CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とスマートデータ戦略によって、どのように顧客データを一元化しているのか

 

「データを適切に取り扱うには、顧客中心のアプローチが必要だ」カスタマーエクスペリエンス・マネジメントソフトウェア会社Merkleのテック・アドバイザリー担当シニアディレクターであるGaelyn Almeida氏は、今年春のMarTechカンファレンスでこのように語った。

 

また、彼女は次のように付け加えた。「自社の顧客情報や、インタラクションのタイプにおける忠実度は非常に多様であり、きわめて複雑だ。自社データを統合されたデータエコシステムと捉える必要がある」。

 

顧客や見込み客と関わる非常に多くのデジタルタッチポイント(顧客との接点)があるため、マーケターは、データを整理してそれに基づいて行動するための顧客中心の戦略を構築する必要がある。データの中の真実は、個々の顧客に起因する。そして、それらはマーケティングファネル全体に存在している。

 

適切な方法でデータをとりまとめることは、情報に基づいた顧客エンゲージメントと収益の獲得につながる。ただし、この課題に対応できるデータソリューションの導入は、難しいように思えるだろう。導入プロセスを混乱させる可能性のある、データに関する誤った通説も存在する。重要なことは、これらすべての溢れかえるデータの中から、真の顧客を見つけ出すということを覚えておくことだ。

 

見込み客をないがしろにしない

成功するデータ戦略においては、顧客をないがしろにすることはない。常に顧客中心であり続ける必要がある。つまり、「すべて」の既存顧客と将来の顧客を対象とすることを意味する。

 

「多くの場合、企業は、既存顧客のことだけを考える」とAlmeida氏。「マーケティングやカスタマーエクスペリエンスの観点から顧客について考えるとき、ファネルの上層部にいる見込み客から、ファネルの最下層でまさにコンバージョンしようとしている人、あるいは既存顧客まで幅広くみていく必要がある」。

 

また、すべての保有データをまとめるプロセスを開始する前に、見込み客と顧客から収集したデータは、基本的に共通の目的で使用する同じ種類のデータであることを認識しよう。

 

「分析する場合も、アクティブ化を図る場合も、誰もが同じデータを使用している」とAlmeida氏は述べている。「根本的には、顧客について知る必要がある。データの変換方法は異なるかも知れないが、最終的には同じデータになる。つまり、それをサプライチェーンとして考えるのだ」。

 

ハブアンドスポークモデルを使用する

投資運用会社のT. Rowe Priceは、データの流れを調整するための最善の方法は、ハブアンドスポークシステムであると考えていると、同社のソフトウェアグループマネージャーのFrank Hong氏は述べている。同社は、リード管理、セールスアウトリーチ、および関連するメッセージングを支援するデータテクノロジーソリューションについてMerkleに助言を求めた。

 

「このハブアンドスポークモデルでは、多様なソースすべてからではなく、1つのソースからデータを取得することを想定しているが、特に、メインフレーム・データベースと自社製品とクラウドベースのソリューションのハイブリッドモデルを利用するという課題がある」とHong氏は語った。

 

データがクラウド上にあるからといって、それが完全に一元化されている、あるいは実用的であるとは限らない。Almeida氏によると、クラウド単体ではカスタマーエクスペリエンス・データの問題をすべて解決できるわけではないという。

「カスタマーエクスペリエンス・データの量と速度は非常に複雑だ」と彼女は説明した。「クラウドをカスタマーエクスペリエンス担当者として検討する際には、IT部門と共にテーブルにつき、ニーズに対応しているかどうかを確認しよう」。

T. Rowe Priceのクラウドソリューションへのに移行初期段階では、異なるビジネスユニット間でのデータ共有に問題が発生した。

 

「残念ながら、クラウドソリューションによってすべての問題を解決することはできなかった」とHong氏。「私たちが遭遇した大きな問題の1つは、ビジネスユニット間でデータをどのように共有するかということだった。すべてのビジネスユニットのデータを使用するマーケティングとどのように共有するか、そして、データの取得を支援するにはどうすべきか?システム間で多くのポイントツーポイント統合が行われた。私たちのアーキテクチャは、さまざまなシステムがスパゲッティに絡まり合っていた」。

 

新たな一元化されたデータレイ戦略は、以前のレイアウトにおいて混乱していたすべての絡み合ったデータフローを整理するためのハブアンドスポークモデル構築には有効だが、無駄なコストがかかっていた。

 

「現在、私たちは、計画の改善に積極的に取り組んでいる。今では、一元化されたソースからデータを引き出すことができ、(データの)導入コストを削減できるようになった」。

 

データのキュレーション

ただし、データ戦略は、一元化されただけで終わりではない。企業のさまざまな分野で利用できるように準備する必要がある。

 

「私たちが求めているのは、ビジネスで使用可能な状態のキュレーションされた顧客ドメインと呼ばれるものである」とAlmeida氏は述べている。

 

ここで必要となるのが、データチームに、適切にカタログ化され、適切なセキュリティポリシーに沿って調整され、企業の他の領域への統合と配布の準備ができている一定の共通領域を作成することだ。また、このデータはリアルタイムで更新できるように準備しておく必要がある。

T. Rowe Priceは、個々のビジネスユニットが独自のデータレイクを持っていたことに起因する、顧客プロファイルの重複やその他の無効なデータに関する問題に遭遇したと、Hong氏は述べている。データをキュレートして企業全体の共有データレイクに統合するために、データをドメインで適切にカタログ化する必要があった。

 

CDPは単一のソリューションではない

全社的にデータを統合することは、万能かつ使いやすいソリューションなくしては困難である。Almeida氏は、CDPがすべてのデータキュレーションを処理するための迅速な解決策だと考えるマーケターに対し、警告している。

T. Rowe Priceは、Adobe Experience Cloudスタックの他のソリューションとともに、Adobe Experience Platform(AEP)をCDPとして使用している。「AEPによって、データの取り込みとアクティブ化のためのプラットフォーム間の強力な統合が可能となるため、これらの異なるすべてのソースを、1つの中心地にまとめることで、コストを削減したいと考えた」。

 

しかし、統合を進めていくにつれ、すべてのデータポイントを個々のビジネスユニットからCDPに移動するにはコストがかかりすぎることに気がついた。そのため、AEPデータを、エンタープライズデータレイク内の独自のドメインに移動させ、組織の他のメンバーがこのデータにアクセスできるようにした。

 

「これで、AEPにすべてを読み込むことなく、データをキュレートし、他のビジネスユニット内のいかなるデータセットとも照合できる真の顧客360データベースが出来上がった」とHong氏は述べている。

 

この戦略は、CDPとAEP双方の長所を活かすことができる。個々のビジネスユニットが必要なものを引き出すための柔軟性があり、企業のすべての顧客データに対する真のハブアンドスポークモデルを構築することができるのだ。

 

春のMarTechカンファレンスで行われた「Getting Data Right」に関する全文はこちらから(要登録)。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の8/4公開の記事を翻訳・補足したものです。