ブランドは、情報をただ見たり聞いたりすることを超えるような、物理的な場所で新しい方法で商品に触れたり関わったりするデジタルサイネージプラットフォームを提供することで、より良いマーケティングや顧客のニーズに応えることができる。
デジタルサイネージ自体は、それほど新しいものではない。このコンセプトは、小売店やビジネスの場所で、ターゲットに合わせた情報やエンターテインメント、商品販売、広告を提供するために長年存在してきた。目新しいのは、ネットワーク配信の背後にある改良された機能と人工知能（AI）である。
当初、デジタルサイネージのプロセスは、事業主がセントラルな場所から管理する、相互接続されたデジタルディスプレイのネットワークを使用したものであった。この柔軟性のおかげで、事業主は物理的な場所において、あらゆるオーディエンスのニーズや時間帯に合わせてメッセージを調整することができた。現在では、AIがプラットフォームに組み込まれているため、パーソナライズされた販売や顧客サービス、より没入感のあるショッピング体験を現場で提供している。
スマートなAIマーケティングメッセージ
米国のデジタルサイネージ企業Spectrioの事業開発担当シニアディレクター、Christian Armstrong氏によると、AIを使用したデジタルサイネージは、ターゲットとするオーディエンスに対して、50%より関連性の高いコンテンツを提供し、より多くのインタラクションを促進できるという。
「電子看板」とも呼ばれるデジタルサイネージは、LEDウォール（LEDパネルを組み合わせることで、屋内外問わず、さまざまなサイズや形にカスタマイズすることができる映像ビジョン）、プロジェクション、LCDモニターなどのディスプレイ技術を指し、Webページやビデオ、道案内、レストランメニュー、マーケティングメッセージ、デジタル画像などを鮮やかに表示する。
これらの商業用テレビスクリーンは、大型のビデオウォール（壁一面にディスプレイを並べ、一つの画面とする映像システム）、大型スクリーン、または店内にあるシェルフの上部に設置される小型スクリーンとして継続的に使用される。
デジタルサイネージが効果的であるためには、店内にいる買い物客の注意を引き、競争力のある価格を探している間、彼らの目を携帯電話から離させるだけの説得力がなければならない。デジタルサイネージが正しく実行されれば、顧客は店内を歩き回りながら、マーケティングメッセージに完全に引き込まれる。
「小売店で重視すべきは、買い物客のポケットに携帯電話をしまわせ、購買時点でその顧客と関わることだ」と、同氏は語る。
デジタルサイネージにおけるダイナミックマーケティングの利点
Armstrong氏は、従来の実店舗におけるデジタルサイネージの使用が人気を集めていると述べた。同氏がこのマーケティング手法に初めて関わった20年ほど前は、ほとんどの人がそれを異質なコンセプトだと捉えていた。
「今日のデジタルサイネージは、その多くが体験型である。小売業者がより賢くなり、テクノロジーが向上するにつれ、特定のシナリオに基づいてコンテンツをトリガーするコンピュータービジョンやアナリティクスのようなものが導入されつつある」と、同氏は指摘する。
クイックサービス方式の飲食店は、デジタルサイネージがいかに効果的であるかを示す典型例である。たとえば、Starbucksの例を見てみよう。
長い列に並んで待っている間、Starbucksはメニューの表示をその場で変更して、より早く用意でき、より早く注文を処理でき、より早く顧客をさばける商品をアピールすることができる。そして、顧客の列が短くなったら、用意するのに少し時間がかかるかもしれないが、より利益率の高い商品を宣伝するように表示を変えることができる。
他のシナリオとしては、クイックサービス方式の店舗では、モーショングラフィックとともにメニュー項目を表示し、特定の商品やサービスを購入するよう人々を惹きつけることができる。
「静的なメニューボードでは、販売時点における顧客の意思決定に影響を与えることはできない。しかし、デジタルメニューボードを使えば、当社の分析技術により、店舗は簡単なレーダースキャナーを使うだけで、行列の長さをリアルタイムで確認することができる。我々は、その行列だけで、スクリーンに表示されるコンテンツを変更することができるのだ」と、Armstrong氏は説明する。
AIはいかにしてマーケティングを改善するか
デジタルサイネージプラットフォームに追加された機能セットの重要な部分は、測定コンポーネントである。AIにより、小売業者はデジタルプラットフォームが収集するすべてのデータを活用し、より良いコンテンツを決定するためのインテリジェントな意思決定を行うことができるようになる。
Spectrioの製品に組み込まれている2つの例は、人目につかないレーダー技術とコンピュータービジョンである。レーダーコンポーネントは、ディスプレイの前を通り過ぎる人を認識し、どれくらいの時間そのスクリーンに向かって立っていたかを認識する。スクリーン内のカメラは、個人のデモグラフィック、年齢層、さらにはコンテンツを見ているときの気分など、感情をも識別する。
なぜこれが重要なのだろうか？
AIはそのデータを推定し、ある時間にどのようなコンテンツが再生されていたかに結びつけ、そのデータセットを小売業者に提供する。Armstrong氏は、このデータセットには、スクリーン上でその商品を見ていた人や、どのようなコンテンツが再生されていたかに基づいた販売商品数が含まれうる、と付け加えた。
「これは、小売業者がすでにオンラインコンテンツの効果を測定している方法とよく似ている。これにより、経営陣はリアルタイムで店舗の意思決定に影響を与えることができる」と同氏。
Spectrioのテクノロジーはすべてクラウドベースであり、Webブラウザーからアクセスできるため、現場の店舗オーナーや本社にあるプログラムされた制御システムが、インタラクションの動作をコントロールできる。
「利用可能なコンテンツがあり、それがビデオや画像であるならば、それをプレイリストにドラッグ・アンド・ドロップし、ビデオの作成担当者を呼ぶだけでスクリーン表示を変更することが可能だ」と、Armstrong氏は指摘する。
コンテンツ、クリエイティビティ、アナリティクスのユニークな融合
Spectrioが他のデジタルサイネージ・ソフトウェア・プロバイダーと比べてユニークなのは、同社がスクリーンに映し出されるコンテンツに重点を置いている点である。同社は、メディアとデジタルサイネージの両方を含むさまざまな用途向けに、約8,500のアセットを制作する独立したクリエイティブ部門を擁している。
Armstrong氏によると、Spectrioは、現場でレーダーとコンピュータービジョンを使ってコンテンツの効果を測定することもできるという。測定後、同社はプラットフォーム契約者と協力して、コンテンツの品質や顧客との関わり方を改善する。目標は、組織のコミュニケーション上の課題を解決することである。
「我々は最近、大手の小売ブランドと多くの会話をしている。多くの注目を集め、話題になったのは、コンテンツの配信、コンテンツそのもの、そして測定と改善という3つの柱を組み合わせる当社の能力だった。我々は、小売業のさまざまな場面において、このことが大きな牽引力になっていることを実感し始めている」と、Armstrong氏は締めくくった。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の3/27公開の記事を翻訳・補足したものです。
