ここでは、主要CRMプラットフォームにおけるAIイノベーションが、センチメント分析やキャンペーン作成などの機能をどのように変革しているかを紹介する。

人工知能はマーケティング業務を急速に変革している。主要な顧客関係管理(CRM)やその他のマーケティングプラットフォームは、洗練されたAI機能を統合しており、顧客感情の測定、従業員のトレーニング、製品の推奨、データの充実、さらにはターゲットキャンペーンの自動生成といった主要機能の支援を約束している。

 

米国のクラウドコンピューティングサービスの提供企業であるSalesforce社は、2016年にEinstein AI機能を発表したが、最近ではさらに多くのことが起こっている。ここでは、CRMにおけるAIの現在のマーケティング・アプリケーションと、この革新的なイノベーションを活用するためにチームをどのように位置づけることができるかを探ってみよう。

 

マーケティング・プラットフォームとCRMにおけるAI

英国のIT分野を中心とした調査会社Gartner社が1,400人以上のエグゼクティブ・リーダーを対象に行った最近の調査では、ジェネレーティブAIを試験的に導入する企業が過去1年間で3倍に増加している。

 

企業が最もAIを活用しているのはどこだろうか?それは顧客対応業務だ。最大47%の組織が営業、マーケティング、カスタマーサービスにAIを活用しており、中でもマーケティング業務がトップとなっている。ほぼ5人に1人のエグゼクティブが今年、マーケティングプロセスを改善するためにAIを使用またはテストしている。

 

Gartner社のアナリストであるFrances Karamouzis氏は、「組織は、単にジェネレーティブAIについて話しているだけでなく、それを前進させ、ビジネス成果を促進するために、時間、資金、リソースを投資している」と述べた。

 

ほとんどの主要な顧客関係管理(CRM)とマーケティングプラットフォームは、すでに自社製品にAI機能を導入しており、2024年にはさらに多くのリリースが予定されている。マーケティングリーダーとして、ここ最近で最も革新的なテクノロジーのひとつであるAIを十分に活用するためには、以下の分野に注力する必要がある。

 

1.感情

AIは音声やテキストを理解することができ、マーケティングチームがCRMシステムを電話、チャット、メモ、カレンダー、電子メールでの会話に使えば使うほど、これらのシステムは見込み客や顧客の感情を測ることができるようになる。

 

否定的な言葉や肯定的な言葉を選び出すように訓練された新しいAI機能は、顧客が会社の製品やサービスに特に満足している、あるいは不満を抱いているケースを特定することができる。この機能を提供するほとんどのCRMアプリケーションは、リアルタイムで会話をモニターし、経営陣にレポートを提供することで、潜在的に不満のある顧客について警告することができるのだ。

 

このテクノロジーの将来は、顧客の感情に応じて、事前に承認を得たうえで、自動的にeメールを送信できるようになるだろう。満足している顧客は、より多くの販売、口コミ、紹介などにおいて活用することができる。不満のある顧客については、彼らが競合他社を探し出す前にコンタクトを取ることができ、うまくいけば状況が好転するかもしれない。

 

2.トレーニング

今日のCRMやマーケティングプラットフォームは、営業やマーケティングのプロフェッショナルがどのように仕事をこなしているかを注意深く観察するように訓練されている。CRMやマーケティングプラットフォームは、電話、eメール、テキストなどのアクティビティを、チームの対応者やベンチマークと比較して追跡することを学んでいる。これらのシステムはまた、トレーニングの手順、スクリプト、ガイドラインを受け入れ、これらのルールをチームの行動と比較することができる。

 

この知識に基づいて、対話しながらリアルタイムで提案することが可能だ。(たとえば、「電話を切る前に、必ずお礼を言う」、「政治的な話題やその他の議論を呼ぶような話題は避けるようにする」などである)。

その後、チームメンバーやマネジャーに対する推奨事項を記載したレポートを作成できる。結果については、グループ内の他のメンバーとの比較や、各メンバーのリード、オポチュニティー、クロージングセールスの実績と照合することができる。

 

3.提案商品/勧告

ビジネススクールの1年生は皆、既存顧客が企業にとって最高の新規売上源であることを教わるだろう。現に、ビジネスをしている私たちの多くが、そのことを証明している。しかし残念なことに、私たちは新規顧客を獲得するという熱意にとらわれ、既存顧客ベースのビジネスチャンスを軽視してしまいがちだ。AIは、この問題を解決するのに役立つ。

 

過去の購入履歴、顧客の業種、類似顧客との取引、CRMデータベースに含まれるその他の人口統計情報に基づいて、新しいAIツールは営業やマーケティングチームのメンバーに、顧客に提供できる追加のサービスや製品を提案することができる。

 

見込み顧客が営業やマーケティングの提案を断った場合でも、その企業に関する公開情報や、どこでどのようにビジネスを行っているかに基づいて、他の提案を行うことができるだろう。このアイデアは、AIが顧客や見込み客に対して小売店の有能な営業担当者が行うのとまったく同じように、顧客から聞いた話に基づいて、追加のオプションを提案するということである。

 

4.充実したデータ

見込み客リストを購入したのに、データが不完全だったり不正確だったりしたことはないだろうか。マーケティング関係者の多くは、このフラストレーションを経験している。一流のデータベース会社でさえ、そのコストにもかかわらず、常に正確な情報を提供しているとは限らない。

 AIは、豊富なデータを通じて、すでにこの状況を変えようとしている。多くのCRMベンダーは、データベース会社と提携し、ボタンをクリックするだけで、連絡先や企業レコードに最新の情報を自動的に入力できるようにしている。

AIは主に以下の目的で使用されている。

 

  • フォーカスされた顧客や見込み客のレコードを見る
  • 1つまたは複数の外部ソースから、ターゲットに関する最新の人口統計データを検索する
  • 一致するデータベースをチェックした後、最新の情報を提供する


これらは瞬時に行われ、マーケティングチームは、より信頼性の高い、定期的に更新されるデータで作業することができる。

 

5.よりパーソナライズされたキャンペーンの自動作成

今日のAIの多くは生成的AIを特徴としている。つまり、チームが日常的な言葉で質問をすると、答えが返ってくるというものだ。しかし、そう遠くない将来、人工知能(AGI)が進化するかもしれない。そうなれば、人間のように思考するフル機能のアシスタントが実現することになる。

 

音声コマンドで、CRMシステムに「X製品を購入した連絡先にメールを送り、Y製品の割引を提案し、好意的な感情反応が返ってきたら、その製品を購入できるパーソナライズされたランディングページへのリンクを返信し、さらに付属製品の推薦をする」と指示すれば、それだけで完了する。

 

このようなキャンペーンが行われている間、あなたは介入し、承認し、実行することができる。しかし最終的には、AIがあなたのマーケティングチームの中で一人前のメンバーとして機能することになる。

 

マーケティング革新の次の波に乗る

これらの機能はすべて、現在利用可能であるか、または近々登場する予定である。大半はまだ初期段階なので、用心しながら慎重に進めよう。マーケティングリーダーとして、あなたの仕事は3つある。

 

  • データベースが可能な限り完全で正確であることを確認すること。そうでなければ、この自動化はうまく機能しない。この1年で、導入前にデータベースをきれいにすることだ。
  • AIポリシーを文書化する。社内で誰がAIを使用できるのか、どのようなAI機能が許可されているのか、どのような機能が可能なのかを明確にする。
  • ソフトウェアベンダーを活用する。ベンダーはこのようなものに投資しており、あなたが有料顧客であり続けるために使ってほしいと思っている。彼らがどのような機能に取り組んでいて、いつ利用可能になるのかを尋ねてみよう。そして、テストして実際に使ってみよう。

 

すべてが新しく、刺激的だ。しかし、CRMシステムのAIを十分に活用するためには、それが現在と将来のビジネスにとって何を可能にするかを理解し、その可能性に十分に投資する必要があるということである。


※当記事は米国メディア「Martech」の12/18公開の記事を翻訳・補足したものです。