グローバルなオンライン決済サービスのプラットフォームおよびテクノロジーリーダーであるペイパルは、日本全国のECを行っている中小企業における意思決定者を対象に「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査2024」を行った。
中小企業の現状
中小企業が過去1年間に影響を受けた社外の要因のうち、 最も多かったのは「物価の高騰」で50.0%、次いで「景気」34.8%、「為替レート」31.0%がトップ3という結果だった。一方、社内の要因としては、「人手不足」35.5%と「価格転嫁」35.2%がいずれも35%を超えてトップになっているものの、「賃上げ」27.1%、「新規開拓不足」21.0%といった声があることからも、現在の中小企業は資金面での苦労が大きいことが分かる。さらに、円安による影響については、「仕入れ価格、その他コストの増加」が49.0%と最も高く、次いで「売上高の減少」13.9%が続いており、中小企業が円安による直接的なマイナス影響を受けていることも明らかとなった。
この結果から、中小企業は、新規開拓をしていきたい意向はあっても、資金や人手不足などが影響し、開拓が困難な状況であることが分かった。
ECと越境ECの現状
ECへの取り組みについて尋ねたところ、中小企業の売上高全体に占めるECの割合は、全体の約1/4である23.4%と少数で、事業全体からみるとECはまだまだ成長の余地があると言える。
また、現在越境ECを行っている中小企業の合計は50.6%で、2021年の調査で当時の越境ECの実施率が28%だったことと比較すると、過去3年で越境ECを行う企業は約2倍に増加していた。さらに「現在、越境ECを行っていないが、今後1年間に行う予定がある」と回答した企業は8.1%であり、1年後には約60%の中小企業が越境ECを実施されることが見込まれる。
ECにおける国内顧客と海外顧客(越境EC)の構成比では、 国内の平均が90.6%であるのに対し、海外の平均はわずか9.4%だった。一方、ECの売上構成比をみていくと、国内からの売上が85.1%であるのに対し海外からの売上は14.9%であり、顧客単価で見ると国内よりも越境ECのほうが高いといえる。加えて、物価高騰や円安の背景も踏まえると、中小企業にとって、自社のビジネスを成長させる原動力の1つとして越境ECを始めてもいいのかもしれない。
決済サービス選定の基準
中小企業がECを行う上での課題としては、「物流・資材コストの増加」が34.8%と最も高く、これは「物価の高騰」が影響していると考えられる。次いで「対応可能な社内人材の不足」29.0%、「多様な決済手段の導入」28.1%、「ECサイトのセキュリティ対策」28.1%、「在庫・発送管理の煩雑さ」26.5%、「専門的な知識不足による不安」25.8%、「運用費とメンテナンス時間の増加」25.8%といった項目が並んでおり、中小企業にとってECにおける課題は、資金、人材、決済、セキュリティ、専門的知識、効率といった複数の要素が絡み合っていることが分かる。
また、ECサイトの決済サービス選定時の基準をみてみると、「使いやすさ」26.8%、「決済時の手数料」25.2%、「セキュリティの高さ」24.5%、「初期費用のコスト」24.2%がどれも25%前後と、こちらも複数の項目が並んだ結果となった。このことから、中小企業は、「ユーザー数の多さ」や「知名度」よりも、費用面で導入や運用がしやすく、かつセキュリティの高い、使い勝手の良い決済サービスを求めていることが明らかとなった。
ペイパルのコメント
ペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏は、「今回の調査では、厳しいビジネス環境においても、中小企業の皆さんは意欲的にECビジネスに取り組んでいることが分かりました。特に越境ECの伸長率は約2倍となり、世界市場に目を向けている企業が増えています。一方で、ECの課題も多岐にわたっていました。資金、人材不足や運用効率、決済の多様化に加え、越境ECの課題である言語や物流なども含めると、その解決は同時に行っていく必要があります。ですが、より優れたテクノロジーサービスの活用や越境ECに強みを持つパートナーとの連携により、そのハードルはクリアできるのではないでしょうか。」とコメントした。