【2023年最新版】EC物流の巨大拠点、物流センターの延べ床面積まとめ

 

コロナ禍の巣ごもり需要に後押しされ、日々の生活にしっかりと根付いたネット通販。モールやサイト、アプリなどを通じて消費者が買い物をするその裏側で、購入者の手元に最短日数で商品を届けるための物流に関する取り組みが日々行われている。ヤマトや佐川、日本郵政など宅配事業者の物流拠点に依存していたEC事業者が自社物流センターの構築へと大きく舵を切るようになって数年、自社物流センターは今もその数をさらに拡大している。2021年の調査に続き3回目となる本記事では、そのような巨大物流拠点にスポットをあて、主要な16のEC事業者の全108の物流拠点の延べ床面積を紹介していく。

 

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2021年版 物流センターの延べ床面積まとめ:主要15のEC事業者、全84の物流拠点

【2021年最新版】EC物流の巨大拠点、物流センターの延べ床面積まとめ
ヤマトや佐川、日本郵政など宅配事業者の物流拠点に依存していたEC事業者が自社物流センターの構築へと大きく舵を切るようになって数年、自社物流センターは今もその数をさらに拡大している。そのような巨大物流拠点にスポットをあて、主要な15のEC事業者の全84の物...

 

 

 

物流センターの延べ床面積について

 

大手のEC事業者の物流センターはその場所と共に、延べ床面積も公表されているケースが多い。通常の物流センターでは複数階建てとなっていることから、各階の床面積を合計した「延べ床面積」が広さの基準として公表されている。単位は平方メートルのケースもあれば坪で公表されているケースも多い。

 

 

物流センターの近年の動向

 

かつての物流センターは企業ごとに店舗・EC・TV通販などの販売チャネルごとに在庫を管理し運用されることが多かった。しかしながら、販売ロスに繋がる管理手法であったことや、コロナ禍によるネット通販による購入の需要の拡大や、販売チャネル毎の売上の偏りなどが多くなり、現在の物流センターは店舗の在庫とオンラインをまとめて管理する拠点として、又はECに特化した拠点を新設するなど、各企業がECでの販売経路を含めた在庫管理の効率化を図る傾向が見られる。

 

 

主要EC事業者の物流センター延べ床面積

 

それでは、主要EC事業者の巨大物流拠点である物流センターの延べ床面積を、公開されている延べ床面積が大きい順に見ていこう。あくまで公開データのみを元に集計を行っているため、実際の正確な数値ではないことをご留意頂きたい。

 

Amazon Japan 1,680,022平方メートル(421,369坪、但し非公開の川島・狭山・アーバンFC拠点・情報未公開の狭山広瀬台・千葉みなとを除く)

EC業界最大手である「Amazon Japan」は、非常に多くの物流拠点を持っている。2023年5月時点で計28カ所の代表的な拠点を持つほか、2021年3月末にサービスを終了したAmazon Prime Nowの専用倉庫として用いられていたアーバンFC(フルフィルメントセンター)拠点も三鷹を除く5カ所を引き続き保有している。

アマゾンは以前、川崎FCにAmazon Roboticsという物流ロボットを導入することで少ない床面積での業務効率化を実現したが、2019年3月に竣工した茨木FC以降、2020年に竣工した坂戸FCと上尾FC、2021年に竣工した青梅FC・流山FC・印西FC、2022年に竣工した尼崎FCと相模原FCなど新たな物流センターには必ずと言って良いほどAmazon Roboticsを導入しており、さらなる業務効率化を図っているようだ。今後さらに物流拠点が増加することがあれば、Amazon Roboticsが導入されることは間違いないと言えるだろう。

拠点数や延べ床面積を他企業の物流拠点と比較してみると、依然として桁違いに多いことがわかる。王者Amazonを支えているものは、このような物流拠点の存在が大きいのだろう。

 

ニトリ 908,420平方メートル(274,797坪、但し非公開の五霞・所沢・三郷・横浜・大阪南・九州・尼崎を除く)

大手ホームセンターの「ニトリ」を運営するニトリホールディングスは、ニトリから分社化したホームロジに13カ所の拠点を持っている。以前は延べ床面積非公開の拠点が多かったが、2022年以降竣工の施設については情報公開がなされている。

現在ニトリでは国内物流拠点の再構築を進めており、統合報告書2022において、全国を北海道、東北、北関東、南関東、中部、近畿、中国四国、九州の8つのゾーンに分け、約3,500億円を投じ2025年までに2.5~12万坪規模の自社物流センターを8カ所に新設する予定であることを発表した。その一環として、76,786平方メートルの石狩DCを2022年8月、81,354平方メートルの神戸DCを2022年11月に新設した。今後東海・北陸エリアを広くカバーする名古屋DCや幸手DCが新設される予定だ。

▲2024年8月竣工の仙台DCイメージ図

 

非公開の5拠点があるものの、他企業と大きく差をつけAmazonに次ぐ規模の物流センターを持つニトリ。大きなサイズの商材が多いため、物流拠点の拡充は業績に直結する重要なテーマであり、自社物流センターに対する本格的な取り組みが見て取れる。コロナ禍におけるインテリアのオンライン購入の需要が以前の調査からさらに増加した物流センターの数に影響しているのではないか。

 

楽天 792,735平方メートル(239,802坪)

楽天グループ株式会社が運営する「楽天市場」は、現時点で計15カ所の物流拠点を持っている。

2018年時点では事業規模の大きさに対して物流拠点が少なく、対応が後手に回っている印象のあった楽天だが、2019年から一転攻勢し、わずか4年で11カ所もの物流拠点を新設した。例えばAmazonは、世界的に見てもWebサイトなどのユーザーインターフェースだけでなく物流拠点もしっかり整備する戦略を取っており、日本においても上述のように国内最大規模となっているが、やや遅れを取ったものの楽天もそれに追従する形となった。特にこの2年間で新たに4カ所もの物流拠点が新設されていることから、今後の伸びにも期待が寄せられる。

 

ZOZOTOWN 579,300平方メートル(175,238坪)

大手ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOの物流拠点は「ZOZOBASE」と呼ばれる。

2017年12月の発表によると、2019年秋にZOZOBASEつくば1の2棟目となる71,000平方メートルの大型物流施設を賃借しており、2017年6月に契約を開示していた1棟目と合わせて141,000平方メートルになるという。さらに2019年6月の記事によると、2020年2月には新たに72,000平方メートルを貸借、同年10月には110,800平方メートルを貸借したとのことだ。また、2020年以来物流拠点の増加は見られなかったが、3年ぶりとなる今年2023年の1月に「ZOZOBASEつくば3」が新設された。

かなりのペースで物流拠点を増やしているZOZOTOWNだが、近年の急成長を考えると妥当ともいえる。

▲2023年1月竣工のZOZOBASEつくば3イメージ図

 

LOHACO 542,452平方メートル(164,092坪)

オフィス向けECを展開する「ASKUL」、さらにはヤフーと共同運営している個人向けECサービスの「LOHACO」は、2018年2月に全面稼働したASKUL Value Center関西を最大拠点として現時点で9カ所の拠点を持っている。

2017年2月、LOHACOとASKULが利用していたASKUL Logi PARK首都圏が火災で稼働を停止するトラブルがあった。巨大な物流拠点ではリスクヘッジのために複数の拠点を離して確保する必要性が出てくるが、業務効率化のために拠点を集約する流れもあり、この点に関しては慎重な決定が求められる。2018年8月の記事によると、アスクルは再発防止のために消防設備の稼働確認や増強、初動対応のマニュアル化、大規模消防演習などを行い、安全の確保に努めているという。

 

ヨドバシカメラ 411,927平方メートル(124,608坪、但し非公開の桑名を除く)

大手家電量販店である株式会社ヨドバシカメラのECサイト「ヨドバシ.com」は、現時点で計3カ所の物流拠点を持っている。特に川崎のアッセンブリーセンターは2015年の増床以降も継続して施設の拡大が行われており、2024年の9月には既存施設と合わせて311,927㎡となる。拠点数は少ないがそれぞれが広大な敷地を持つことが特徴だ。ヨドバシカメラは他の家電量販店と比べEC物流拠点の拡充に力を入れているが、大手EC事業者がこれまで非公開だった物流拠点の情報を一部公開、又は相次いで新設したことから、前回より順位が下がっている。

記事によると、ヨドバシカメラは2013年3月に物流センターを桑名に新設する予定であった。しかし後の記事によると、建設予定地の地盤に問題が発見されたことから2015年に計画を一度撤回。その後しばらくしてアッセンブリーセンター桑名を稼働開始したものの、詳細は公開されておらず、延べ床面積などは不明である。

 

ベルメゾンネット 132,879平方メートル(40,196坪)

カタログ通販大手の株式会社千趣会が運営するベルメゾンのECサイト「ベルメゾンネット」は、現時点で計2カ所の拠点を持っている。2021年の調査時から拠点数こそ増えていないものの、2022年8月の記事によれば、2020年の1月からは自社のノウハウを活かして外部の物流委託にも対応する3PL事業も行っているという。また、2021年9月の記事にもあるように、新技術の導入や機械による自動化など、既存の2拠点を用いて高度な物流の実現に取り組んでいるようだ。

 

ユニクロ 112,403平方メートル(34,002坪)

ファストファッションを中心に事業展開する、株式会社ファーストリテイリングの「ユニクロ」は、現時点で有明と西日本の計2カ所拠点を持っている。

記事によると、まだユニクロが物流業務を外部に依存していた2015年、同社の物流現場が大混乱し、大幅に発送が遅れるなどのトラブルがあった。その失敗から有明に自社物流センターを新設したユニクロは、マテリアルハンドリングのトップ企業であるダイフクと協業し、物流倉庫の全自動化に取り組むようになった。さらに別の記事によると、2020年秋から有明倉庫を上回る規模の西日本倉庫を稼働させており、こちらも引き続き自動化倉庫として運用していくという。なお、この西日本倉庫ではユニクロの他にGUやセオリーブランドも扱っているようだ。

 

ビックカメラ 112,000平方メートル(33,880坪)

株式大手家電量販店である株式会社ビックカメラのECサイト「ビックカメラ.com」は現時点で9カ所の物流拠点を持っている。2018年10月に新設された船橋センター・大阪センター以外の7拠点に関する情報は公開されていないが、2拠点の合計は112,000平方メートルとなっている。なお、大阪センターは記事によるとさらなるネット通販の需要拡大、及び西日本エリアでの配送時間短縮のため新設された、EC物流に特化した拠点とみられる。船橋センターは店舗向け物流拠点とEC物流拠点の両方を担っているが、記事によると2020年8月から中国GeekplusTechnology社のロボットを導入し、業務効率化にも取り組んでいるようだ。

 

ショップチャンネル 95,000平方メートル(28,738坪)

ジュピターショップチャンネル株式会社の運営するTVショッピングサイト「ショップチャンネル」の物流拠点は現時点で南船橋物流センターの1カ所のみである。ショップチャンネルの物流拠点は、ネット通販向けと言うよりはTV通販の注文に対応する目的が大きいと思われる。

以前は基幹拠点である茜浜物流センターに加え、情報が公開されていない4拠点の計5拠点が存在していた。しかし、記事によると2022年4月以降、取扱商品数や出荷数の増加への対応、分散している拠点の集約を目的として、定点ピッキングシステムなどの導入により自動化を推進した南船橋物流センターに移転する形になったようである。また、この南船橋物流センターは以前稼働していた5拠点の延べ床面積93,000平方メートルを上回る広さである。

 

ディノス 52,804平方メートル(15,973坪)

千趣会と同じくカタログ通販大手である株式会社ディノスコーポレーションの運営する「ディノス」は、現時点で1カ所の物流拠点を持っている。公式サイトによると、2021年にセシール事業を譲渡しディノス・セシールからディノスコーポレーションに商号を変更しているが、自社物流センターであるディノスロジスティクスセンター東京に特に大きな影響はないようだ。

 

SHOPLIST 45,348平方メートル(13,718坪)

クルーズ株式会社の運営するファストファッション通販「SHOPLIST.com by CROOZ」は、初めての物流拠点を2018年12月に稼働している。SHOPLISTの事業拡大に伴い、大規模の物流拠点が必要となったという。上述の延べ床面積も2018年12月時点のものだが、その後の増床などもみられないため、当時の状態を維持しているものと思われる。

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▲2018年12月に稼働を開始したSHOPLIST待望の初の物流拠点

 

イトーヨーカドー 36,456平方メートル(11,028坪)

株式会社セブン&アイ・ホールディングスのグループ企業である株式会社イトーヨーカ堂が運営するネット通販サイト「イトーヨーカドーネット通販」は、2カ所の物流拠点を持っている。なお、2024年稼働予定の流山センターに関する情報は現時点で公開されていない。投資家向けニュースによると、新横浜センター・流山センターの2拠点で首都圏の配送をほぼカバーし、ラストワンマイル強化につとめるという。

また、記事によると同じく株式会社セブン&アイ・ホールディングスによって運営されていた総合通販サイト「オムニ7」は業績不振により2023年2月をもってサービスの提供を終了している。

 

ショップジャパン 26,400平方メートル(8,000坪)

株式会社オークローンマーケティングが運営するTVショッピングサイトである「ショップジャパン」は、現時点で計2カ所の物流拠点を持っている。この物流拠点もショップチャンネル同様に、ネット通販向けと言うよりはTV通販の注文に対応する目的が大きいと思われる。

ショップジャパンはもともと千葉に物流拠点を1カ所持っていたが、記事によると2019年に西日本向けの拠点を新設している。これにより東西2拠点での柔軟な運用が可能になり、コロナ禍の巣ごもり需要にも対応できたという。西日本の物流拠点は詳細非公開のため、上述の床延べ面積は千葉ロジスティクスセンターのみのものである。

 

その他の主要EC事業者

ここまで紹介した物流センターは延べ床面積が公開されているものだ。上記以外にも、マガシーク株式会社が運営するレディースファッション通販「MAGASEEK」は自社で扱う商品を一括で集約する物流拠点magacoをはじめとして現時点で計3拠点を持ち、株式会社ジャパネットホールディングスが運営するTV通販の「ジャパネットたかた」は延べ面積は非公開だが計4拠点を運営するなど、多くのEC事業者が独自の物流センターの運営を行っている。

 

 

拡大とともに自動化が進む主要EC事業者の巨大物流拠点

 

依然として大規模物流拠点の新設は続いている。物流・宅配事業者の慢性的な人手不足、そして宅配までのリードタイム削減のために大手のEC事業者は自社物流拠点を構築することが必至となる。このことは以前の調査から格段に増えた物流拠点の数からもうかがえるが、今後さらに加速していくと思われる。また、業務・投資効率化の観点から、点在していた拠点を1カ所に集約させる企業も多い。特に今回の調査では以前運用していた拠点を新設した拠点に移転する形が多く見られた。しかし、1カ所に集約することはトラブルが起きた場合のリスクを抱えることにもなり得るため、アスクルのように防災対策をしっかりと実施することが必要だ。

また、Amazonやユニクロのように物流倉庫の自動化に取り組み、更なる効率化を目指す企業や、ビックカメラのようにEC物流に特化した拠点を新設する企業も今後増加していくと考えられる。このように、多くの消費者が気軽に「購入」をクリックする裏側で、巨大な物流施設が休まず稼働している事実を垣間見ることができる。物流センターが私達のネットショッピングを支えていることを忘れず、自動化倉庫をはじめとして物流に関わる新技術の開発・発展に期待したい。