EC物流の巨大拠点、物流センターの延べ床面積まとめ
今や日々の生活にしっかりと浸透してきたネット通販。多くのモールやサイトやアプリが消費者の興味関心を引き、多くのユーザーがその画面を使って買い物をしている。しかし、そのネット通販を支える裏側についてどこまで想像したことがあるだろうか。実は多くのユーザーが日々画面上で行う購入というアクションを起点に、ユーザーの手元まで最短日数で商品を届けるために、大手EC事業者を中心に数多くの巨大な物流拠点が存在している。従来はヤマトや佐川、日本郵政と言った宅配事業者の物流拠点に依存していたEC事業者がここ数年、自社物流センター構築へと大きく舵を切ってきているのだ。今回はそんな巨大物流拠点にスポットをあて、主要なEC事業者の物流拠点の延べ床面積を紹介していく。
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物流センターの延べ床面積について
大手のEC事業者の物流センターはその場所と共に、延べ床面積も公表されているケースが多い。通常の物流センターでは複数階建てとなっていることから、各階の床面積を合計した「延べ床面積」が広さの基準として公表されている。単位は平方メートルのケースもあれば坪で公表されているケースも多い。
主要EC事業者の物流センターの延べ床面積
それでは、主要EC事業者の巨大物流拠点である物流センターの延べ床面積を、公開されている延べ床面積が大きい順に見ていこう。あくまで公開データのみを元に集計を行っているため、実際の正確な数値ではないことをご留意頂きたい。
Amazon Japan 738,877平方メートル(222,799坪、但し非公開の川島・狭山・大田・PrimeNow専用拠点を除く)
EC業界最大手であるAmazon Japanは、非常に多くの物流拠点を持っている。2018年1月現在で計16カ所の拠点の他に、1時間以内、または2時間以内に商品が届くAmazon Prime Now専用の拠点も6カ所保有している。
注目すべき点は、2014年3月竣工となったアマゾン小田原FC(フルフィルメントセンター)(神奈川県)に、アマゾン芳野台FC(埼玉県)、アマゾン常滑FC(愛知県)を統合させたということだ。これにより、より効率性を上げることが可能になったと推測される。また、アマゾン川崎FCでは、Amazon Roboticsという物流ロボットを導入している。日本では唯一導入しているFCであり、他のFCに比べて少ない床面積で効率的に業務をこなすことを実現している。
▲Amazon最大拠点のアマゾン小田原FC
拠点数や延べ床面積を他企業の物流拠点と比較してみると、やはり桁違いに多いことがわかる。王者Amazonを支えているものは、このような物流拠点の存在が大きいのだろう。
<参考>
ヨドバシカメラ 384,967平方メートル(116,453坪)
大手家電量販店である株式会社ヨドバシカメラのECサイト、ヨドバシ.comは現時点で計2カ所の物流拠点を持っている。特に川崎のアッセンブリーセンターは2015年に増床するなど、拠点数は少ないがそれぞれが広大な敷地を持っている。ヨドバシカメラがEC物流拠点を他社よりもしっかり拡充している背景には、他の家電量販店に比べECサイトでの売上が極端に大きいことが影響している。これは、業界内でも早い段階からリアル店舗とECサイトのオムニチャネル化に力を入れた結果だと言えるだろう。また、大型家電を取り扱うということもあって、2カ所の拠点のみではあるが延べ床面積は上位にランクインしている。
ZOZOTOWN 320,000平方メートル(96,800坪)
大手ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する、株式会社スタートトゥデイの物流拠点は、「ZOZOBASE」と呼ばれ、現在大幅な工事が行われている。2017年6月の発表では、新たに約128,000平方メートルを賃借し、2018年秋には合計約250,000平方メートルになるという。そのわずか半年後、2017年12月の発表では、また新たに約71,000平方メートルを賃借、2019年秋には合計約320,000平方メートルになるとのことだ。上り調子のZOZOTOWNだけあって、物流拠点もより大きなものが必要となってきたのだろう。
▲2017年12月に発表された2019年秋のZOZOBASE完成予想図
<参考>
ZOZOBASEを拡張し、2018年秋までに合計約250,000平方メートルに
LOHACO 250,700平方メートル(75,837坪)
オフィス向けECを展開するASKUL、さらにはヤフーと共同運営する個人向けECサービスであるLOHACOは、今月(2018年2月)全面稼働したASKUL Value Center関西も含めて現時点で2カ所の拠点を持っている。
ASKUL Value Center日高はLOHACO専用の物流拠点である。LOHACO、ASKUL共に利用されていたASKUL Logi PARK首都圏が、2017年2月の火災により利用を停止。同役割を、2018年2月の全面稼働予定のASKUL Value Center関西が担う。巨大な物流拠点では、火災によりECサイトでの受注自体に影響を及ぼすケースも出てくるため、このような火災や天災にも対応するために複数拠点を場所を話して確保する必要性も出てくる。
▲2018年2月に全面稼働したASKUL Value Center関西
<参考>
アスクル最大の物流拠点が関西に完成、2018年2月に稼働予定
アスクル倉庫の資産価値は火災前で121億円、実質損失額は78億円か
ニトリ 157,000平方メートル(47,576坪)
大手ホームセンター、ニトリは、現在9拠点の物流センターを保有しているが、2020年夏の竣工を目指し首都圏最大拠点となる10拠点目、幸手物流センターの構築を予定している。他の物流センターの数値が非公開のため、上記の数字はその新設される幸手物流センターのものとなる。
▲2020年夏竣工予定の幸手DC
非公開の9拠点の延べ床面積を合計すると、Amazonに次ぐ規模になると推測されるニトリだが、取り扱い商材が大きいものが多いため、物流拠点の拡充は業績に直結する重要なテーマとなっている。
楽天 154,403平方メートル(46,706坪)
楽天株式会社が運営する楽天市場は現時点で計3カ所の物流拠点を持っている。
物流のアウトソーシング(外部委託)サービスである楽天スーパーロジスティクス(RSL)と、日用品や消耗品を一括購入できるサービスである楽天24を主に取り扱っていたRFC(楽天フルフィルメントセンター)柏を2014年2月に解除し、関東は市川、関西は川西に集約した。
日本の大手2大モールであるAmazonと楽天を比較すると、楽天の延べ床面積はAmazonよりも公開データだけを見ても5分の1程度、実際は10分の1程度とみられる。Amazonは日本だけでなく多くの国でWebサイトなどのユーザーインターフェースだけでなく物流拠点もしっかり整備する戦略を取っており、日本においても既に上述のように国内最大規模となっている。楽天も2014年に物流拠点の見直しを図ったが対応が後手に回っている印象は否めない。
ベルメゾンネット 132,879平方メートル(40,196坪)
カタログ通販大手である株式会社千趣会の運営する、ベルメゾンのECサイトである「ベルメゾンネット」は、現時点で計2カ所の拠点を持っている。
これまで千趣ロジスコ可児DC(ディストリビューションセンター)のみ自社運営で、それ以外は複数の外部倉庫を利用していた。しかし、もう1拠点、美濃加茂DCを2015年12月に自社運営し集結させることで、より効率的な業務を実現している。
▲2015年12月にオープンした美濃加茂DC
ユニクロ 112,403平方メートル(34,002坪)
ファストファッションを中心に事業展開する、株式会社ファーストリテイリングのユニクロは、現時点で計1カ所の拠点を持っている。
2016年4月に有明に次世代物流センターが竣工し、同年10月には今後国内10カ所に同様の物流拠点を作ることを明らかにしていたが、現在も有明の1カ所のみでの運営となっている。有明の物流拠点を中心に改革が行われたため、混乱が起き、他拠点運営の計画が暗礁に乗り上げていると見る向きもあるが詳細は定かではない。
ショップチャンネル 56,000平方メートル(16,970坪)
ジュピターショップチャンネル株式会社の運営する、TVショッピングサイトである「ショップチャンネル」は、現時点で計1カ所の物流拠点を持っている。この物流拠点はネット通販向けと言うよりはTV通販の注文に対応する目的が大きいと思われる。
ディノス 52,804平方メートル(15,973坪)
千趣会と同じくカタログ通販大手である株式会社ディノス・セシールの運営する、「ディノス」では、現時点で計4カ所の物流拠点を持っている。上記の延べ床面積はその中の公開されているディノスロジスティクスセンター東京の数値のみとなる。それまで関東5カ所に点在していた物流拠点を、このディノステクノロジーセンター東京の1カ所に統合することで、よりスムーズな物流を達成した。
オムニ7 50,312平方メートル(15,246坪)
株式会社セブン&アイ・ホールディングスの運営する、セブン&アイ総合通販サイトである「オムニ7」は、現時点で計1カ所の物流拠点を持っている。
オムニ7は、その名の通りセブン・イレブンのオムニチャネル化を図ったものであり、自宅宅配か店頭受け取りかを選べるという点や、無料で返品できる点などが顧客に受けている。それらを可能にするため、ネット専用拠点である久喜センターを2013年に稼働させている。
SHOPLIST 45,348平方メートル(13,718坪)
クルーズ株式会社の運営する、ファストファッション通販の「SHOPLIST.com by CROOZ」は、初めての物流拠点を2018年12月に稼働予定。上述の延べ床面積も2018年12月でのものだ。
事業拡大に伴い、大規模の物流拠点が必要となったという。今後のSHOPLISTの活躍に期待が高まるものとなっている。
▲2018年12月に稼働を予定するSHOPLIST待望の初の物流拠点
<参考>
ショップジャパン 26,400平方メートル(8,000坪)
株式会社オークローンマーケティングが運営するTVショッピングサイトである「ショップジャパン」は、現時点で計1カ所の物流拠点を持っている。この物流拠点はショップチャンネル同様に、ネット通販向けと言うよりはTV通販の注文に対応する目的が大きいと思われる。
ケンコーコム 9,831平方メートル(2,974坪)
楽天株式会社の子会社と、株式会社爽快ドラッグの合併によりできたRacten Direct株式会社。そのRcten Direct株式会社が運営する、医薬品など健康関連商品を取り扱うECサイト「ケンコーコム」は、現時点で計2カ所の拠点を持っている。ただし2011年に稼働した市川物流センターの延べ床面積は非公開となっているため、上記の数字は福岡物流センターだけのもの。
その福岡物流センターでは、主にケンコーコムの商品を扱っている。それに対し、市川物流センターは、そもそも市川にある楽天のFC内に存在し、売れ筋商品だけを取り扱っているようだ。
その他の主要EC事業者
ここまで紹介した物流センターは延べ床面積が公開されているものだ。それ以外にも、マガシークが運営する物流拠点「magaco」や、TV通販のジャパネットたかたは2拠点を運営するなど、多くのEC事業者が独自の物流センターの運営を行っている。
リアルからのシフト・拡大を続ける主要EC事業者の巨大物流拠点
ここで紹介した事業者を中心に、EC事業の拡大に伴い、多くの物流拠点が新設・拡充されてきている。Amazonや楽天などのネット専業企業を除くと、EC事業者の物流拠点には、ネット専用のものとリアル店舗の兼用のものがある。ここ数年で目立っている流れとしては、リアル店舗との兼用からネット専用拠点へと物流拠点の使い方をシフトしているケースが多いようだ。ネット専用の拠点にすることで、専用の機械の導入などを含め、より効率的な運用を行うことが出来ることが考えられる。
また、多くの企業が、点在していた拠点をまとめて巨大な拠点へと集約している。集約することで、人件費や光熱費の削減も可能だ。ただ、アスクルで昨年発生した火災のようなリスクや天災への対応は複数拠点を持っている方が柔軟に対応することが出来るため、各社ともそのバランスを考慮しながらの展開を行っている。
ここで紹介した非常に桁の大きな数字を目にすると、オンラインで気軽に「ポチッ」とし、商品が手元に届くという「安心感」の裏側で、これほどまでに巨大な施設が稼働しているという事実を改めて実感することができる。今後もビッグデータやAIなどの最新技術を駆使した巨大物流センターが私たちのECサイトでのショッピングを支えてくれていることを忘れないようにしていきたい。