

ライフスタイルに合わせて時間を気にせず商品を受け取ったり、オンラインショッピングでのクレジットカード利用に対して抵抗のある人でも安心して利用できるのが最大の魅力。また、既存のコンビニ流通網を利用することで輸送費を抑えられるため、双方にとってメリットがあるサービスです。

コンビニエンスストア各社が自社の店舗ネットワークを活用したコンビニECサービスに乗り出したのは2000年前後のこと。先陣を切ったのは、業界最大手のセブン-イレブンでした。1999年11月に書籍のECサイト“esbooks(現セブンネットショッピング)”をスタートさせ、さらに2000年7月に食品系ECサイト“セブンドリーム・ドットコム”を開始。そこから遅れること3ヶ月、ファミリーマートが“famima.com”を、ローソンが“@LAWSON(現ロッピー)”を立ち上げます。当初は各社とも内容に大きな違いは見られませんでしたが、サービス開始から10年以上の歳月を経た今、置かれた状況は少しずつ変化してきています。

今回はコンビニエンスストア自身が展開するコンビニECについてみていきます。

 

 

セブンネットショッピング

 

セブン&アイ・ホールディングスが運営する“セブンネットショッピング”は、お取り寄せ食材から衣類品、雑貨、書籍まで何でも揃う総合ECサイトです。

 

セブン-イレブンで売られている商品はもちろん、テレビ番組『女神のマルシェ』や雑誌『saita』『ぴあ』などが発信するショップもあり、コンビニの枠を越えた商品が数多く並びます。他にも、芸能人や専門家、購入者が口コミを書き込む“みんなのクチコミ”や各カテゴリのランキングなど、ECにとって欠かせないサービスも用意。商品の配達料は1,500円未満であれば300円、1,500円以上の購入またはセブン-イレブンでの受け取りを選択すれば無料となっています。

これまでセブンネットショッピングでは、リアル店舗にない独自のコラボ商品やイトーヨーカドー関連商品、電子書籍などを販売することで他社との差別化を図ってきましたが、先日セブン&アイ・ホールディングスのグループ全社で扱う300万点の商品をネットで購入可能にすると発表しました。

セブン-イレブンを始め、イトーヨーカドー、そごう・西武など約20社を傘下に収める同グループは、これまで別々に行ってきたECシステムを統合し、2018年を目処に各社が運営するECサイトの商品をまとめて注文できる仕組みを構築。さらに商品の受け取り体制を整え、最寄りのセブン-イレブンでグループ各社の商品を24時間いつでも受け取ることが可能となります。

また、メーカーが出店出来る「モール」形式を一部の商品ではありますが、業界で唯一採用しています。

つまり、わざわざデパ地下やスーパーに出向いて購入していた商品が、手軽に“いつものコンビニ”で手に入るようになるのです。これにより利便性は格段にアップし、さまざまな層の取り込みが期待できるでしょう。

 

 

ファミマ.com

 

2000年にECサービスを開始したファミリーマートは、2010年12月に総合通販サイト“famima.com”と食品通販サイト“ファミマ・フードパーク”を統合し、新たに“ファミマ.com”をオープンしました。

 

この時点で主力商品だったCD・DVD、書籍などの取り扱いを中止し(現在は取り扱い再開)、取扱商品を1万点に絞り込んで専門性を高める方向で再スタートを切ったのです。

“ココでしか買えない”をコンセプトにした新サイトでは、食品や生活雑貨の他、全国のご当地グルメやタレントグッズ、人気アニメとのコラボ商品、サッカー日本代表グッズなどを販売し、独自路線を歩んできました。

ファミマ.comではセブン-イレブンと同様に店舗での無料受け取りサービスも行っており、5,000円以上の購入で自宅への宅配も無料となります。店舗同様、購入金額に応じてTポイントも貯まるため、最近はポイント目的でサイトを利用する人も増えているようです。

 

 

ロッピー

 

2011年にYahoo!と提携してサイトのリニューアルを図ったローソンの“ロッピー”は、食品を扱う“ホームコンビニエンス”と、チケットやCD・DVD、書籍を扱う“エンタテイメント”の2本柱で成り立っています。

 

リニューアル当初はYahoo!ショッピングの商品を購入できる点を売りにしていましたが、本サービスは2013年7月に終了。代わりに新たな軸となっているのが、Yahoo!と共同で行う食品の定期宅配サービス“スマートキッチン”です。男性客が多いコンビニ業界において、ナチュラルローソンにおける本物志向の商品展開で女性客の信頼を得て来たローソンが、今後どれだけ主婦層を取り込めるかが勝負と言えるでしょう。

業界で唯一、店頭受取を選択しても無条件で送料無料となる制度を導入しておらず、店舗ネットワークを活かしきれていない印象もあるのが残念なところ。

しかし、“ローソンホームドラッグ”では現在第3類医薬品や医薬部外品を扱っており、今後ネット販売が解禁となった一般用医薬品(大衆薬)を取り扱うようになれば、他社とはまた違う面からのアピールが期待できます。

子会社であるHMVが手がける“”HMV ONLINE”も有力なコンテンツのひとつで、エンタ系の総合ポータルサイト的な役割も備えた充実の内容は、amazonに対抗できる情報量と信頼度を持っています。

 

 

コンビニエンスストアのECサイトは何のためにあるのか?

 

コンビニエンスストアのECサイトでは、サービスの軸やコンセプトの変更を何度となく繰り返しており、方向性を試行錯誤しています。取り扱っている商品レンジを見てみても、こんな商品を買えるんだ、このブランドと提携しているんだ、ということにはじめて気付かされる人も多いのではないでしょうか。

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結局のところ、コンビニエンスストアがECを始めて14年が経過した現在においても、その役割は明確になっていません。言い換えるならば、今、コンビニエンスストアのECでモノを買わないといけない理由を作り出すことが出来ていないのです。そのため、ただ現在の各社のネットワークで並べることが出来る商品をただ漫然と並べているだけ、という状況に陥っているのではないでしょうか。

通常のECサイトにおいて商材選定の際によく言われるのは「コンビニで売っているような汎用品を取り扱ってもECでは売れない」ということ。言い換えれば、コンビニでも買えるものをわざわざ値段が少し安いからと言った理由でユーザーはECで買わないのです。

そのためまさにコンビニエンスストアでは実店舗で取り扱っている商材をただECで並べるだけでは意味がなく、各社とも試行錯誤しながらポイント連携を強化したり、ECでの取り扱い商材を作り上げています。

その結果、コンビニエンスストア各社のECサイトでは、「こんな商品を買えるんだ」という感想を持つような商材が並ぶことになり、アパレルならZOZO、本ならAmazon、のような商材指定の購入の場合にもユーザーの選択肢になかなか入ってこない状況となり、その存在意義はかなり薄いものとなってしまっています。

それなりには売れているのでしょうが、 コンビニの知名度からすると非常にもったいない状況ともいえます。

 

 

活路は高難度のオムニチャネル

 

コンビニエンスストアの強みといえば、店舗数と流通網があげられます。他社のECサイトの商品の受け渡し場所や、ソーシャルギフトのチケットの受取・利用場所として活用されているなど、O2Oの「オフライン」の拠点としての影響力は抜群です。

コンビニエンスストアのECサイトとしては、その実店舗への集客を、「オンライン」上に引き上げるところに活路を見出していきたいところ。昨今の流れに逆らうような逆O2Oの発想がポイントとなるのではないでしょうか。

具体的には過去にも似たような取り組みは行われていますが、店頭でのレシート上のキャンペーンコードの提供により、今よりも多くのお客様にオンラインでのアカウントを開設してもらい、存在を認知してもらい、購入体験を一回でもしてもらう、ということからしっかりとはじめていくべきでしょう。

また、既にセブンアンドアイホールディングスが取り組みを開始しているように、データの統合化は必須となります。それにより、オフラインで使われているポイントカードとオンラインでのアカウントの紐付けを行い、よりニーズに根ざした提案をお客様に行っていく必要があります。

そして最終的には、店頭で購入→オンラインでオーダー→店頭で受取、そして他の商品も購入、というサイクルを継続的に回していくことをが活路となっていくのではないでしょうか。

このようにコンビニエンスストアのECサイトは、オンライン・オフラインをはじめとした様々なタッチポイントを有機的に活用する高度な“オムニチャネル化”を実現していく必要がある時代になってきています。逆をいえばそのようなレベルに対応出来ないコンビニは、ECサイトを運営する必要性が極めて低くなってきているのではないでしょうか。

 

 

 

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