これは、David Murphy氏とBaiduのゼネラルマネージャーLinda Lin氏による、AIやモバイル戦略についての対談である。

Baiduを知るほとんどの人が、Baiduは、検索エンジンの巨人Googleの中国版のような存在だと言うだろう。実際Baiduは、主軸となる検索エンジン以外の事業も展開しており、IoT(モノのインターネット)や自動運転車、ソーシャルメディアサービスなどがその一部の例である。David Murphy氏は最近、BaiduゼネラルマネージャーLinda Lin氏とロンドンで対談し、同社が注力している事業について聞く機会を得た。

 

「Baiduのミッションは、技術によって複雑な世界を単純化することであり、私たちの戦略はモバイルファウンデーション(基盤)を強化し、人工知能(AI)分野においてトップに立つことだ」とLin氏。「もし、モバイルかAIかのどちらかを選択する必要があれば、AIを選ぶだろう。AIの研究開発においてBaiduは、2016年に16億RMB/人民元(約1億8,000万ポンド)、2017年には20億RMBを投資している。これはBaiduの検索エンジンによる収入全体の15〜20%に相当し、中国全企業の中で最大額の投資となっている」。

 

当然AIは多分野にわたるツールだが、Baiduは主にどの分野に投資しているのか?

 

「Baiduは検索だけでなく、自社が提供するネイティブ広告やディスプレイ広告、ブランディングなどのマーケティングソリューションでAI技術を活用している。また、ビッグデータとAIを用いて、Baiduの広告主がターゲットオーディエンスをより正確に識別することで、リーチできるようサポートし、音声や画像認識、拡張現実感、自然言語処理などによってターゲットオーディエンスのエンゲージメントを高めている。Baiduはこれらの技術を使って、ターゲットオーディエンスとのインタラクションとコミュニケーションをより円滑にしているのだ」。

 

「また、Bailuは、2つのAIプラットフォームを所有している。1つはApolloと呼ばれる自動運転プラットフォームで、世界中の50社の自動車企業と提携している。自動車メーカーは車を製造し、Bailuはその技術力を提供している。今年発売予定であるBailu初の自動運転車は小型SUVで、まだ公道では走行できないが、来年には従来の標準的な車体に近い自動運転車を発売予定だ」。

 

「もう1つのプラットフォームは、洗濯機や冷蔵庫、テレビなどのスマートデバイスと通信するためのネイティブランゲージインタラクションプラットフォームだ。自然言語処理を使用しているため、例えば、ユーザーはTVに特定の映画を上映するよう指示することが可能である」。

 

更に、広告コンテンツの面では、Baiduの有料検索連動型広告サービスは、Googleが提供しているものより充実しているようだ。

 

それについて、「その通りである」とLin氏。「Baiduでは18の広告フォーマットが使用できる。サイドリンクだけでなく、ビデオや画像もあり、フィード広告、商品リスティング広告など、業種に最も適したものを使用することができる。たとえば、3画像回転式表示など、モバイル固有のフォーマットもある」。

 

実際のところ、Lin氏の今回のロンドン訪問の重要な目的は、中国における広告出稿を検討しているヨーロッパブランドに対し、Bailuの認知度を高めることであった。本対談前にLin氏は、Baiduの代理店であるForward3Dと提携し、ヨーロッパのブランドや広告代理店に対し、同社の広告商品を紹介するイベントを主催していた。

 

AIについてはこのくらいにして、Baiduのもう1つの主要な企業戦略、つまりLin氏が言うところのBaiduの「モバイルファウンデーション」について尋ねた。

 

「検索エンジンの観点からは、モバイルファウンデーションは重要である」と、Lin氏。 「中国では80%の検索がモバイル端末で行われている。中国の7億7,000万人のインターネットユーザーのうち、90%がスマートフォンを使用。高齢者であってもスマートフォンを使い、誰もが中国発の無料インスタントメッセンジャーアプリWeChatを利用している」。

更に、モバイルという点で中国は欧米よりも進んでいると言えるか?という問いかけに対しては、「中国がより進んでいる」とLin氏。「巨大な人口が同じ1つの言語を話しているという点で、市場環境は異なる。財布を持ち歩く必要もない。スーパーマーケットでは買い物をせず、毎日食料品は宅配で届けてもらう。中国では便利なサービスが利用されており、誰も新聞を読まない代わりに携帯電話端末でニュースを読んでいる」。

 

「また、中国消費者の購買力は増加している。特に80〜90年代に生まれた世代の購買力の増加は目覚ましい。彼らの多くは海外で教育を受けていて、消費習慣は欧米人に類似。生活の質を重要視する傾向だ」。

「Baiduは、そういった消費者層に企業がリーチできるようサポートする必要がある。消費者の購買力が増加しているこの中国に潜在的なビジネスチャンスがあると考える企業にとって、今こそがBaiduの提供するネイティブブランディング広告を活用し、ブランド認知度を高めるタイミングだろう」と、Lin氏は加えた。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の4/5公開の記事を翻訳・補足したものです。