ソーシャルギフトはどこまで手軽に進化するのか
ソーシャルギフトは、相手に会えなくても、住所がわからなくても、SNSやメールアドレスさえ分かれば気軽にプレゼントを贈れるサービス。主流のソーシャルギフトサービスは、導入側・贈る側の手間を軽減したものが多くなっている。今回は数あるサービスの中から、デジタルギフトチケットを販売するプラットフォーム「eGift System」、LINEを使って友達にプレゼントが贈れる「LINEギフト」、価格帯が低く手頃な「giftee」、形のない体験ギフトを贈るサービス「Gift Pad」について見ていく。
<参考>
ソーシャルギフトはO2Oマーケティングに革命を起こせるのか (前編・海外) - Facebook Gifts、Wrapp
ソーシャルギフトはO2Oマーケティングに革命を起こせるのか (後編・国内) - giftee、okurune
ソーシャルギフトとは
そもそもソーシャルギフトはどのような仕組みなのだろうか。
まず贈る側がソーシャルギフトサービスを利用してギフトを購入し、贈る相手にメールやSNSでメッセージを送信する。メッセージが届いたら、実店舗でスマホの画面を見せたり、送り先の住所を入力したりすることでプレゼントを受け取ることができるのだ。 直接会って渡していた従来のプレゼントと比較すると、実店舗で選ぶよりも多様な商品があることや、相手の住所がわからなくても贈れること、SNSを介して複数人で共同購入ができること、すぐに贈れることなどがメリットとしてあり、新しい形のプレゼントと言えるだろう。
スマホからスマホへ手軽に贈れるギフトサービスeGift System
gifteeが提供する「eGift System」は、ソーシャルギフトサービスを提供したい企業向けにKDDIと共同開発されたプラットフォームだ。最近はこのプラットフォームを利用して、より簡単にソーシャルギフトサービスを提供する企業が増えてきている。Afternoon teaをはじめ、ピーチジョンが採用したeGiftに「お願いギフト」という機能が導入され、プレゼントをおねだりできるようにまでなったのだ。
eGift Systemが徐々に広まりつつある理由は、プラットフォームだけを他企業へ提供しているという点にある。従来は、ソーシャルギフトサービスのサイトへ行かなければソーシャルギフトは送れなかったが、プラットフォームだけを提供することによって、各企業のサイトでギフトを贈れるようになる。もともとその企業に関心のある人からのアクセスが多くなるので、ソーシャルギフトを贈るつもりではなかった人もサービスに触れることになり、ついで買いなども期待できるだろう。
「eGift System」は他にもスターバックスやローソン、ロクシタン、ドミノピザなどが既に導入しているが、今回は、スターバックスのeGiftを使ってソーシャルギフトを体験してみた。スターバックスのソーシャルギフトは、500円未満のドリンクと交換できるギフトチケットだ。これにメッセージカードを添えて、メールやSNSを使って贈ることができる。
まず初めにカードデザインを選ぶ。シチュエーションに合わせてジャンルを選べるため、カード選びには困らなそうだ。次に、140字以内でメッセージを入力して、贈り方をLINE・メール・Facebook・Twitterから選択する。今回はメールで贈ることにした。
次は決済画面に進む。ギフトの枚数を決めたら、決済方法を選択する。決済方法は、クレジットカードか各携帯電話会社のキャリア決済がある。決済が終了したら、あとはギフトカードのURLを相手に送信するだけで完了だ。
ギフトの受取人は、メールが届いたらURLをクリックするとギフトカードが開かれる。ドリンクチケットを表示して、店頭で提示すれば税込500円までの好きなドリンクを1杯と引き換えることができる。
ギフト選びからギフトの受取りまでの流れはこのようになっている。とても手軽で、ちょっとしたお祝いやお礼として、思い付いたときにすぐにプレゼントできることが利点だ。
友達と共同で贈れるLINEギフト
LINEギフトはその名の通り、LINE経由で友達にプレゼントを贈れる機能だ。LINEギフトには新商品が随時追加されており、送る相手別に女友達へ・男友達へ・出産・季節の挨拶などとジャンル分けされていて、そこから商品を選ぶことができる。
LINE ギフトの特徴は、一人でギフトを購入するのはもちろん、友達と割り勘して購入することができるという点。商品を提供しているENOTECA、日比谷花壇などの有名店の商品からプレゼントを決め、LINEの友達から一緒に 購入する友達を選ぶと、自動的に金額が人数分で割られる。そのあとは各々がクレジットカードやコンビニ払いなどの方法で決済をする。これなら大人数で割り勘する場合でも、代表者の負担が軽減して便利になるだろう。
決済が完了すると、代表者はメッセージと共にギフトをLINE上で送信する。受取人は、ギフトの受取りを承諾して、住所や配送日を入力すると受取り可能になる。
LINEの繋がりをうまく利用したLINEギフトだが、今のところそれほど浸透していないように思われる。LINEギフトの商品には、複数人でプレゼントを贈ることを想定して他のソーシャルギフトサービスにはあまりない少し高価な商品が販売されている。また、gifteeのギフトチケットのような贈られた人が選んで使える商品もなく、モノだけが販売されているのも選択肢を狭めているのかもしれない。また、共同で贈る場合には全員が決済を完了するまで贈れないので、時間がかかってしまうという問題もあるかもしれない。ただ、これだけ多くのユーザーが使っているLINEのソーシャルギフトサービスは、今後多くの人が活用していく可能性を秘めていそうだ。
FacebookのSNSアカウントがなくても使えるgiftee
gifteeが提供するカジュアルギフトサービス「giftee」は、相手にURLを送信するだけで簡単にギフトを贈ることができるサービス。
相手の住所が分からなくても贈れるのはもちろん、ギフトを100円以下から選べるなど、手軽さに特化しているのが特徴。ギフトを贈る側は会員登録が必要になるが、相手は会員登録不要で最寄りの店舗でギフトの引き換えができる。メールやLINE、Facebook、Twitterを始めとして、クローズドのメッセージ機能が付いたアプリであれば利用可能。SNSのアカウントを所持していなくても、実質スマホさえあれば使えるのがメリットだ。ギフトのURLを添えて送るギフトカードもシーンごとに豊富なデザインが用意されており、用途に合ったものを選ぶことができる。
また、gifteeでは、法人向けのデジタルギフトサービス「giftee for Business」も提供している。キャンペーンの景品や顧客への謝礼、販売・来客促進などでの活用を想定したサービスで、商品のラインナップも100円から10万円までと広く、受け取り後にユーザーが商品を選択できる「選べるギフト」もある。また、こちらも個人向けのサービスと同様、受け取る側は会員登録なしで利用することができる。
企業のキャンペーンであっても住所などの個人情報を記入することに抵抗のあるユーザーも増えているため、今後の活用が期待されるサービスのひとつだ。
形のない「体験ギフト」を贈るサービス、Gift Pad
ギフトパッドが提供するGift Padは、高品質なカタログギフトをメールやカードで贈ることができるサービス。紙のカタログギフトをPCやスマホで手軽に注文できる「Webのカタログギフトサービス」と銘打っており、LINEギフトなどと比較するとやや高めの年齢層がターゲットだ。
このGift Padの特徴は、体験ギフトという独自の商品カテゴリを扱っていることにある。映画鑑賞チケットや温泉の日帰り入浴、いちご狩りやマッサージ体験など、形のある商品だけでなく思い出を贈ることをコンセプトにしたサービスで、ギフトを受け取った側が任意の商品を選択できる。
また、Gift Padのプラットフォームを地方創生事業でも活用しており、旅行先からメール1通で相手にお土産を贈れる「みやげっと」などのサービスも提供されている。こちらは名産品などの物理的な商品を扱っているが、メールには写真や動画を添えることができるので、思い出を贈るというGift Padのコンセプトに通じるものがある。
商品だけでなく形のないサービスを贈るデジタルギフトという視点において、Gift Padは可能性を秘めていると言えるだろう。
さらなる進化により何を実現していくのか
ソーシャルギフトが一躍脚光を浴びてしばらく経った今、様々なサービスが登場し、機能の改善を続けている。依然として手軽さを追求したサービスが主流だが、形のないサービスを扱うなど、個性的なものも登場してきている。
●導入企業の手間の軽減とメリット
・各企業での独自実装の手間・コストが低減される
・企業のサイト内で提供できるため、サービス実施と共にブランディング・他ページへの回遊性を期待出来る●送り主の手間の軽減とメリット
・スマホで完結
・直接会えない相手にも贈れる
・住所が分からない相手にも贈れる
・多くの友達から参加を募って贈れる
・決済を参加者各自で行える
・ソーシャルアルバムなどの付加機能がついている●未だに残る問題点
・商品の選択肢が少ない
・参加者全員が決済完了するまで贈れない
・ソーシャルアカウントを持っていない・繋がっていない人は呼びかけられない
そのような各サービスの改善と共に、ソーシャルギフトサービス市場は徐々に拡大してきているようだ。矢野経済研究所が発表したデータによると、2020年には市場規模が770億円ほどになるのではないかという予想もある。また、日本通信販売協会の調査によると30代男性の5人に1人はソーシャルギフトを利用したことがあるというデータも存在するのだ。しかし一方で、周りを見てみてもそれほどソーシャルギフト自体が盛り上がっているとは言えない側面もある。
総務省のデータによると、日本のソーシャルギフトの利用率は1割程度だが、韓国の利用率は3割を超えている。これは欧米等と比較しても唯一の存在だ。 韓国は世界の中でも特にソーシャルギフトが発展している国で、海外展開する企業が増加している。韓国のSK Planetが日本法人を立ち上げ、「cotoco」というサービスでソーシャルギフト市場に参入し、現在もサービスを継続している。日本ではそれほど浸透していないソーシャルギフトだが、韓国の例を見ると利用率が増加するポテンシャルはあると言えるだろう。数年後には日本でもソーシャルギフトを贈り合うことが日常的になるかもしれない。