インドネシア向け越境ECの可能性 - 東南アジア1のポテンシャルを持つ国をどのように攻略していくのか

 

日本政府観光局は、2015年1月から10月までの訪日観光客数が1,631万人に達し、過去最高記録を更新したと発表した。観光庁は年内にも訪日観光客数が1,900万人に届くとの見通しを示し、政府が掲げる「2020年までに訪日観光客数2,000万人」を大幅に前倒ししそうな勢いだ。

訪日観光客の10月地域別内訳を見てみると、中国・韓国・台湾・香港などの東アジア諸国が約70%を占め圧倒的。今回のテーマのインドネシアは訪日観光客数の1%程度の16万人と国別に見ても14番目とそれほど多くは無い。しかし中国・インド・米国に次ぐ世界第4位の人口2.5億人を有し、依然として平均毎年5%ほど成長しており、EC市場の成長のポテンシャルが最も高いといわれている。今回はそのインドネシアのEC事情やインドネシア向けの越境EC市場について見ていきたい。

 

<参考>

急成長を遂げる東南アジアとインドのEC市場 - 6カ国の市場環境・決済と進出ハードルまとめ

 

 

東南アジア1のポテンシャルを持つ国、インドネシア

 

前述のように、インドネシアの人口は世界第4位の2.5億人。人口のおよそ9割がイスラム教徒で世界最大のイスラム教国家だ。一人あたりのGDP(3,475US$)も右肩上がりの成長を続けており、可処分所得はベトナムと同率で東南アジア諸国中、最も高い伸びを示している。

また、首都のジャカルタにはAKB48の姉妹グループのJKT48が2011年ごろから活動しており、日本の文化にも関心が高い要素が多いといわれている。アウンコンサルティング株式会社が今年の7月に行った調査によると、日本に対して「好き」または「大好き」と答えた人は94%に上る。インドネシアにおける日本語学習者数も約90万人と中国に次いで世界2位となっており、その関心の高さが伺える。

最近では外資系企業の受け入れ体制も整ってきており、市場規模や日本が与えている影響からしても今後最も力を入れていくべき国の一つだろう。

 

 

インドネシアのEC事情

 

現在のインドネシアのEC事情は実際どのようなものなのだろうか。経済産業省が発表した平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に関する基盤整備 日アセアン越境電子商取引に関する調査を参考に、同じ東南アジアのシンガポール、マレーシア、タイ、ベトナムを含めた5ヶ国と比較しながら見ていきたい。

 

 

まずは越境ECの基盤となるネット普及率について見ていこう。インドネシアのネット普及率は17%と5ヶ国中最下位だ。普及率が82%を超えるシンガポールと比べるとかなり低い数値だ。しかし、世界4位の莫大な人口がこれをカバーしており、ネット使用者数は約4,300万人と2位のベトナムに400万人の差をつけて5ヶ国中トップとなっている。これからネット普及率が増加していくことを考えると、将来のネット使用者数の増加に非常に期待ができる。

次に、EC市場規模を見てみよう。2013年当時の将来予測ではあるが、2015年は1位はタイで10億6,000万ドル、インドネシアは7億5,400万ドルで3位だ。しかし、2017年にはインドネシアが約15億ドルと市場規模が倍増して5ヶ国中トップとなると推計されている。

最後に、越境EC事情について見ていこう。結論から言うと、越境EC利用率は中国と同等かそれ以上でかなり高い。インドネシアでは50%以上の人が越境ECを利用したことがあると答え、「まだ利用したことはないが、今後利用したいと思っている」と答えた人が次いで40%を占めた。越境ECに対する意欲はかなり高いと言えるだろう。越境ECを利用した人の内、過去一年間に日本から購入経験がある人は約50%で、最も購入されているアメリカの約70%に比べると劣るが、それでも高い水準にある。

 

 

インドネシア向け越境ECサービス

 

このようなポテンシャルを抱えるインドネシアのEC市場であるが、いきなり自社サイトで越境ECを開始するのはやはりリスクが大きい。言語だけでなく、商習慣や文化の違いなど、高い参入障壁が存在するからだ。そこでここでは、手軽にインドネシア市場に進出するための、越境EC向けサービスプラットフォームを紹介していく。

 

Japacoco

 

Japacoco株式会社Everentia(エベレンティア)が運営する日本商品専門の総合ショッピングサイトだ。

 

 

主なサービスはインドネシア向けの出品・販売代行だ。それに付随して独自のノウハウを活かした販売戦略を出品者に提供する。Japacoco最大の特徴は成果報酬型ということであり、商品の登録は無料、企業は商品を日本国内の配送センターに送るだけでよいので、リスクや商品の配送、決済といった手間がかからない。

 

 

Berrybenka.com

 

Berrybenka.com(ベリーベンカ)はトランスコスモス株式会社が提供しているファッションECサイト。2013年にトランスコスモスがベリーベンカを運営するPT. BERRYBENKAから株式の30%以上を取得し資本業務提携することで、日本からの出品・販売代行の提供が可能になった。

 

 

ベリーベンカはインドネシア国内外のブランドと提携して手頃な価格で最新、流行の製品を販売しているファッションプラットフォームだ。500ブランド以上を取り扱い、インドネシアNO1のファッションECサイトと言えるだろう。ファッションの他にも口紅やマニキュアなどの化粧品も取り扱っている。また、トランスコスモス本来の強みであるBPOサービスのコールセンターがインドネシア語、英語など多言語対応しているため、顧客の問合せなどにも対応できる体制が構築されており、安心して商品を任せることができる。

 

 

インドネシア向け越境ECで売れるモノ

 

インドネシアで求められている日本製品はなんだろうか。先ほどの経産省の調査データを見てみよう。

 

 

 

 

 

自動車のパーツやPC類、家電、AV機器などの機械類が最も目立つ。自動車関連の製品が人気なのは、インドネシアが自動車・バイク大国であり日本車がよく走っているからだろう。東南アジアで知っている日本企業を聞くと、対象の5か国中4か国でSONYの知名度が最も高かったが、インドネシアではHONDA、YAMAHAといった自動車・バイクメーカーの方がSONYより知名度が高いという結果になった。

機械類の他には、衣類やアクセサリーなどのファッション関連が人気だ。インドネシアではアパレル関連の製品をインターネットで購入する文化が根付いており、自国・越境含め全体で見れば最もインターネットで購入されている品目となっている。

 

 

東南アジア1のポテンシャルを持つ国をどのように攻略していくのか

 

インドネシア向け越境ECを成功させるためには大きく2つ留意点が挙げられる。

1つめは文化や習慣、生活スタイルなど国の背景を深く理解することだ。前述したがインドネシアの特徴は世界最大のイスラム教国家だということである。同じ東南アジアでもシンガポールやタイで酒や食料品が人気な一方、アルコールや豚が禁じられ、その他調理法や行動などにも一定の作法が求められるイスラム教では食品類や化粧品の販売は難しいだろう。実際、日本からの購入品目には入っていない。ただし、イスラム教の教えに則っているというハラール認証を得ることができれば、かえってチャンスがあるかも知れない。こうした示唆を得るためにも、まずはインドネシアのことを深く知る必要がある。

2つめは、日本製品に求めれていることをきちんと認識することだ。インドネシア向けでは自動車部品や家電製品が人気だが、根底にあるのは日本ブランドへの信頼感だろう。現物を確認できないECだからこそ、日本製品、日本ブランドは強みを発揮する。伝統的な強みを発揮する機械類以外の商品であっても、こうした強みを持ち、それをきちんと伝えられることができれば機械類以外のものでも大きなチャンスが広がっているかも知れない。

 

今後ECの環境がより整備され、ネット人口の増加が見込まれるインドネシア。世界最大級のEC市場へと成長していくのだろうか。今後の成長に期待したい。