戦略を変更する必要はない。依然として、モバイル向けの最適化は必須である。

2018年5月30日、米国ベンチャーキャピタルKleiner Perkins社のMary Meeker氏による第3者統計データの総括が発表された。 その膨大なデータの1つを次に挙げる。世界のスマートフォン出荷台数の2017年の成長率はゼロであった。この結果については、すでに多くの調査機関によって驚きと警戒とともに指摘されている。

Meeker氏は、スマートフォンの平均販売価格が低下しているというデータも挙げている。これは、主に発展途上の市場に向けて低コストのデバイスを製造するために必然的に発生する価格低下が原因である。このようなデータは、スマートフォン(市場)がピークに達したことを意味しているのだろうか?そうだとしたら、これはマーケティング担当者にとってどのような意味をもつのだろうか?

 

新しいスマートフォンの出荷台数と年成長率

米国シンクタンクのPew Research Centerの調査では、米国の成人の95%が携帯電話を持っており、そのうち77%がスマートフォンを持っていることがわかった。その結果、まだスマートフォンにアップグレードしていない人は約17%。アップグレードしていない人のほとんどは年齢が高い(50歳以上)傾向にある。49歳以下のスマートフォンの普及率は、85%を超える。このデータは、Meeker氏の見解の方向性を裏付けているようだ。

Pew Research Centerのデータによれば、米国の高齢者層においては今後ある程度のスマートフォンの成長の可能性がある。しかし、最も需要が高い消費者セグメント(18歳から49歳)では、ほぼ飽和状態であることがわかる。したがって、”機種変更”とアップグレードを促進するための戦略が必要だ。

Meeker氏が引用しているこれらの対照的なデータからは、インターネットの普及率が世界人口の約50%に達しており、これ以上の成長が困難になりつつあるということがわかる。しかし裏を返せば、伸びしろが半分しか残っていないのではなく、まだ半分も残っているとの解釈につながる。個人的には、残りの成長機会は50%とまではいかないにしろ、10%でもないと考えている。つまり、新しいインターネットユーザーが生まれる余地がまだあるということだ。そして彼らの大多数派は、おそらくまずはスマートフォンのユーザーになるだろう。

 

 

もう一つのちょっとしたポジティブなニュースとして挙げるのは、デジタルメディアに費やされる時間が増え続け、スマートフォン利用がその時間の大半を占めているということだ。 スマートフォン経由でインターネットにアクセスする時間は、デスクトップおよびラップトップコンピュータの増加が横ばいから低下しているのに対し、徐々に増加している。 また、以下のチャートで特に注目すべきは、スマートスピーカー(他のコネクティッドデバイス)使用時間の増加である。

 

 

 

 

これらのデータは何を示し、マーケティング担当者はどのように対応すべきだろうか。ここからわかるのは以下の通りだ。

 

  • 世界的に見れば、インターネットが成長する十分な余地があり、その成長はスマートフォンによるアクセスが主になるだろう。
  • 米国市場はスマートフォンの出荷台数については飽和状態に近づいているが、その使用状況はまだピークに達していない。
  • デジタルメディア使用時間は、スマートフォン、スマートスピーカー、その他のインターネット接続デバイスなど、PC以外のデバイスで引き続き増加するだろう。
  • ほとんどのデジタル広告収入の伸びはモバイルからのものであり、それは近い将来も続くだろう。
  • Google、Facebook、Amazonやその他大手パブリッシャーは、さらにモバイルから収益を得るだろう。
  • 将来のeコマースの成長は、PCよりもモバイル主導となるだろう。
  • ソーシャルコマースはモバイルによって独占されるだろう。

 

上記に異論もあるかもしれない。しかしスマートスピーカーやスマート・ディスプレイは、より小規模なユーザー層からより力強い成長を見せるだろうが、様々なデジタル・プラットフォームやチャネルの中で、近い将来、最も主要となるデバイスはモバイルであろう。

 

したがって、マーケティング担当者は引き続き主要なインターネットデバイスとしてスマートフォンに注力しなければならない。これは、顧客のモバイルユーザーエクスペリエンス、特にロイヤルティツールとしての簡素化と改善を意味する。要するに、戦略を変更する理由はないのだ。依然として、誰もがモバイル向けに最適化していく必要がある。そこは、これからも成長とチャンスがあり続ける場所であるからだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の05/31公開の記事を翻訳・補足したものです。