AI統合の機会を特定し、実験やスケーリングを行うための統制的なアプローチは、マーケティング成果の向上をもたらす。

 

本記事の執筆者は、米国の製紙企業Georgia-PacificのCPG(日用消費財)マーケティングおよびCX(カスタマーエクスペリエンス)担当SVPを務めるLaura Knebusch氏である。

 

AIの活用は難しい場合があるが、その機能を理解し、適切なプログラムに投資することで、反復作業を減らし、アイデアを生み出し、ベストプラクティスを特定し、意思決定を改善することができる。これによりマーケターはコストを削減し、ブランドに完全に活性化することができるのである。

 

Georgia-Pacificのマーケティングチームは、機会を特定してAIやさまざまな種類のテクノロジーを自社システム上で実験し、スケーリングするための統制的なアプローチを採ってきた。我々のチームはこれまでの1年半の間に、AIツールが当社における高価値な機会を活用するのを支援する具体的な方法を発見し、新たな高みへと前進した。

 

問題点の特定

チームの業務や成果物を強化する上でAIやその他のテクノロジーの可能性を把握するには、改善すべき分野を特定し、それらのプロセスにAIを統合するための明確なロードマップを作成することが不可欠である。この戦略的アプローチにより、チームはこれらのシステムに完全に適応し、それらを効果的に活用できるようになる。

 

当社では、まずブレーンストーミングとシステム内の問題点を特定することから始め、特にコンテンツ開発の進捗を改善する方法に焦点を当てながら、AIのテクノロジーを活用してワークフローを強化する方法を検討した。

 

我々は、ブリーフィングやアイデアの創出から、クリエイティブ開発、クリエイター評価の作成、さらには必要なデジタルストレージやタグ付けに至るまで、主要なステップをまとめたコンテンツ開発のプロセスマップを設計した。この仕組みが整ったことから、我々はAIの恩恵を受けることができるステップを簡単に特定し、一連の実験を組織化して、すぐに実験を開始できるソリューションと高価値な機会という2つの中心的な分野を検討した。

 

我々は、アイデアの創出やコピーライティング、クリエイティブ評価の初期段階を含むビジネス分野を特定し、実験を行った。特定のAIツールで実験を行った後、これらのフェーズでAIソリューションを導入することで時間とコストを節約し、デジタル広告キャンペーンの全体的な成功機会を向上させることができたのだ。

 

アイデアの創出にAIを活用

クリエイティブなブレーンストーミングの初期段階では、アイデアを具体的なビジョンに変換するために、キャンペーンコンセプトの明確化のためのムードボード(アイデアがより詳しく伝わるように関連する素材を集めコラージュしたもの)の作成が必要になることがよくある。

 

以前は、当社のマーケティングチームが多額の費用をかけて代理店と協力し、ムードボードを作成していた。しかし、現在では、AIの統合により、独自のツールを活用して迅速かつ効率的にムードボードをデザインできるようになり、その結果、コストを節約して他の支出に振り向けることができるようになった。

 

コピーライティングの実行

AIリソースを実験する初期段階において、我々はコピーライティングAIツールと提携し、ソーシャルメディアコピー、eコマースコンテンツ、その他のデジタルコピーのバリエーションの初期ドラフトを生成した。このテクノロジーは、初稿と最終的な成果物とのギャップを大幅に縮め、完成率は最大で50~80%に達した。

 

その後、社内のチームが生成されたコンテンツに人間の創造的・戦略的思考を重ね合わせた。以前はこのプロセスで3~4回の編集が必要だったが、AIの統合により作業時間が短縮され、ワークフローが大幅に効率化された。

 

eコマースコンテンツに関して、このツールは本質的に検索エンジンに最適化されたコンテンツを構築し、チームの手作業を省いてくれる。eコマースのコピーではアルゴリズムが頻繁に変更される可能性があるが、AIがその調整を代行してくれる。

 

広範なA/Bテストを通じて、このツールはeコマースコンテンツページのコンバージョン率を一貫して最適化することがわかった。これは、オンライン購入環境では特に重要なことである。このツールは最終製品までのプロセスを迅速化し、一貫して優れた成果をもたらしてくれる。

 

デジタル広告評価の再考

デジタル広告への投資が増加するなか、デジタルコンテンツを効率的に作成し、市場での効果に自信を持つことが重要である。デジタルコンテンツや関係者間のコラボレーションに関しては、多くの場合、何度もフィードバックや編集を繰り返す必要があり、多くの時間がかかる。

 

このプロセスを効率化するために、当社ではデジタル広告素材を分析し、動画や画像のインパクトを予測し、さまざまなデジタル戦術のベストプラクティスを統合するツールを使用している。当社では新しいキャンペーンを開始する前に、このツールを使ってデジタルクリエイティブをスキャンし、業界のベストプラクティスと当社のブランドアイデンティティに基づいた総合的なスコアを提供している。このツールにより、広告効果を事前に評価することができ、デジタル広告の取り組みを強化するとともに、何度も評価を行う必要性を最小限に抑えることで、時間を節約することができる。

 

デジタル環境が進化し続けるなか、AIはマーケティングの未来を形作るうえで極めて重要な役割を果たし続けるだろう。AIテクノロジーを取り入れ、その可能性を最大限に活用することで、企業は常に変化し続ける市場で先手を打ち、成功を収めることができる。Georgia-Pacificでは、この技術革命の最前線に立ち続け、マーケティング活動を最適化し、ブランドを新たな高みへと引き上げる新たな方法を模索し続けることに尽力している。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の6/18公開の記事を翻訳・補足したものです。