「AIを活用したオープン・コマース」という新しいコンセプトに基づく小売業者向けネットワーク「Red101」が、今秋にも米国市場で稼動する予定である。

英国に本社を置くソフトウェア企業RedCloud Technologyが開発したRed101は、全米の何百万もの流通業者やその他の小規模事業者のeコマースに革命をもたらす可能性がある。同社CEOのJustin Floyd氏によると、このプラットフォームはオンライン小売業者にAmazonマーケットプレイスに代わる選択肢も提供するという。

RedCloudは、AmazonのようなBtoC(企業対消費者向け)のマーケットプレイスとは異なり、BtoB(企業間取引)のプラットフォームである。Red101は、すでにアフリカとラテンアメリカで利用可能である。

Floyd氏は当初、昨年10月にRed101のデビューを発表したが、取引はまだ開始されていない。しかし、同氏は、「RedCloudの同プラットフォームはすでに100以上のブランドが登録している点でローンチしており、9月から本格的に始動する」と語っている。

このインテリジェント・プラットフォームは、サプライチェーンの非効率性を軽減するためにAIを搭載した技術を活用している点で、第一世代のeコマースとは異なる。Floyd氏は、「これにより小規模小売業者にとって、より公平で透明性が高く、安全な取引が可能になる」と述べた。

また、偽造品を防御することで、Amazonのような大手eコマース企業と競争する際に中小企業(SMB)が直面する課題を最終的に軽減する。このオープン・コマース・プラットフォームは、新興市場における日用消費財(FMCG)ブランド、流通業者、そして地元商店を結びつける。

オープン・コマース・アプローチにより、小売業者は、その地域内であれ、地域外であれ、どの流通業者とも即座に取引を行うことができる、と同氏は説明する。小売業者は、在庫や高品質の商品を、適切な価格とタイミングで購入することができる。

「これは、大規模なオンライン上のキャッシュアンドキャリー(顧客が現金で商品を購入し、顧客自身が商品を持ち帰る制度)のようなものだ」と同氏は付け加えた。

 

従来のeコマース・プラットフォームを超える

Floyd氏は、RedCloudの目標はオンラインコマースの大衆化であり、規模の大小を問わず、すべてのプレーヤーが公平なチャンスを得られるようにすることであると語った。Red101は米国市場に革新的なツールを導入し、コマースの透明性とアクセス性を高めるというこの使命を推進する。

RedCloud Technology のCEO、Justin Floyd氏

「私たちはAIの力を活用することで、コマースにおける従来の課題を克服し、場所や言語に関係なく、売り手と買い手の間でよりスムーズなやり取りを実現する」と語った。

RedCloudのインテリジェント・オープン・コマース・プラットフォームは、オンラインコマースを促進するだけでなく、ビジネスを成長させ、キャッシュフローを管理し、設備や在庫を購入するための資金へのアクセスを加盟店に提供する。

Floyd氏によると、米国の小売業者が現在直面している大きな問題は、各地域のサプライチェーン・リソースと容易にネットワークを構築できないことだという。オープン・コマースを利用することで、小売業者同士の取引はより容易になり、融資取引はテイクレート(プラットフォーム上で行われた取引に対し、マーケットプレイス側から課される手数料)で処理される。このプラットフォームを利用する加盟店は、注文金額に対して最大1.5%の手数料を支払う。これはクレジットカードの手数料よりも低い。

「現在、私たちのプラットフォームには、約6,000のブランド、約100万人の小売業者が登録している。彼らがそうしているのは、私たちが彼らの時間の3分の2を取り返しているからである。第二に、私たちは彼らに価格設定の明確な可視性を提供しているためである」と同氏は述べた。

同プラットフォームは、サプライチェーンの問題にも対応している。中小企業は、最良の価格を得るために、さまざまな販売業者との取引に時間の半分を費やしている。そして、その販売業者が2週間先まで納品できないことに気付くのだ。 在庫の獲得と配送の管理は、誰もが対応できるわけではないため、さらに困難になる。同プラットフォームにサインアップした販売業者は、同プラットフォームが稼働している地域で利用できる Red101のiOSまたはAndroidアプリですべての手配を処理する。

 

Amazonの代替

RedCloudは、小規模店舗や中小企業にとってオンライン販売をますます困難にしている大手ブランドの課題に取り組む態勢を整えている。Floyd氏は、従来のeコマースが中小企業や個人事業主を不自由にしていると主張する。

Amazonの全出品者の8%を占めるサードパーティセラーは、Amazonが今年実施したさまざまな手数料の変更により、ますます大きなプレッシャーに直面している。中小企業の33%以上が、配送料、広告料、保管料、在庫料の上昇を懸念している。

2023年、Amazonは商品のホスティングや保管・配送の手数料としてセラーに請求する手数料から1,400億ドルを生み出したが、これは同社の総収入の25%に相当する。今年初め、Amazonは販売者手数料を引き上げ、より多くの運営コストを小規模事業者に転嫁した。インフレに加えて、これらの手数料は中小企業に値上げを強いている。

多くの企業にとって、値上げは実行可能な解決策ではない。コスト意識の高い買い物客は支出を減らすことに頼るため、ブランドは価格を維持するために経費を削減している。

Floyd氏は、Amazonの新しい料金体系は、特に在庫管理に関しては複雑すぎる、と語る。インバウンド配置手数料の高騰により、企業はAmazonへの商品出品を減らしている。

昨年、小売業の変革の最前線を伝えるメディアModernRetailは、Amazonに1つの商品のみを出品するセラーの数が、2022年と比較して300%以上増加したと報告した。米国の技術系ニュースサイト及びメディアネットワークであるThe Vergeは、Amazonの「プロジェクト・ネッシー(同社に多額の収益をもたらした、価格引き上げのための秘密計画)」がアルゴリズムを導入し、収益性の高い商品を特定して価格を引き上げることで価格をコントロールし、他のオンライン小売業者も同じことをせざるを得なくなったと指摘している。

「この集中型モデルは、成長を促進するために必要なツールへのアクセスを制限することで、中小企業を衰退させている」とFloyd氏は主張する。

 

オンライン取引で中小企業に力を与える

Floyd 氏は、オープン・コマースのコンセプトを発展させるため、米国の小売業者にも同プラットフォームを広げたいと考えている。その機会は、Amazonの200万人のサードパーティセラーの中から、かなりの数の採用者を引きつける可能性がある。

「オープン・コマースは、中小企業により自主性と自由を与え、本物の最高品質の製品を提供する信頼できる取引相手と関わることを可能にし、オンライン取引の土俵を平準化する」とFloyd氏は述べた。

アフリカとラテンアメリカで展開する同社の事業では、会員小売業のリテンションレート(顧客維持率)は99.8%に達する。コマース・ネットワークにより、加盟小売業者は卸売業者や流通ブランドとつながることができる。さらに同氏は、オープンなコマース・プラットフォームがマーケティングや融資のオプションを提供するため、すべてが1つのプラットフォームを通じて行われると指摘した。

Floyd氏は、サプライとテクノロジー・コンポーネントの構築に8年を費やし、小売業者や流通業者と協力して彼らの問題を理解することに多大な時間を割いた。彼らの問題は一貫して類似していたため、同氏は多くの共通点を見出した。彼らはお互いを知らないが、互いにマーケティングを行い、業務を合理化する方法を必要としていたのだ。


※当記事は英国メディア「E-Commerce Times」の8/5公開の記事を翻訳・補足したものです。