Coresight ResearchDigital Wave Technology12月11日(月)に発表したレポートによると、生成AIテクノロジーの利用は小売業者にとって、好奇心の段階を超え、企業がより適切かつ迅速にビジネスを遂行できるようにするソフトウェア・ビジネス・アプリケーションの基盤となっているという。

 

19ページにおよぶ報告書は、製品デザインの強化、製品作成の自動化、製品の定義の向上、広告アイデアの作成の加速、および製品開発の推進のために生成AIテクノロジーがどのように使用されているかを概説している。

 

報告書によると、小売企業もAIによって大幅な生産性向上を達成できるという。2,000店舗以上を展開し、さまざまなカテゴリーの商品を販売する、売上高数十億ドル規模の北米のある小売企業では、生成AIを活用することで、デジタルストアへの商品導入プロセスの効率を90%以上向上させることができたという。

 

ソルトレイクシティの健康補助食品メーカーMIT45 も、同様の利益を上げている。

「当社は仕事の生産性を大幅に向上させることに成功し、80~85%の改善を達成した」と、CEOのRyan Niddel氏は述べている。

 

「契約書の作成や標準業務手順の文書化など、さまざまなプロセスを効率化するためにAIを活用している」。
「たとえば、6桁もの高額な給料をもらっている当社の法務顧問は、以前は契約書の草案作成に何時間も費やしていた。しかし今では、AIを使用して、わずか6分で草稿を作成し、迅速に改良できるようになった。これは、当社がAIを当社の業務にどのように積極的に組み込んでいるかを示す一例にすぎない」と彼は付け加えた。

 

退屈しのぎ

生成AIは、テキスト、音声、動画、画像のコンテンツを作成することで、広告のブレインストーミング・プロセスを加速させることもできると報告書は指摘している。フロリダ州ポンテベドラ・ビーチにある企業向けAIアプリケーションのプロバイダー、Digital Wave Technology社のCEO、Lori Schafer氏は、「クリエイティブの専門家は、自分たちの縄張りを侵されるテクノロジーに憤慨することがあるが、AIの場合はそうではない」と語る。

「コピーライターは依然としてパイロットでなければならず、AIは副操縦士だ。コピーライターはAIに何を探すべきかを指示する。AIは退屈な作業の多くを取り除いてくれるので、コピーライターは自分の書くものの戦略に集中できる」と続けた。

「単純な作業から時間を解放できるので、コピーライターはこのソリューションを気に入る。それは、彼らの仕事をより有意義なものにするのだ」。

 「AIがコピーを書き、画像を作成し、それをマーケティングチームのメンバーが校正・編集することができる」と、ミシガン州プリマスに本社を置く全国的な小売チェーン、Lover’s Laneの副社長兼共同設立者であるMike Allmond氏は説明する。

「これによりマーケティングチームが新しいキャンペーンや戦略を考案し、策定するのを助ける。一方で、作業はAIによって処理される」と同氏は語った。

 

生成AIは、適切に訓練されれば、翻訳ミスを回避、また、修正したり、社会的に受け入れがたい表現にフラグを立てたり、その地域でより効果的であることが証明されている言語を推奨したりすることができる、とオレゴン州ベンドにあるアドバイザリー・サービス会社、Enderle Groupの社長兼主席アナリスト、 Rob Enderle氏は付け加えた。

「これは、AIが初期の段階で大きなメリットを発揮した分野のひとつだ」と彼は語っている。

 

ターゲティングの好み

フロリダ州ボカラトンでAIツール、リソース、教育プラットフォームを運営するTop AI Toolsの創設者兼CEOであるBrian Prince氏は、「会社のマーケティングやクリエイティブ・イニシアチブを支援するためにAIを日々活用している者として、AIは、クリエイティブでマーケティング的な努力のために、余分な手、そしてより重要な頭脳を持っているようなものだと断言できる」と語った。

 

「データ分析や顧客セグメンテーションのような反復作業を効率的に自動化してくれるので、私のチームはより創造的な側面に集中することができる」。

「AIを活用したツールは、顧客の嗜好に関する洞察も提供できる。これは、小売業者の利益を高めるために、パーソナライズされた効果的なマーケティング・キャンペーンの立案に注力する小売業者にとって大きなメリットとなる」と、同氏は続けた。

 

こうした嗜好を特定するひとつの方法は、AIを使って人々が見ているコンテンツを分析することだ。トロントのデジタル・メディア・エージェンシー、 Hotspex Media,の事業開発担当副社長、Tricia Allen氏は、「これによってブランドは、デジタル広告と同じ、あるいは似たような感情を喚起するコンテンツ内で、メッセージをよりうまく調整できるようになる」と説明する。

 

エモーショナル・アライメント(視聴者の抱く感情の整理や調整)によって、アテンションが20%上昇した。また、視聴者を惹きつけ続けることにも成功しており、最後まで視聴された動画広告が12%増加した。」と、彼女は語る。

 

継続的改善の支援 

この報告書はまた、生成AIが製品を継続的に改善するプロセスにも役立つと指摘。製品の発売を完了させ、製品開発の継続的なサイクルに組み込むためには、製品フィードバックの分析が不可欠である、と同報告書は説明している。生成AIは、既存製品のレビューから情報を得ることができ、製品の改良に役立てることができる。

 

機械学習ベースのソリューションは、長らく製品レビューから感情を調査することができたが、テキストを分析し、要約し、構成するといった生成AIのユニークな能力は、この機能をさらに進化させている。製品レビューには、製品開発、製品説明、アトリビューション強化に役立つ貴重なデータが含まれている。

 

開発の初期段階で製品の問題を特定することで、小売業者やブランドにとってコストのかかる返品を減らすことができる、と同社は付け加えた。

「継続的な改善はすべての業界、特に小売業において重要であり、AIはこの分野で重要な役割を果たしている。顧客からのフィードバックや市場動向を常に分析することで、AIは製品改善の領域を特定することができる」。

「また、A/Bテストにも役立つため、小売業者はさまざまな機能を試して、何が最も効果的かを迅速に判断することができ、消費者のニーズをより満たす製品につなげることができる」と付け加えた。

 

AIの専門家と協力する

レポートでは、AIテクノロジーを導入する準備ができているブランドや小売業者に対し、ビジネスのニーズを理解し、セキュリティ、ポリシー、手順を備えたAI プラットフォームを提供し、機密情報を保護し、安全なAI倫理を遵守する組織と提携することを推奨している。

 

「AIの作成方法とビジネスソリューションの実行方法を理解している専門家と協力する必要がある」とSchafer氏は言う。「現在一般市場に出回っているAI モデルを使用しようとすると、幻覚の問題に直面する可能性がある。それは、AIが適切に訓練されていない事柄に対しては、誤った答えを提供する可能性があるということだ」。

 

世界的なサイバーセキュリティおよびマネージドセキュリティサービスプロバイダーであるTrustwaveのCISO(Chief Information Security Officer)であるKory Daniels氏は、より多くのビジネスインテリジェンスおよび顧客分析プラットフォームが生成AIをツールに統合するにつれて、小売部門はそれらのシステム内のセキュリティ保護を吟味し、監査する必要があると付け加えた。

 

「これらのツールの潜在的なメリットは大きいかもしれないが、これらのシステムのセキュリティはまだ証明されていない。従って、リスクとメリットを考えながら、CISOの主導の下、その影響を慎重に検討することが不可欠である」。

また、「小売企業は、生成AIを導入する前に、そのリスクとメリットを慎重に検討する必要があるのだ」とKory Daniels氏は述べている。



※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/13公開の記事を翻訳・補足したものです。