ウェアラブルデバイスとは?
ウェアラブルデバイスとは、身に付けることが出来る端末。
もう少し解釈を進めると、着用可能なインターネットにアクセスできる端末のことで、今後発売が予定されているものはメガネ型や時計型のものがある。
かつて、インターネットへのアクセスはデスクトップに代表されるPCに限定されていた。
それが、携帯電話からスマートフォンへと進化したモバイル機器でもアクセスが可能となり、もはやインターネットユーザーの30%~40%はモバイル機器からのアクセスであるといわれている。
スマートフォンが爆発的に普及した現在、次にヒットが予想される端末として注目を浴びているのがウェアラブルデバイスだ。
モバイル(携帯可能)からウェアラブル(着用可能)へ。
今回は、ウェアラブルデバイスとして注目を浴びている“Google Glass”(正式名称:Product glass)と“Telepathy One”からヒントを探しつつ、ウェアラブルデバイスがECの世界にどのような影響を与え得るのかを考えていく。
Google Glass – グーグル・グラス
“Google Glass”はGoogleが開発を進めているウェアラブルデバイスで、既にプロトタイプが海外では発売されており、その真価に注目が集まっている。
Google Glassを一言で言うなら、Android OS搭載のメガネ型のデバイスということになるだろう。
Google Glassの機能はこの動画に集約されている。
Google Glassでは、写真の撮影、動画の撮影、ビデオチャット、ナビゲーション、メールの送信、検索、音声翻訳、必要な情報の表示などが出来ることが読み取れる。
また、「ok, glass」から始まる一連の音声で操作を行うことになっているようだ。
正直なところデザインが日常的に掛けたくなるようなデザインではないのが残念だが、ハンズフリーで写真撮影やネット検索が行えるのは非常に便利だ。
Telepathy One – テレパシー・ワン
“Telepathy One”は、「セカイカメラ」を手掛けた井口氏が手掛けている日本発のウェアラウブルデバイス。
Google Glassと同様にメガネのように耳に掛ける形態であるが、メガネのように目の前を遮る物質としての投影面が存在しないことが、Google Glassとの最大の違いとなる。
しかし、目の前には約5インチの仮想ディスプレイが見え、そこに情報を投影する。
Telepathy Oneのコンセプトの「Wear your love」が目指すのは、「人と人とのつながりをできるだけ縮め、密接なコミュニケーションが生まれる」(井口氏)こと。(CNET Japan記事)
すなわち重視されているのはコミュニケーションである。
Google Glassの入力が音声であったのに対し、Telepathy Oneの入力はジェスチャーが中心となる。
スマートフォンよりもさらに手軽に人と繋がれるツールを目指し、例えば内臓カメラにより自分が見てい る景色をリアルタイムにソーシャル上に人にシェアすることが可能になる。
「街中を歩いていてかわいいものを見つけた時、スマートフォンで撮影して、コメントをつけて投稿するまでには実に13のステップを踏んでいる。しかしTelepathy Oneでは見たままを撮影し、(投稿すれば)そのまま友人からのコメントが目の前に表示される。リアルとオンラインがシームレスにつながっていく」(CNET Japan記事)とは、井口氏らしいコメントだ。
AR(拡張現実)のはしりである「セカイカメラ」を手掛けた井口氏が手掛けている ため、Telepathy OneもARと親和性の高いデバイスとなるのではないだろうか。
ウェアラブルデバイスがECの世界を変えていく4つの可能性
モバイル(携帯可能)からウェアラブル(着用可能)へ進化することで大きく2つのベクトルが加速することは確実といえる。
- デバイスがより日常的な、身近なものとなる
- より簡単な操作でやりたいことが行える
この2つのベクトルを軸にeコマースにどのような影響を与えていくか、4つの視点から考えていきたい。
目の前の商品をウェアラブルデバイスで購入する
まずはこれを観てもらいたい。
この動画は、リアル店舗のショウウィンドウ化がさらに進む未来を暗示しているように見える。
しかし、冷静に考察してみると、消費者が目の前にある商品をあえてネットで購入するだろうか?
そのままお店で購入すると考える方が妥当だろう。
だが、商品によって話は変わってくる。
それはリアル店舗での価格とECでの価格に開きがある場合だ。
例えば家電製品に関していえば、大型の家電量販で買うよりも価格.comで最安値検索をして買った方が安いことは多くの人が既に気が付いている。
そうなると、消費者はリアル店舗で下見をしてそのお店では買わずに、ウェアラブルデバイスで最安値を検索して同じ商品を購入する、という状況が発生するだろう。
これは、それほど真新しくなく、現在でもスマートフォンを使って同様の購買行動を取っているユーザーも多いはずだ。
しかり、より身近になり、操作しやすくなることで、販売価格でリアル店舗よりも勝っているECサイトは、ウェアラブルデバイスの普及により大きく飛躍する可能性を秘めている。
デバイスからの購入が一気に簡単になる
また、もう一つの可能性として、上記の動画はもう一つ示唆を与えてくれている。
それは、購買までのプロセスが非常に簡略化されているという点だ。
今、PCやスマートフォンで何か商品を買おうとすると、まずアマゾンや楽天で検索し、商品をどのショップで買うのかを決め、カートに入れて、決済方法を選択して、・・・・。
といういくつもの煩雑なプロセスを踏まなければならない。
それを、この動画ではたった「Buy, orange medium!」の一言で済ましている。
たしかに、事前にクレジットカード等を登録しておけば実際に一言で済ますことも可能だと推測される。
シェアするステップを大幅に簡略化した井口氏なら、「人が目の前のモノを買いたいと思ってから実際に購入するまでの13ステップをウィンクという1ステップで行えるようにした」ということを既に考えていてもおかしくはない。
このように極限まで簡略化され手軽になると、消費者がECを利用する敷居が非常に低くなり、EC利用の日常化が予想される。
そうなった場合、ECでの買い物が当たり前となり、リアル店舗が衰退する、などという未来もあり得るかもしれない。
目の前の商品を一瞬でデバイスが識別し、その最安値を検索し、価格と在庫が目の前に瞬時に表示される。
それを、音声もしくはウィンクのようなジェスチャーにてその場で購入することが出来る、という未来は比較的イメージしやすいものであることは間違いないだろう。
商品検討の方法が激変する
ウェアラブルデバイスは、消費者が商品を検討する際のステップにも影響を及ぼす可能性があるだろう。
例えば、自宅の鏡の前でウェアラブルデバイスを掛けることで、洋服等を視覚的に試着を体験することができるようになるかもしれない。
また、自分が持っているあのボトムスと、この店頭にあるトップスを合わせた場合にどのような印象になるのか、よりリアルに近いイメージをウェアラブルデバイスは見せてくれるかもしれない。
また、家具やインテリアも同様に家に置くとどうなるのか、リアルにイメージすることが可能になるだろう。
バァーチャルな自宅での試着に加えて、ハングアウトを活用することで、自宅にいながら店員と話しつつ試着をすることが可能になる、という未来も予想できる。
デバイス側の機能の進化が必須だが、そのプラットフォームの上でどのような検討機能を実装できるかが、モールの勝敗を左右する時代がくるかもしれない。
レコメンドの質・量が飛躍的に上昇する
ウェアラブルデバイスがより身近になることで、様々なデータの蓄積が可能となる。
GoogleがGoogle Glassを開発した目的の一つに、ストリートビューのような街中の情報だけでなく、個人の視線から見える情報の収集もビジネスにしようとしているのではないか、と噂されるほど、その新たなデータの蓄積の可能性は飛躍的に高まる。
Webでの検索、SNS、GPS様々な機能から個人の嗜好性がログとして蓄積されることになる。
このようなビックデータを活用して、個人の嗜好性に応じた商品のリコメンドがなされ、そのままECでその商品を購入するということも考えられる。
例えば、毎日ランニングをしている人に、その人の好きなブランドやどこを走っているのか、好きな色、などが分かった状態でランニングシューズがリコメンドされる。
また、通勤・通学の際に、気になる広告やショウウィンドウを2秒以上眺めた人に、その商品がレコメンドされる。
このように、ウェアラブルデバイスから収集されるビッグデータと、Web上でのアクティビティを統合化することで、これまでの数倍のコンバージョン率の高い広告となる手法が開発される可能性は高い。
コンピューターが個人の趣味嗜好をきめ細かく把握する時代はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。
ここで書いたような未来は、全く違う形で進化して実現しないかもしれないし、はたまた数年先には現実のものとなっているのかは分からない。
しかし、5年前にモバイルの小さな画面でインターネットをすることが当たり前になる、と思っていた人がいただろうか?
ウェアラウブルデバイスも同様に消費者の間で爆発的に普及する可能性を秘めている。
そうなった時にECは果たしてどんな変容を遂げているのか。
ひとまずは、年内に発売が噂されるGoogle Glassの発売を待ってみたいと思う。