AI(人工知能)が効果的に機能するためには、根拠となるデータ基盤が必要
AIによって、小売業界は根本的に変わろうとしている。それ自体は、良いことである。消費者行動は、次第にAIによって管理されるようになり、その結果、前例がないオンラインショッピング体験が生み出されているからだ。
AI搭載ツールによって、テクノロジーに精通していないCMO(最高マーケティング責任者)でさえ、消費者のニーズを予測し、リアルタイムに仮説を立て、高度にパーソナライズされた顧客体験を容易に提供することが可能になった。マーケターは高まる消費者の期待に応えるために、AIを活用している。AIの助けを借りて、小・中規模の小売業者でも、Amazon、Walmart、Nordstromなどが行なっている優れた1対1のカスタマーエクスペリエンスを提供することができるようになった。
カスタマージャーニー(顧客が商品やサービスを知り、購入に至るまでのプロセス)のいかなる段階においても、顧客に適切に対応するためには、以下に述べる4つの手法を検討すべきである。
1. 独創的な可能性を探る
企業は、顧客が思いつかないような何かを常に提供し続けるべきなのである。ターゲットを絞り顧客と関連性が高く有益なコミュニケーションをとることにより、コンバージョンを上げると同時に、継続的な顧客ロイヤルティーを獲得することができる。
しかし顧客ライフサイクルは単純なものではない。カスタマージャーニーの適切な段階において消費者と接点を持つことが、顧客を獲得する最も効果的な方法の1つだ。例えば、ネットをブラウジングしているが何も購入するに至っていない買い物客にとって、閲覧履歴に基づいたパーソナライズされたおすすめ商品情報を提供するeメールは有益であろう。
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おすすめ商品情報の提供自体は今や目新しいものではないが、レコメンデーションエンジンは、かつてないほど精度が高く、賢くなっている。個々のユーザーの行動と嗜好に沿った商品データを考慮するディープラーニングと、高度な機械学習フレームワークによって、カスタマイズされたおすすめ商品情報の提供が可能になった。
AmazonやNetflixといった企業は、高性能な機械学習アルゴリズムを使用し前例のない体験を提供することで、買い物客を満足させた。そして、ただの消費者を顧客、更にはロイヤルティーの高い買い物客へと変えてきたパイオニアである。
2. カスタマージャーニーを、タッチポイント(企業やブランドと顧客との接点)に沿って計画する
現在、顧客と企業間には、オンラインとオフラインにおいて無数のタッチポイントがある。マーケターはタッチポイントを一連のスナップショットとして見るのではなく、統合したシングルカスタマービュー(統合された顧客ビュー)を確立し、顧客と企業の全タッチポイントを認識する必要がある。
顧客情報の一元管理を否定するマーケターは、根本的にアプローチが間違っている。顧客情報を統合したカスタマービューが確立されていなければ、パーソナライズされたメッセージを提供することは難しいのだ。また、AIがシステムの中核に組み込まれていなければ、複数のチャネル間でシームレスな顧客体験を提供し、リアルタイムにパーソナライゼーションを実現することはできない。
AIは、顧客との最初の接点から最終的な商品の購入までのカスタマージャーニーを通じて、満足度の高い顧客体験を提供するのに役立つ。例えば、顧客生涯価値を予測する従来のアプローチは、過去の顧客データにのみ基づいている。しかし、機械知能を用いたCLTV(顧客生涯価値)モデルは、正確な予測を行うために、購買行動を含む多くのユースケースを考慮している。例えば、直近の購入履歴や購入頻度、購入金額などを考慮し、即座に将来の顧客行動を予測することができるのだ。
3.カスタマージャーニーにおける重要な段階を特定する
一貫性を保つことがポイントである。重要なのは、パーソナライゼーションのタイミングだ。マーケターには、実用的な考察に不要な膨大なデータまで届いてくる。こうして収集されたデータ自体には意味がない。いかにマーケターがAIから深く、有益な見識を得るかによって初めて、カスタマージャーニーにおける重要な瞬間を特定し、適切なチャネルにおいて、適切な顧客に、適切なメッセージを自動送信でき、そこから購入に結びつけることが可能になるのだ。
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例として、顧客がこれから購入を行う際、AI駆動型知能はカスタマージャーニーにおけるどの段階が最大の影響力をもたらしたのかを特定することができる。これらのすべての予測は、過去の大量のデータや機械学習技術に基づいて、自動的かつリアルタイムに行われる。
4.チャットボットで顧客体験を変える
カスタマージャーニーにおけるコミュニケーションは、ほとんどの場合どこかの時点で不備が生じるものだ。多くのマーケターは1対1のパーソナライゼーションではなく、特定のセグメントをターゲットとしてしまう。その結果、同一セグメント内の全顧客に対し、同じマーケティングメッセージが送信されるのだ。
AIを活用して顧客のニーズを特定することは、顧客体験を「人間味を感じさせるものにする」ためのカギである。チャットボットとは、AI搭載の仮想アシスタントであり、小売業者が顧客体験を積極的でインタラクティブに変革している最も象徴的な事例となっている。現代のチャットボットはデータ駆動型で、顧客をリアルタイムでサポートすることが可能。以前のように顧客がチャットボットのあらかじめ用意されたメッセージや、反応が遅い受け答えに苛立つことはない。
世界で最も高性能なチャットボット技術として、AIシステムを動かすコンテクスチュアルデータによる自動化機能が挙げられる。また、高度なチャットボットは、買い物客に対応する際の人間同士の対話のような(自然な)やりとりをために、自然言語処理を使用した音声テキスト変換が可能。更にオンラインショッピングにおける検索プロセスも高速化している。買い物客が単に自分のニーズを伝えるだけで、チャットボットがそのニーズに適した商品セレクションを提供。1-800-FlowersやThe North Faceといった企業は、AI搭載のチャットボットを活用し、カスタマージャーニーの全プロセスにおける顧客体験を変えている。
また、AI駆動のチャットボットが採用されることで、オンラインの買い物客は自然言語で質問できるように。その結果、小売業者は買い物客の意図や買い物の好みを理解することが可能になった。
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カスタマージャーニーとは、顧客が購入に至るまでに行った全ての事象以上の意味を持つ。AI駆動型のカスタマージャーニーは、顧客に対する理解を深め、有意義なインタラクションを可能にするのだ。
※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の1/25公開の記事を翻訳・補足したものです。