マーケティングにおけるパーソナライゼーションがかつてないほど重要になっている今、企業は適切な戦略の実施に苦慮している。


パーソナライゼーションの時代へようこそ。この時代は、顧客がサイトにアクセスする前に自分に関するすべての情報を企業側が知っていることを期待すると同時に、そのデータがどのように収集・保存されているかについて非常に慎重になっている時代といえるだろう。

<参考>

デジタルとリアルの融合がもたらすマーケティングのパーソナライゼーションの進化

マーケターはこの難しい綱渡りを20年近く続けてきたが、ついに転換点に到達した。パーソナライズされた体験を提供しない企業は、それを提供する企業に遅れをとるだろう。

75%以上の消費者が、パーソナライズされたブランドから商品の購入を検討する可能性が高く(同数の消費者は、パーソナライズされた体験が得られない場合に不満を感じると回答)、パーソナライズ戦略はかつてないほど予見可能性に満ちている。

しかし、マーケティング、eコマース、ITの各分野の経営幹部は、パーソナライゼーション戦略の拡大はおろか、パーソナライゼーション・エンジンの強化にも苦労している。最近の調査では、経営幹部の64%が、チームはリアルタイム・パーソナライゼーション戦略の導入を開始したばかりだと回答している。

では、彼らの妨げとなっているのは何だろうか?それは……

  • 44%が、複雑なデータや断片的なデータが最大の課題であると回答
  • 43%が、効果的なアナリティクスの欠如が足かせになっていると回答
  • 40%が、プログラムの拡張に苦労していると回答
  • 39%が、リアルタイムでのプログラム実装に苦労していると回答
  • 36%が、ワークフローのばらつきが足かせになっていると回答


パーソナライゼーションの現状

パーソナライゼーション戦略を導入し、パーソナライゼーション・エンジンをフル稼働させることは、言うほど簡単なものではない。現代の消費者は、ランディングページの読み込みやアプリの起動が完了する前に、個々の嗜好や特性に合わせて体験が調整されることを期待しながらブランドとやり取りしている。

経営幹部の86%が、現在提供できるものよりも高度なパーソナライゼーションを必要としていると回答したのも不思議ではない。また、経営幹部の62%が2023年よりも2024年にパーソナライゼーションの予算を増額したことも驚きではない。これは、組織にとって、状況がいかに切迫しているかを明確に示している。


パーソナライゼーションはそれほど難しいものなのか?

それは、難しいものになり得る。

実際、組織全体でパーソナライゼーションの定義が統一されていると回答した経営幹部は、わずか26%に過ぎない。

「“パーソナライゼーション”が自社にとって何を意味するのかさえわかっていないのに、組織はどうやってパーソナライズされたWeb体験を提供できるのだろうか」と自問しているのであれば、それは提供できないからである。

パーソナライゼーション戦略がある経営幹部は、ROIを測定するために、以下の3つの主要カテゴリーに注目している。

  • 顧客一人あたりの売上(49%)
  • サイト/ページのエンゲージメントに費やした時間(45%)
  • 顧客維持率(44%)

注目すべき点は、50%を超える指標が一つもないことで、これは成功の追跡に関する一般的な不確実性を物語っている。

実際、パーソナライゼーションに関しては、多くの企業が手探りで取り組んでいるのが実情で、回答者の43%は、効果のないパーソナライゼーションキャンペーンは将来的に予算削減につながるのではないかと懸念している。


パーソナライゼーションをより簡単に

パーソナライゼーションには慎重な調整が必要である。組織は通常、マーケティング、製品、エンジニアリング、セールスにまたがる部門横断的なチームに頼ってパーソナライゼーション・インフラストラクチャを構築するが、そのチームはデータシステムやマーテックツールにも依存している。

何が問題になり得るだろうか?それは……

  • バラバラのソフトウェアシステムが不運にも混在しており、パーソナライゼーションを複雑にし、不必要なレイヤーを増やす
  • 乱雑なデータ管理システム(率直に言って、これはおそらくあなたにも当てはまる)では、パーソナライズされた体験を生み出すことは不可能になるだろう
  • データの山は、それを最大限に活用して回収できると期待する以上に、整理するために多大なリソースが必要となる
  • ワークフローが不十分なため、いつ、何をすべきなのか、誰にもわからない
  • 成功の測定方法やROIがわからない

これらのシナリオのいずれかに心当たりがあるなら、あなたも仲間である。パーソナライゼーション戦略が完全に機能していると回答した経営幹部は、全体のわずか9%にすぎない。

ここでは、パーソナライゼーションを始める際の負担を軽減し、摩擦を最小限に抑える方法をいくつか紹介しよう。


パーソナライゼーションツールの監査を行い、強力なオーディエンス管理機能を実現する

自在に使える豊富なツールがあると、強力に感じられるかもしれないが、実際には、それがあなたの足を引っ張り、断片的なシステムやワークフローのばらつきを生み出している可能性がある。ツールがインテリジェントに統合されていない限り、データフローは孤立し、信頼性が低くなる。

この断片化は、通常、仕事のための仕事をもたらす。

パーソナライゼーションプラットフォームが、データが保存されているツールやプラットフォームと強力に統合されていることを確認しよう。また、プラットフォームが顧客の全体像を把握し、オーディエンスを効率的に管理できるようにする必要がある。


小さく始める

走る前にまず歩き方を学ぼう。規模を拡大する前に実行し、最も信頼できるデータポイントを堅持しながら、関連するビジネス成果に焦点を当てよう。

大量のデータがない場合やスポット的なデータしかない場合は、今あるデータ、そして最も正確に測定できるデータに集中しよう。

パーソナライゼーションが新たなビジネスチャンスにつながるのは、パーソナライゼーションがほぼ完全に機能するようになってからである。パーソナライゼーションを軌道に乗せるのに苦労しているのであれば、最も信頼できるデータと実績のあるセグメントに焦点を当てることで、将来に向けて強固な基盤を築くことができる。


コンテンツに注目する

コンテンツや商品の在庫が豊富でなければ、パーソナライゼーションはうまくいかない。

ワークフローを設計し、戦略を実行し、データを収集することは、すべて「適切なコンテンツを適切な顧客に適切なタイミングで提供する」という明確な目標のために行われる。

問題は、パーソナライゼーションを効果的に実現するには、大量のコンテンツや製品が必要になるということである。サイト上にコンテンツが5件しかなかったり、わずかな商品しかなかったりすると、顧客は実際にはどのような方向にも誘導する必要がなくなる。

パーソナライゼーションを成功させたいのであれば、ある時点で、カスタマージャーニーのさまざまな段階にある顧客に多様なコンテンツアセットを提供する、スケーラブルなコンテンツ戦略が必要となる。


実験を始める

すでにパーソナライゼーションを開始しているがうまくいっていない場合は、実験がどのように役立つかを考えてみよう。「マルチアームドバンディット」とは、機械学習アルゴリズムを使用して、パフォーマンスの高いバリエーションにトラフィックを動的に割り当てる一方、パフォーマンスの低いバリエーションには割り当てるトラフィックを減らすA/Bテストの一種を指す。これは、リアルタイムで最もパフォーマンスの良いオプションを表示し、トラフィックを最高の体験に自動的に誘導するため効果的である。このアプローチは、エンゲージメントを最適化するだけでなく、キャンペーンが常にユーザーの好みに沿ったものであるように、戦略を継続的に改善する。

実際、経営幹部は、この実験から以下のようなメリットが得られることをすでに認識している。

  • 間違いの特定(40%)
  • データに基づいた意思決定の実現(40%)
  • 戦略を実行する前のテスト(39%)
  • 顧客体験のパーソナライゼーション(39%)
  • 有効なパーソナライゼーション戦略の見極め(39%)


データの整理

先に、経営幹部の44%が複雑なデータや断片化されたデータが最大の課題であると指摘し、ほぼ同数が効果的なアナリティクスの欠如が足かせになっていると述べた。

データが問題にならないようにする一つの方法は、強力な顧客データ・プラットフォーム(CDP)を利用することである。

無数のデータウェアハウスやデータクラウドに散在するデータをすべて取り壊してゼロから始めるのではなく、CDPを活用して絶えず蓄積されるデータを追跡するのだ。これはパーソナライゼーションでは特に重要で、適切な顧客に適切なタイミングで適切なデータを確実に提供したいからである。


AIについて聞いたことはあるだろうか?

パーソナライゼーションを実行するのにAIが必要だろうか?いや、必要ではないが、それがあれば物事はずっと簡単になるだろう。

  • 拡張性 AIはワークフローを動的に調整し、ユーザーをパーソナライズされた体験へと即座に誘導してくれる。
  • ユーザー体験の向上 AIエンジンが舵を取ることで、適応性とリアルタイムのパーソナライゼーションもより達成しやすくなる。
  • コンテンツの推奨 コンテンツを手動で表示するには、膨大なリソースが必要になる。ある時点で、そのリソースを投入する価値はなくなる。AIがコンテンツリポジトリ(コンテンツサーバ上の文書の論理記憶域にアクセスする管理エンティティ)をスキャンして、関連コンテンツを表示するようにすれば、時間を大幅に節約できる。


総括

パーソナライゼーションは、単なる流行語や専門用語ではない。それは、組織が顧客とつながる方法を変えつつあるのだ。企業がパーソナライゼーションを強化し続けるなか、これらの課題をうまく乗り越えた企業は、消費者の期待の高まりに応え、より強固な顧客関係を築き、パーソナライズされた体験を提供できるようになるだろう。

Optimizely Personalization(デジタルエクスペリエンスプラットフォームを提供する米国企業Optimizelyのパーソナライゼーションツール)は、組織が1対1のパーソナライズされた体験を創造できるようにするための専用ソリューションである。Optimizely Personalizationを使うことで、ブランドはコンバージョンを促進するターゲットエクスペリエンスを作成し、リアルタイムで高パフォーマンスの体験を提供し、ROIを測定し、計画やアイデア出しをすべて単一のプラットフォームから行うことができるようになる。


※当記事は米国メディア「MarTech」の10/23公開の記事を翻訳・補足したものです。