B2Bマーケターは、膨大な数の新しいマーテックツールを活用している。その中でも特に優れたツールを紹介しよう。

B2Bマーケターは、膨大な数の新しいマーケティングテクノロジーから多くの成果をあげているが、それにはシステム統合や予算の問題、ROIの実証など、少なからず課題が伴う。そして、世の中には数多くの選択肢がある。どの製品がB2Bの世界に最適だろうか?自身の業界や顧客に最適なものはどれだろうか?

ここでは、B2Bに最適な15の新しいテクノロジーを紹介しよう。これらをデータ、キャンペーン、セールス、そして戦略のカテゴリー別に整理した。


データ

・ABM(顧客が自社商品に興味や関心などを持ち、意図(インテント)を持って起こした行動)向けのインテントデータ:2018年頃にB2B業界に登場して以来、インテントデータはますます質の高いものになっている。「Propensity」の新しいアプローチの1つは、インテントの概念をAccount Based Marketing(アカウントベースのマーケティング)に適用するもので、ユーザーはインテントデータのシグナルをターゲットアカウントの記録に追加することができる。このプラットフォームでは、バイイングコミッティー(購買委員会)の選択や、メールやディスプレイ広告を通じたアウトバウンドキャンペーンのメッセージ開発とデザインができ、すべてHubspotSalesforceを通じて実施可能だ。


・プロスペクティングデータ:統合プロスペクティング・データプラットフォーム「Anteriad Data Cloud」を見てみてほしい。これは、B2B市場やバイインググループ、インテントにおけるセルフサービスや管理データを対象とするもので、コンテンツシンジケーション(第三者のサイトを含む複数のサイトに記事を提供・配布し、異なるサイトに同一のコンテンツを掲載すること)、プログラマティック広告、クロスチャネルコミュニケーションを実現する。


・データ管理:「Snowflake」は、究極のアウトソーシング型B2Bデータ管理クラウドであり、「スタック」に次ぐ次世代のマーテックとして位置づけられている。これを使うことで、ファーストパーティ、セカンドパーティ、そしてサードパーティのデータ全体にわたる顧客の真の360度ビューが可能となる。また、製造から財務に至るまで、企業全体のデータニーズをサポートしている。マーケターにとっての大きな利点は、サードパーティデータにリアルタイムで簡単にアクセスできる(Snowflakeは100社以上のデータプロバイダーと提携している)ことと、マーケティングの実行と分析のための便利なツールがあることである。


・パーソナリティプロファイリング:世界最大級のビジネス特化型SNSであるLinkedInのページの横にパーソナリティプロフィールをポップアップ表示するChrome拡張機能である「Crystal Knows」で分かるように、1対1のマーケティングという待望のビジョンが急速に現実に近づいている。ターゲットとするバイイングコミッティーのメンバーが「動機付けタイプ」なのか「質問タイプ」なのかを知ることで、何ができるかを考えてみよう。工夫できるものとしては、コピー、コンテンツ、営業トーク、交渉スタイルなど、数え上げればきりがない。Crystal Knowsが提供する「タイプ」は、おなじみのDISCパーソナリティフレームワーク(DISC性格診断:人の性格特性を他者との関わり方から分析する性格診断格)に基づくものである。


キャンペーン

・レスポンスエンゲージメント:「CredSpark」を使うことで、問い合わせやコンテンツのダウンロードなど、顧客のレスポンスポイントに戦略的にデザインされたアンケートやクイズ、調査を添付してエンゲージメントを高め、コンバージョン率を大幅に向上させることができる。これはパブリッシャーやイベント主催者に広く利用されており、テック業界や産業界で効果を発揮する。リードクオリフィケーション(購入可能性の高い見込み顧客を選別すること)の新たな秘密兵器でもある。


・簡単な動画編集:動画がB2Bコミュニケーションの重要なツールとして成長を続けるなか、私たちは皆、必死になって編集していることに気づき、その過程で気が狂いそうになる。「Descript」がもたらす奇跡は、動画トランスクリプトを編集すると、動画が自動的に調整されることである。ポッドキャストの編集にも使用でき、画面録画やクリップの作成、文字起こしもできる。天才的だ。


・ウェブサイトのパーソナライゼーション:1対1のマーケティングコミュニケーションの到来について話そう。「Mutiny」は、誰がウェブサイトを訪れたかに基づいて、即座にWebサイトを更新するように設定されている。それは業種別、企業規模別、その他の選択された変数別に、企業のIPやその他の識別子に基づいて行われる。AIツールを使ってコピー作成やデザイン変更を行ったり、訪問者の情報をカスタマイズしてパーソナライズされたランディングページやメールを作成したりすることが可能だ。カスタマーエクスペリエンスとエンゲージメントに関する世界的権威であるDon Peppers氏とMartha Rogers氏は、このツールを誇りに思うだろう。


・デジタル広告:検索、ソーシャル、プログラマティックなど、オンライン広告の管理と追跡は悪夢となりかねない。そこで、AIの力を借り、デジタル広告を全面的に可能にするツール「Albert」が生まれた。Albertは、入札可能な広告の90%をカバーし、多くの費用をかけることなく、最適化、パーソナライゼーション、パフォーマンスの最大化を実現できるという。


セールス

・eコマースForrester(米国の独立系リサーチ企業)は、B2Bのオフライン売上高が横ばいで推移する一方で、B2Bのeコマースは2021年の1.7兆ドルから2027年には3兆ドルに成長すると予測している。B2Bマーケターは、顧客の購買プロセスに対応させながら、eコマース機能をいかに自社の販売プロセスに適応させるかを考えなければならない。「Big Commerce」は、B2Bのセラーにバイヤーの行動に合わせた安全でカスタマイズ可能なソリューションを提供するSaaSプラットフォームの一例である。このツールは、SWK Technologies(米国のITコンサルティング企業)やその他のインテグレーターと提携しており、シームレスなサービスが行える手助けをしてくれる。


・見込み客宛てメールの自動化:営業担当者がメールを書くのが好きでないなら、AIにその仕事を任せてみてはどうだろう。「CallSine」を使えば、ユーザーは自社の見込み客のデータをアップロードし、販売している商品やサービスに関する様々な情報(宣伝、体験談、ケーススタディ、ブログなど)を追加することができる。そして、役割やペルソナ別にさまざまな連絡先にアプローチするためのプレイブックを作成し、提案された一連のメールメッセージを生成することもできる。担当者は必要に応じてメールのコピーを編集し、再生成する(「よりフォーマルに」、「決まり文句を減らす」など)ことができる。時間の経過とともに、ツールはより賢くなっていく。何より、これらのメールは個別に作成されているため、スパムフィルターを通過することができるのだ。担当者はメールを書く時間を減らし、営業活動により多くの時間を割くことができるようになる。


・リファラル管理:「Deeto」は、見込み客開拓の一環として現在の顧客を活用している。満足した顧客はオプトインして、体験談や個人のサクセスストーリー、ビデオなどのユーザー生成コンテンツを投稿することができる。DeetoのAI駆動型プラットフォームは、アドボケイト(熱狂的なユーザー)と見込み顧客をマッチングし、双方にメリットをもたらす1対1のやり取りを可能にする。営業担当者は、このような温かい紹介を利用して、自身の売り込みに信頼性と影響力を加えることができる。その見返りとして、参加した顧客はギフトカードや慈善寄付などの特典を受け取ることができる。一般的に、顧客は参加することに喜びを、あるいは誇らしささえ感じるそうだ。


・カスタマー・アドボカシー: Deetoに似ているが、おそらくより広範囲に焦点を当てているもう一つの新ツールは「ChampionHQ」である。営業だけでなく、マーケティングやカスタマーサクセスにも役立つように設計されたこのプラットフォームは、顧客層の隠れたアドボケイトを特定し、リファラルを生み出し、顧客のライフサイクルに対応し、ユーザーの行動を追跡してアップセルや更新を加速させるのに役立つ。


戦略

・チームワーク:マーケティングチームの機能不全は、中規模から大規模の企業では常に課題となっている。「OnLoop」は、生産性向上アプリを使用してこの問題を解決し、従業員に一貫した継続的なフィードバックを提供し、パフォーマンスレビューの価値と結果を向上させることを目指している。特に今日の在宅勤務環境では、パフォーマンス評価や同僚からのフィードバックのためのより優れたツールが歓迎されている。


・競合他社の情報:「Crayon」は、競合他社を監視するという単調な作業を自動化し、競合他社の動きに対抗する戦略を立てる手助けまでしてくれる。まさに天の恵みである。

 

 

では、これらをどう考えればいいのだろうか?

まず、マーケティングとセールスが密接に連携するB2Bの世界では、マーテックとセールステックの境界線はB2Cよりも曖昧になる。いくつかのセールス関連のテクノロジーがこのリストにランクインしたのはそのためだ。

次に、AIはあらゆる場所に存在しており、当然のものとなっている。これは、マーケターにとってはスリリングな新しいリソースであり、過去の行動に基づく予測に依存して将来の顧客行動に賭けるデータベースマーケティングの世界を経験してきた私たちにとっては、特に満足感が得られるものである。データがあらゆる場所で予測を後押ししているのはいいことだ。
しかし、だからといってAIを単なる流行語にするのは少し不愉快である。企業がAIを活用して現在の製品を改善し、新たな製品への扉を開く方法を模索するのは問題ないし、必要なことだ。だが、データモデリングが本当に製品の一部であるかにかかわらず、すべてのキャッチフレーズにAIを入れることはやめよう。

第三に、起業家たちが私たちの努力を合理化し、力を与えるくれる便利なツールを次々に生み出していることは心強いことである。


※当記事は米国メディア「
MarTech」の9/29公開の記事を翻訳・補足したものです。