米国企業SASの最新の調査では、マーケティング部門が生成AIの企業導入を主導しており、ROIが急上昇しているが、ガバナンスの整備はまだ遅れていることが判明した。


米国企業SASの最新の調査では、マーケティング部門が生成AIの企業導入を主導しており、ROIが急上昇しているが、ガバナンスの整備はまだ遅れていることが判明した。

米国に本社を置き、分析ソフトウェアおよびソリューションを提供するSASの最新のレポートによると、マーケティング部門は、今なお生成AI導入とROI(投資利益率)の実証において企業をリードしており、この1年で著しい成果をあげている。

2024年の調査では、マーケターの46%が「生成AIによるROIの実証が最大の障害である」と回答したが、2025年は世界中のCMO(最高マーケティング責任者)の93%とマーケティングチームの83%が「測定可能なROIを確認できた」と報告している。より深い技術的理解を持つエージェント型AIを導入している企業では、ROIが98%に達している。報告されているメリットには、パーソナライゼーションの向上(94%)、データ処理の高速化(91%)、時間とコストの削減(90%)、顧客ロイヤリティと売上の増加などが含まれる。

この1年で生成AIの導入が進み、マーケターは生成AIへの習熟度を高め、スキルを向上させている。

SASのレポート「マーケターとAI:新たな深淵への航路(Marketers and AI: Navigating New Depths)」によれば、2025年時点でマーケティングチームの85%が生成AIを導入しており、2024年の75%から増加している。

 

実験から日常へ

生成AIの業務への完全な統合も進み、ワークフローに生成AIを組み込んだチームは、前年同期のわずか10%から15%へと増加した。同時に、まだ「計画」段階にとどまるチームの割合は22%から13%に減少し、生成AIが実験段階から実践へいかに迅速に移行したかを浮き彫りにしている。

2025年には生成AIへの信頼が急激に高まり、マーケターの62%が「生成AI技術についてよく理解している」と回答、2024年の50%から大幅に上昇した。マーケターの90%以上が、ビジネスへの影響を認識している。

2024年から2025年にかけて、次のような主要な活動領域で生成AIの導入が進んだ。

  • チャットボットや顧客対応:43% → 62%
  • テキストおよびコピー生成:34% → 45%
  • 画像生成:27% → 36%
  • トレンド分析:23% → 34%
  • オーディエンスのターゲティング:19% → 29%
  • カスタマージャーニーの図式化:16% → 22%

他の分野でも進展が見られるものの、ガバナンスの枠組みはまだ十分に整っていない。2024年には、「包括的な生成AIガバナンスモデルを備えている」と回答した組織はわずか7%に留まったが、2025年も8%とあまり変化はない。透明性、説明責任、トレーニングの欠如が依然として障壁となっている。

2025年の最も重要な変化は、マーケターに代わって自律的に行動できるシステムであるエージェント型AIの出現だ。すでに21%のチームが実稼働環境でエージェント型AIのテストを実施しており、約4分の3のチームが今後2年以内に導入を予定している。経験豊富な生成AI導入企業が、より高度な機能を支えるために必要なデータ基盤とガバナンス基盤を構築し、この変革を主導している。

 

調査方法

SASの「マーケターとAI:新たな深淵への航路」2025年版レポートは、2025年6月から7月にかけてColeman Parkes Research(英国のグローバル市場調査会社)が実施した世界規模の調査に基づいている。本調査は、銀行、保険、公共部門、ライフサイエンス、ヘルスケア、通信、製造、小売、エネルギーおよび公益事業、専門サービスなど、さまざまな業界のマーケティング意思決定者300名を対象に行われた。回答者は中小企業から従業員1万人以上の大企業まで幅広く、マーケティングディレクター、デジタルマーケティングディレクター、マーケティング担当副社長などの上級役職に就いている。

回答者の地域別の内訳は、南北アメリカから99名、欧州、中東、アフリカ地域から160名、アジア太平洋地域から41名だった。重要なのは、2025年の調査が2024年に実施された300名のマーケターを対象とした調査を基盤としており、マーケティング分野でのAIに対する姿勢と導入状況を年単位で縦断的に比較・分析できる点である。共通する一貫した調査方法は、世界中のAI駆動型マーケティング戦略における新たな傾向を追跡するための明確な基盤となっている。

調査レポートはこちらで閲覧できる。


※当記事は米国メディア「MarTech」の9/17公開の記事を翻訳・補足したものです。