越境EC関連データ総まとめ17選(2025年版)

 

コロナ禍を経て、一時的に成長は減速したものの、再び勢いを取り戻してきている越境EC。経済産業省の推計によると、世界の越境EC市場規模は、2021年から2030年までの期間に年平均26.2%の増加が見込まれている非常にポテンシャルの大きな市場と言える。

越境ECとは、その名の通り消費者が国境を越えて海外のサイトから商品を買うことの総称を指すが、サイトの多言語化や決済方法のボーダレス化などが進み、多くのユーザーが利用を進めており、その利用のハードルは年々下がってきている。その結果、越境EC市場のなかでも特に日本市場は世界各国から非常に人気が高く、中国が日本商品を購入する金額は年2.4兆円を超え、日本が中国商品を購入する金額の55倍となっている。

そのような市場環境の越境ECだが、各所において公表されている市場規模、消費動向、中国越境EC市場、意識調査の調査データをまとめて紹介していく。

 

 

市場規模・売上高データ5選

 

各国の越境EC市場規模データや、市場の動向・実態、成長予測など、越境EC市場に関する様々なデータが発表されている。

 

経済産業省

経済産業省は、年1回電子商取引に関する市場調査(最新版2024/9/25公開)を発表している。

経済産業省によるEC市場の調査は、1998年から毎年行われており、日本をはじめ米国や中国を中心としたEC市場規模や越境EC動向などについて、広くとりまとめている。

最新の2024年度版の調査では、日本人がBtoC越境ECにおいて米国・中国から購入する総市場規模は4,208億円であった。逆に米国・中国がBtoC越境ECで日本から購入する総市場規模は3兆9,099億円と9倍以上も多くなっている。そのうち中国が2兆4,301億円、米国が1兆4,798億円となっており、中国からの購入が特に大きいことが分かる。

また、同レポートでは2027年までの越境EC市場規模予測や今後のトレンドについても触れられている。

 

ジェトロ(日本貿易振興機構)

EC市場に関して様々な調査を行なっているジェトロ(日本貿易振興機構)が公開したレポート(2025/2/4公開)では、日本企業向けに実施した調査をもとに、ECの利用状況や海外販路拡大に関する現状の報告や今後の予測を行っている。新政権への移行という時期にあっても市場や投資先において米国の存在感が増していることや、地政学リスクの高まりから中国ビジネスに対する意欲の回復は見られないものの、縮小・撤退を検討する企業が非常に少ない現状などについて言及している。さらに別のレポートでは、世界的に越境EC利用者が拡大していることが明らかにされている。

 

Shopee

Shopeeの公開した越境EC市場規模。米国・中国・東南アジアを解説(2023/3/30公開)では、2025年までの越境EC市場規模の予測についてまとめられている。記事によると、規模・若年層割合・デジタルブームの3つの点から今後のEC市場の成長には東南アジアが必要不可欠な場であるとのことだ。

 

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の発表した越境ECに関するアンケート調査結果[※PDFへの直接リンクとなります]では、2021年の7月~8月にかけて行われたアンケート調査を元に、中小企業における越境ECの売上や課題を明らかにしている。

特に、売上状況分析の有無や広告・宣伝の有無に関する調査結果から、これらを積極的に行うことが越境ECを軌道にのせるための重要な取り組みの1つと述べている。さらに、コロナ禍でマイナスの影響をうけたと回答した企業も多いものの、徐々に回復の兆しが見られることから、今後も越境EC市場が伸長すると予想している。

さらに別のレポートでは、越境ECを含む世界各国のEC市場について記載されている。

 

セカイコネクト

STUDIOセカイコネクトでは小売調査レポート[※閲覧には登録が必要]が公開されている。このレポートでは、東南アジア各国を対象として、百貨店や美容専門店など項目別に売り場の詳細や店舗数などを公開している。また、対象となる国と日本の市場を比較している点から、今後海外展開を視野に入れる企業や、海外事業に従事しており情報収集をしたい場合に便利なサイトである。

 

 

消費動向データ7選

 

越境EC市場が拡大している中で、どのような商品が売れているのかなど、消費者の動向についてまとめたデータが発表されている。

 

トランスコスモス

トランスコスモス株式会社世界8都市オンラインショッピング利用動向調査2025(2025/4/7)を発表している。

このレポートでは東京を含む8都市における越境ECやソーシャルコマース、新しいテクノロジーへの関心などを分析しており、特に上海とムンバイでは没入型やAIを活用したショッピングへの関心が東京よりも高いことが明らかにされている。

 

eBay

企業の越境EC展開を支援するeBay Japanは、2025年第1四半期越境ECレポート(2025/5/20公開)を公開している。

このレポートでは、eBayの日本のセラーから出品されたアイテムの販売動向から、注目の商材や今後の予測などをまとめている。四半期ごとに公開されるため、直近の売れ筋商品に関する情報収集に役立つ。現在では、レディースアパレルや時計、トレーディングカードの取引が活発であることが記載されている。

 

ZenGroup

越境ECをトータルで支援するZenGroup株式会社は、海外市場で日本の商品の需要が高まっている状況を受けて、海外ユーザーの購入データをもとに消費者の購買行動やニーズに関する調査を実施。そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2024/11/7公開)している。

 

メルカリ

株式会社メルカリは、フリマアプリの「メルカリ」における越境ECのトレンドや傾向を調査している。取引金額や売れている商品カテゴリ、人気の家電などをランキング形式でまとめており、そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2024/9/8公開)している。

 

ペイパル

グローバルなオンライン決済サービスのプラットフォームを提供しているペイパルは、日本全国のECを行っている中小企業における意思決定者を対象にした調査を実施。中小企業や、越境ECとECの現状などをまとめており、そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2024/7/2公開)している。

 

ジーリーメディアグループ

台湾・香港人向けの訪日観光情報サイトとして多大なユーザー数を有している「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営している株式会社ジーリーメディアグループが、台湾人・香港人3,275名を対象にweb上でECサイトでの買い物に関する調査(2017/10/17公開)を行い、結果を報告している。

調査では、50%以上の人が、日本旅行で手に入らないような「日本国内の通販商品」、「特定の地域限定の物産」であれば越境ECサイトで買いたいと答えていることがわかった。

 

BEENOS

企業の越境EC展開を支援する株式会社BEENOSグループが自社の購買データを元に算出した越境EC×ヒットランキング2024(2024/12/4公開)では、世界的に日本のトレーディングカードやホビーなど、趣味に関する商品が人気であることが明らかになっている。特にトレーディングカードの需要が高まっており、流通数の増加によって海外消費者が購買しやすくなり好循環になっている背景についても述べられている。

 

 

中国越境EC市場関連データ5選

 

日本において越境ECというと中国向けを想起するケースが大部分を占めるほどその市場の存在感は大きい。そのため、中国越境EC市場に特化したレポートも多く公表されている。

 

富士経済

株式会社富士経済は、中国向け越境EC市場を中心に調査を行い、中国向け越境EC市場の実態と今後 2016(2017/2/9公開)を発表している。

商品、受注形態、販売エリアの市場動向を分析するとともに、中国の越境ECの市場規模は年々拡大しており、その傾向が続いていくと今後の方向性を予想している。

 

バイドゥ(百度)

中国で検索エンジンやデータマーケティングサービスを提供するバイドゥは、訪日中国人の検索動向ランキング(2019/12/25公開)を発表している。

このレポートによると、都道府県ランキングでは「北海道」が初のトップとなり、観光地ランキングでは河口湖と富士山が上位にランクイン。東京や大阪以外の観光地も注目され、検索ワードも年々具体的なエリア名になっていることが明らかになっている。

 

インテージ

市場調査・マーケティングリサーチ等を行う株式会社インテージが発表したレポート(2019/11/11公開)では、中国越境ECの将来性や、中国国内で人気な日本の製品についてのデータを発表している。

このレポートでは中国の2大越境ECプラットフォームで売り上げ割合を多く占める日本の商品が美容やマタニティ・ベビー用品であることから中国人の消費動向の分析を行っている。

 

ヴァリューズ

データ分析サービスなどを提供するヴァリューズ社は中国での調査パネルを利用して中国人がどのような「きっかけ」でどのような「商品」を、どのような「プラットフォーム」で、日本の商品を購入しているのかの調査を実施。そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2018/3/26公開)している。

 

ジェトロ(日本貿易振興機構)

ジェトロ(日本貿易振興機構)は、中国の特別行政区である香港のECの概況をまとめたレポート(2025/2/28公開)も発表している。

香港は日本文化に興味を持つ消費者が多く、購買力も高いうえ、インターネットやスマートフォンの普及率も非常に高い。香港の越境ECにおける購入地域は、中国本土、米国に次いで日本が3位であることも明らかになっている。

 

 

意識調査関連データ4選

 

越境ECについて消費者や国内EC出店者がどのような意識を持っているかについても調査レポートが公表されている。

 

BEENOS

株式会社BEENOSグループは、越境ECの利用意向に関する意識調査も実施している。海外消費者が越境ECを利用する理由や購入したことのある商品、日本商品についての情報を得ている媒体などをまとめており、そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2025/1/6公開)している。

 

ディーエムソリューションズ

EC物流代行サービスのウルロジなどを展開しているディーエムソリューションズ株式会社は、越境ECを含むECに関する様々な調査を実施している。越境EC事業化にあたっての意識・実態調査では、越境ECで課題になりやすい点や物流面の課題についての回答がまとめられており、そのレポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2024/12/15公開)している。

また、日本からの越境EC進出国の候補に挙がりやすい8ヵ国において、日本商品の需要に関する海外消費者の実態調査も実施しており、需要の高さに対して供給が追いついていないことが明らかになっている。こちらも、レポートの一部をeコマースコンバージョンラボ上で発表(2024/7/29公開)している。

 

ジェトロ(日本貿易振興機構) 

ジェトロは越境EC市場規模の大きい中国の消費者の、各国の製品等への意識調査も行なっている。中国の消費者の日本製品等意識調査(2018/12/5公開)では、中国人消費者が購入したいと思う製品・サービスの設問で、全9カ国の選択肢の中、日本はすべてのジャンルで3位以内に入っており、また、デジタルカメラ、化粧品・美容、漫画・アニメの部門では首位であったことがわかった。

また、市場規模・売上高データの項目でも挙げたレポート(2025/2/4公開)には、意識や実態に関する内容も記載されている。例えば、海外向け販売でECを活用・検討している日本企業は4割強で、具体的な方法としてそのうちの4割強が越境ECを挙げていること、大企業よりも中小企業の方が越境ECサイト利用に対して積極的な傾向があるなどだ。

 

eBay

eBay Japanは、越境ECに関する実態調査結果(2023/3/14公開)も発表している。ここでは、出店者の業務形態・英語力・やりがい・2022年後半の円安による影響・越境ECビジネスにおける課題の5項目についての結果が公開されている。

5項目のうち、特に越境ECビジネスにおける課題について「国際送料」を挙げる出店者が全体の56.3%を占める結果となった。国際送料が半数以上から課題とされたのは、コロナ禍で国際宅配便がメインの発送方法になったことや、円安の影響による送料の値上がりが原因であると述べられている。

また、その他の課題として初心者は「出品方法のリサーチ」、ベテランは「発送方法」が挙げられており、出店歴に応じて課題が移り変わることも明らかになっている。

 

 

越境EC関連データから見るとまだまだ拡大基調は変わらず

 

2017~2025年の越境EC関連データについてピックアップしてきたが、どのデータを参照しても越境EC市場が年々拡大していることが分かる。そして、新政権や地政学リスクなどの情勢を加味しても、市場の拡大は今後も続いていくとの予想が大半を占めている。また、東京やロサンゼルスよりも、上海やムンバイの方が新たなテクノロジーを活用したショッピングへの関心が高いことなども明らかになった。移り変わるトレンドや地域の傾向に合わせた販売手法をしっかり検討していかなければ、成果を生み出すのは難しくなっているのかもしれない。

今後は、中国や米国の市場と比べて競合や地政学リスクの懸念が比較的少なく、日本商品への関心も高い東南アジア市場が越境EC発展のカギとなりそうだ。