eコマースサイトは、グローバルな市場への入り口となっている。オンライン小売は、取引をより便利に、よりアクセスしやすくすることでショッピングを一変させた。だが、企業がデジタルの世界へ突き進むにつれ、「eコマースプラットフォーム」は「ただカートに商品を追加する機能」の意味を超えている。
ユーザーがショップページにアクセスするとすぐ、探しているものを見つけるために必要なものすべてに素早くアクセスできるようにしなければならない。この目標は単純に思えるかもしれないが、これを達成することが、ユーザーフレンドリーな体験の基本的なベースラインとなる。顧客をショッピング体験でただ満足させるだけでなく、感動させたいのだ。
いくつかの一般的なユーザーエクスペリエンス(UX)の洞察から、eコマースストアを復活させるか台無しにするか、そのどちらの可能性もある見落とされがちな間違いを確認していこう。
ポジティブなeコマース体験の重要な要素
オンラインで購入を完了したとき、「そのeコマースサイトからまた購入したい」と思わせる理由は何だろうか。または、「その時の体験を誰かに話したい」と思わせる理由は何だろうか。eコマース企業は、ユーザー中心の設計を採用することで、顧客に共感し、ショッピング体験をできるだけ楽しいものにするべく努力をしている。
オンラインストアの優れたUXを促進するのに役立つ、いくつかの要素を以下に説明していく。
詳細な製品情報
多くのeコマースストアにとって、販売している製品が彼らの生業である。提供する商品こそ、顧客がそこにいる理由のすべてなのだ。顧客は何かを購入したいと考えている。理想としては、あなたが提供する商品を。その理由だけでも、製品に関してできるだけ多くの情報を提供したいと思わせるには十分だろう。具体的な内容は次にリストアップする通りである。
・独自の分かりやすい商品名
・明確で高画質な画像
・サイズと仕様(必要ならサイズチャートも添付する)
・機能の詳細な説明
・価格と利用可能な割引
・過去の購入者からの評価とレビュー
・色とバリエーションのオプション
パンくずナビゲーション
ユーザーは、製品について知りうる限りの情報を見た後、「探しているものとは少し違う」と判断するかもしれない。多くの場合、ユーザーはサイト内を探し続け、ほかの製品オプションを閲覧していく。ユーザーが「戻る」ボタンを押したら、中断したところからすぐ買い物を再開できる必要がある。ユーザーは気が変わった後でも、簡単に元に戻る方法を見つけることができる、というのが、「パンくずナビゲーション」の本質である。
精力的なユーザーテスト
アクセシビリティチェックリストは、Webサイトを最適化し、ストアフロントのUXをテストしようとする企業にとって、非常にありがたいものである。米国に本社を置き、ウェブアクセシビリティ対応にするためのソリューションを提供するaccessiBeが提供するような無料のチェックリストを参照することで、Webコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)を達成し、ポジティブな顧客体験を実現することができる。ユーザビリティテストには、ユーザーインターフェース(UI)のモデレートされた対面のテスト、ユーザー調査、本格的なUX監査も含まれる。
最大限のアクセシビリティ
eコマースWebサイトは、できるだけ多くのユーザーに理想的なオンラインショッピング体験を提供する責任があるため、精力的なユーザーテストは不可欠である。アクセシビリティに配慮したWebサイトがあるということは、事実上、どのような人でもそのページをうまく利用し、操作できるということであり、サイトのコンテンツはすべての人にとって読みやすい、ということである。たとえば、視覚や聴覚に障がいのあるユーザーや、使用言語が異なるユーザーでも、UIをフルに活用し、そのコンテンツから価値を引き出すことができるようにしなければならない。
eコマース企業が犯しがちなUXの間違い
逆に、オンライン購入時に、カートを放棄したり、他の場所で製品を探したりする原因は何だろうか。以下のeコマースの過ちは、一見些細なことに思えるかもしれないが、ストアのUXを左右する可能性がある。
画像の多様性が欠落
潜在顧客には、製品の使用例や使用方法を十分に理解できるよう、製品の各種設定を確認できるようにする必要がある。繰り返しになるが、eコマース企業は、可能な限り多くの製品情報を提示し、購入者が製品をカートに追加するあらゆる理由を提供するように努めるべきである。異なる角度から、さまざまな文脈で複数の画像を用いて製品を正確に表現すること。また、可能であれば、動画やGIFのような動的なフォーマットを取り入れることも検討してほしい。
分かりにくい操作
あなたのサイトを初めて訪問した人にとっても(初めて訪問した人にとっては特にそうだろう)、ページの構成やデザインはわかりやすく、操作しやすいものであるべきだ。特定の何かを探すときに迷うことを良しとする人はいないし、何かを見つけるまでの行程はスムーズで予測できるものであるべきである。たとえば、多くのサイトでは、特定の質問に答えられるように、目立つ検索オプションやチャットボットを備えており、カスタマージャーニーに沿ってユーザーを支援している。
複雑なチェックアウト
シームレスなUXを目指すeコマースサイトにとって、チェックアウトは最優先事項である。結局のところ、チェックアウトはユーザーが購入に至る前の最後のステップなのだ。このため、商品のサイズ、数量、色の変更など、カートの中身をユーザーが簡単に編集できるようにしておく必要がある。配送先住所の入力から「注文する」を押すまで、ユーザーに摩擦のないチェックアウトを体験してもらわなければならない。
限定的な決済オプション
複数の決済方法を提供することは、コンバージョンの促進と見落とされがちなアクセシビリティへの配慮でもある。eコマース企業は、購入者を「デビットカードやクレジットカードを利用できる人」に限定しないために、PayPal、Apple Pay、Venmo(米国で広く使われているPayPal傘下の個人間送金アプリ)といった多様な決済方法のオプションを顧客に提供するのが理想的である。
メタタグの欠落
効果を発揮するためには、メタタグ(Webサイトに関する情報を検索エンジンに伝えるためのHTMLタグ)やAltテキスト(画像に紐づけられたテキスト。代替テキスト)は、推定的ではなく、説明的でなければならない。考え抜かれた命名規則はSEOを高めるだけでなく、Webサイトのアクセシビリティも改善する。メタタグにキーワードを詰め込んだり、Altテキストとしてファイル名を使ったりすることは推奨できない。
eコマースUXデザインの新しいトレンド
eコマースの顧客体験が確実に良い結果を生み続けるよう、販売者は業界全体で起こっているトレンドや変化に適応し、常に最新の状態を維持しなければならない。これらのトレンドのうちの3つを紹介する。
ますます厳しくなるWCAG基準
アクセシビリティガイドラインがますます厳しくなっているため、今日のWebサイト開発者は、認知能力や身体能力に関係なく、すべての人に配慮したコンテンツを制作することを優先している。この文化的な変化は、ますます多くのWebサイトがコンテンツの全体的な品質と、それがユーザー体験にどのような影響を与えるかに注目しているよい例となっている。
今日、Webサイトのホストは、多くのアクセシビリティ要素を考慮しなければならない。これが、無料のユーザビリティチェックリストが貴重なツールである、もう1つの理由である。これらの基準は常に更新されているため、最新の基準を常に把握しておくことが不可欠である。
eコマースにおけるAIの普及
チャットボットからコンテンツ作成まで、AIの高度な自動化機能により、eコマース業界の企業は、より短時間で、より多くのことを達成できるようになった。AIの用途は、特に販売や小売の分野で日々、新しく発見されているようだ。したがって、ブランドは自社の収益を支えるテクノロジーを積極的に研究し、それらを自社の技術スタックに統合するための詳細な戦略を策定しなければならない。
たとえば、マーケティングチームは、リードの育成や製品を推奨するための自動化ツールとして、AIが生成したスマートモジュールを採用することが多い。これらのモジュールは、購入者がサイト上で行った特定のアクションに基づいて、購入者が興味を持ちそうな関連コンテンツを表示し、さらなるコンバージョンを促す。
ライフサイクル最適化のためのユーザー行動追跡
顧客それぞれのライフサイクル全体を理解することは、すべてのマーケティングおよび営業チームにとっての課題である、と言っても良い。このライフサイクルを最適化することは、業界における顧客体験を決定し、その情報を活用して、オンラインや一般的な場合の双方において、ブランドとのより生産的な交流を促進することである。
すでにサイトを使用している人々の行動を戦略的に追跡することで、この有益なデータの一部にアクセスすることが可能になる。現代の企業は、顧客がライフサイクルのどの時点で摩擦を経験しているかを特定するために、このデータを活用している。これらの障害のどれかは、標準以下のUXに起因しているのだろうか。既存の顧客ベースの行動を調べることで、より多くの価値を獲得し(理想的にはより売上があがる)、すべての顧客ライフサイクル全体の今後の更新に活かすことができる。
結論:常にユーザーに共感する
eコマース企業やデジタル店舗がユーザーに共感していない場合、次のようなことが起こる。オンラインストアを訪問するが、思うような機能ではなかったり、期待したものと違ったりする。フラストレーションがたまり、直接の競合他社に移ってしまう。これは、誰もが経験したことがある。ユーザー中心設計を導入することは、あらゆるeコマースサイトにとって、そのようなシナリオを回避し、購入を促し、そして何よりも顧客の喜びのために、最善の策なのだ。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の4/2公開の記事を翻訳・補足したものです。