2017年10月20日、電子決済サービスPaypalは、Facebook Messengerで友人や家族間の送金が簡単に行える個人間送金サービスを開始すると発表した。またPayPalは、Messengerユーザーに対し、アプリ内で送金やアカウントについてのサポートを行う初のカスタマーサービス用ボットも公表。

 

PaypalのCOO、 Bill Ready氏によると、昨年2016年に締結したFacebookとの契約により米国内の250万人のPayPalユーザーのアカウントをMessengerのそれにリンクしたという。Messenger内でのPayPalを使用した買い物、また他のPayPalユーザーとコミュニケーションすることが可能になった。

PayPalは、P2P(ネットワーク上でコンピュータ同士を接続する際に、個々のコンピュータが対等な関係で接続しあう形態。Peer to Peer(ピア・ツー・ピア))決済の第一人者であり、その決済総額は2017年の第3四半期には240億ドルに。前年同期比47%増を記録した、とBill Ready氏は語る。

「PayPalアカウントをFacebook Messengerにリンクさせている250万人のユーザーは、Messengerで、PayPalとコミュニケーションをとりたいと考えている」と話すPayPalの広報担当Juliet Niczewicz氏。

さらに、「新しいMessenger用PayPalボットによって、有意義なカスタマーサービスを提供し、ユーザーと交流することが可能になる。ボットが、パスワードのリセット、アカウント照会対応、払い戻しや送金処理など、状況に応じてユーザーをサポートできるようになるだろう」と、同氏は語った。

Niczewicz氏は、PayPaが既にAppleのSiriでの音声コマンドによる決済サービスを提供していることにも言及。また、Microsoftと提携し、Skypeチャット機能を使用した送金サービスも開始している。

2017年に入りPayPalは、社内コミュニケーションツールSlack用ボットの提供を開始。Slackでの会話中の送金も可能になったという。

Messengerでの送金は、メッセージの作成の際に青色のプラスアイコンを押し、緑色の送金ボタンをタップして行う。

ボット使用には、検索フィールドでPayPalを検索。PayPalへのメッセージを入力するとMessengerアプリ内にボットが表示される。 さらなるヘルプを必要とするユーザーは、PayPalのライブカスタマーサービスを選択することができる。

 

Messengerの拡張

Facebookの広報担当Jennifer Hakes氏によると、2年以上前からMessengerには送金機能があった。送金機能を使用するには、米銀行が発行したVisaまたはMastercardのデビットカード番号をMessengerに入力する必要があり、セキュリティを強化するために暗証番号照合を追加するオプションもあった。

「Facebookは幅広いコンシューマーテクノロジープラットフォームを作り、Messengerを通じてサービスを提供することで、ユーザーを封じ込める戦略だ」と、分析会社IHS Markitのオペレーター&モバイルメディア担当責任者Jack Kent氏は指摘した。

「Messengerをコマースや取引のプラットフォームとして活用することは、プラットフォームの収益化を促進するというFacebookの将来的野望に合致している。決済と広告を近づけることで、アプリ内の広告やプロモーションの価値を高めることが可能だ」と、同氏は語る。

チャットボットは、ユーザーの再注文、ギフトカードの送付、請求の支払いなどの簡単な取引をサポートすると調査会社Constellation Researchのプリンシパルアナリスト、Cindy Zhou氏。同氏によると、中国のWeChatのようにメッセージングアプリ内のコマースを促進することは、アジアでは一般的な戦略であるという。

米国でも、対抗するソーシャルメディアプラットフォームがアプリ内コマース機能を追加することが浸透し始めていると、Zhou氏は付け加えた。例えば、Pinterestのbuyable pins(お買い物ピン)機能や、Instagramのショップ機能である。

リサーチ会社RSR Researchのマネージングパートナー、Paula Rosenblum氏は、「取引を自動化することに関心が高まっているように見える一方で、ユーザーは人間のカスタマーサービス担当者ではなくインテリジェントなボットと対話しなければならないことに反発する可能性がある」と指摘した。

「ユーザーは、サポートしている国や製品について何も理解していない、アウトソーシングのマニュアル化されたカスタマーサービス担当者に問い合わせたいと思うだろうか?そんなはずはない」と、同氏は語る。

彼女の経験に基づくと、ソーシャルメディア上で酷評されることが、最高のカスタマーサービスの提供につながるということがよく起きるという。

「そうでなければ、私自身がマニュアル化されたカスタマーサービス担当者の1人で終わっていたはずだ。そう思うと、気が狂いそうだ」と、Rosenblum氏は語った。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/20公開の記事を翻訳・補足したものです。