Amazonは、空輸用ドローンによる荷物配送の実現に向けて、政府の重要なハードルをクリアした。同社は8月31日、米連邦航空局(FAA)よりPart135の認可(米国連邦航空規則に基づくドローン運用に関する認可)を取得し、Amazon Prime Airが航空運送業者として事業を行うことが可能となることを明らかにした。今回の認可により、Amazonは昨年発表したドローン技術を利用した試験的なプログラムの下で、商用配送を行うことができるようになる。

 

「Part135の認可は、FAAがAmazonの技術とプログラムを調査し、FAAの安全と運用のガイドラインに準拠すると判断したことを意味する」と、米国のコンサルティングサービス会社Pund-ITの主任アナリストであるCharles King氏は説明している。

 

「今回の認可取得により、Amazonはドローン配送実現に一歩近づくことになる」と同氏。

Prime Airを統括するAmazon副社長のDavid Carbon氏は、広く報道された声明の中で、FAAの決定を称賛した。

「今回の認可は、Prime Airにとって重要な一歩であり、将来、世界中の顧客に荷物を届ける自律飛行ドローンの配送サービスにおけるAmazonの運用と安全手順に対するFAAの信頼を示すものだ」と話している。

 

 

住宅でのドローン用ポート

ドローンによる配送は、Amazonと消費者の両方にメリットをもたらす。

「同社の目標は、特定の商品での配送時間を短縮し、注文後30分から60分で荷物が届くようにすることだ。これによって、いくつかの市場やシナリオにおいて、Amazonは競争上の優位性が得られるはずだ」とKing氏。

「より低コストかつ迅速なラストマイル配送(最終消費者への配送)システムの実現によって、人々がAmazonで買い物を続け、地元の店舗に押し掛けなければならないで緊急のニーズを減らすことができるだろう」と、米国のテクノロジー企業Enderle Groupの社長兼主席アナリストであるRob Enderle氏は付け加えている。

 

ドローン配送は、消費者に瞬間的に近い配送時間によって満足感を与えるだけでなく、緊急性が重要となる、医療用の処方薬などの緊急物資配送などにも利用できるとKing氏は指摘。

 

また、ドローンによって、より安全な配送も実現できる。

「荷物を受け取る人が在宅している場合のみの配送とする計画である」と、Enderle氏。

さらに、ドローンは警備された庭や屋上バルコニーのような場所といった、より難易度の高い場所への配送もできる、と続けた。

「最終的には、住宅の上部にドローン配送用の離着陸場を付けるための改築を始めるだろう」と予測している。

 

「ドローンでは自分が居る場所に配達できるので、ポーチ・パイレーツ(置き配泥棒)のリスクと消費者やアマゾンの関連コストが大幅に削減される」と同氏は言う。

 

Amazon以外への影響

今回のFAAによる認可は、Amazonだけでなく、配送業界全体にとっても重要なものであると述べるEnderle氏。

「これは、広範囲でのドローン配送に向けた明確な道筋と進展を示している」。

 

Amazonに対する認可は、GoogleとUPS(米国の貨物輸送会社)に対して行われた同様の許可に続くものである。「一連の認可は、ドローン配送が比較的迅速に実現されるだけでなく、低価格と高い安全性を保証するための競争と監視の両方がすぐさま始まることを示している」と同氏は述べている。

 

Googleと同じく、Alphabetを親会社に持つWing(米国のドローン企業)は、2019年4月にPart135の認可を取得した。それ以降、WingはパートナーであるWalgreens(米国の薬局チェーン)やFedExとともに、バージニア州北部でドローンによる配送を行っている。また同社は、オーストラリア政府からキャンベラでのドローン配送の承認も取得している。

 

UPS Flight Forward(UPSのドローン配送子会社)は、2019年10月に、Part135の認可を取得し、直ちに、ノースカロライナ州のローリーにあるWakeMed病院の敷地内でドローン配送を開始した。同社は声明において、ドローン配送は、輸送時間の最短化によってもたらされる効率向上や、医療従事者による患者へのより良いサービス提供に有効なヘルスケア業務において、必要とされている、と述べている。

 

AIを使ったドローン

ドローン配送は、少なくとも初期段階では、いくつかの制限に直面するだろう。飛行範囲は6~8マイルに制限され、風や寒さ、暑さがパフォーマンスに影響を与えうる。そして、高い建造物や送電線などの障害物もあるだろう。

「ドローンは、敵、または時に、獲物とみなした鳥によって、攻撃される可能性もある」とEnderle氏。

「犯罪率もまた、ドローン配送が提供される場所に影響を与えるだろう」と同氏は付け加えた。

 

Amazonの最新型ドローンMK27は、こうした課題のいくつかに正面から挑んでいる。例えば、AI(人工知能)を使って、障害物に遭遇したときに何をすべきかを判断する。障害物を回避できない場合、ドローンは貨物の配送を遅らせるか、ミッションを完全に中止するといったことだ。

 

ほとんどのドローンは、障害物に関する判断を人間のパイロットに頼っている。しかし、AmazonのMK27は、独自のコンピュータビジョンと機械学習アルゴリズムを使用して、配送時に遭遇する可能性のある障害物に対処している。

 

MK27にはもう一つの優れた特徴がある。ヘリコプターのように離着陸するが、空中では飛行機のように高速で飛行することができるのだ。

 

クリアすべきより多くのハードル

最初のドローン部隊にとっては、インフラや人員も課題となるだろう。

Enderle氏は、「ドローンに対応した拠点が必要だ。そして、ドローンサービス事業者間の調整、作業量に応じた十分な数のドローンや部隊を管理するための訓練を受けたドローンオペレーターが必要となる」と話す。

 

消費者のドローン配送の受け止め方について、問題が生じる可能性もある。

「消費者がサービスにどのように反応するかは、不透明だ」とKing氏。

「多くの人はきっとサービスに興味を持ったり、熱狂するが、自律飛行ドローンが自分の家の近くを飛ぶことを嫌がったり、怒ったりする人もいるだろう」とKing氏は話している。

 

また、ドローン配送企業にとっては、さらに規制上のハードルが待ち受けている。

今年末までに、FAAが、群衆の上をドローンが飛行するためのフレームワークとなる規制を最終決定することが予想されており、これはドローンでの配送を行おうとするどの事業者にとっても、重要なものとなるだろう。

このフレームワークには、最小型を除くすべてのドローンに身元と場所の送信を要求する規則、テロリストの阻止や空中衝突の防止を目的とした対策が含まれる見込みだ。

また、自律飛行を管理するためのより多くの規制や、許容される騒音レベルはどうあるべきかといったドローン自体に関する基準も示される予定である。

 

これに加えて、低高度ドローンを管理し、空が3Dのビリヤード台となることを防ぐための新たな航空交通システムを開発する必要がFAAにはある。

 

しかし、すべての問題が解決されれば、ドローン配送は比較的すぐに実現するはずだ。Enderle氏は次のように述べている。「2021年末までには、いくつかの地域でドローンを利用できるようになるかもしれないが、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で多くの市場で実施に悪影響が生じている。2026年までには、ドローン配送が、米国内の多くの地域に存在する密集した農村地域で比較的一般的になると予想される」。

 

※当記事は米国メディア「Ecommerce Times」の9/1公開の記事を翻訳・補足したものです。