ハンバーガーとシェイクのチェーン店であるShake Shackには、既存の店舗を改善しつつ、新しいマーケットで実践している成功のための戦略がある。

 

ニューヨーク市マンハッタン地区にあるフラットアイアンビルの近くで、1軒のハンバーガースタンドから始まったチェーン店Shake Shackは、今や米国をはじめ、世界中に450以上の店舗を展開するまでに成長した。同社は、新しい期間限定メニュー(LTO)や顧客のためのドライブスルー注文など、メニューと顧客体験を刷新している。こうした変化の背景には、測定・分析ツールに裏付けされた顧客との密接なつながりがある。

 

Shake Shackは、最近の期間限定メニューとして「White Truffle Burger(白トリュフバーガー)」と「White Truffle ‘Shroom Burger(白トリュフマッシュルームバーガー)」を発売した際、顧客の声にしっかりと耳を傾けた。

 

「これらの商品の開発は、以前の期間限定メニューであるBlack Truffle Burger(黒トリュフバーガー)について来店客から得たポジティブな反応に基づいて行われた」と、Shake Shackの顧客インサイト・分析ディレクターであるCharlie Frankievich氏は述べる。「白トリュフバーガーと白トリュフマッシュルームバーガーも同様に、顧客から高い評価が得られた。我々のチームは日々、店舗やキッチンでそうしたアプローチを大切にしている」。

 

顧客体験の測定

Shake Shackは、顧客からのリアルタイムのフィードバックを収集し、競合他社と比較したブランドパフォーマンスを測定するために、エクスペリエンスマネジメント会社Qualtricsの多くの顧客体験(CX)とブランド調査ツールを導入した。

 

Shake Shackは、QRコードやパーソナライズされたデジタル調査リンクを通じて体験を測定しており、顧客はそれをクリックしてフィードバックを共有できる。同社は、このフィードバックを利用して、主要なパフォーマンス指標を監視し、測定することができる。

 

「当社のチームは、社内外のテクノロジーを含む複数のシステムを通じて顧客のデータとフィードバックを管理しており、それにより集計処理と迅速なインサイトが可能となっている」とFrankievich氏は述べる。「我々は、ブランド調査や顧客の行動、顧客体験データを結びつけ、顧客がShake Shackについて何と言っているか、我々がその期待にどう応えているか、そして顧客の行動やShake Shackを好きなレストランとしてレコメンドする(薦める)可能性にどんな意味があるかを360度見渡せるようにしている」。

 

「LTR(レコメンドの可能性)」が重要な指標となる

Shake Shackは、このような360度の視点を持つことで、カスタマージャーニーのどの段階でも顧客の行動やフィードバックに基づいた行動をとることができる。しかし、同社はその中でも特に重要な指標である「LTR(Likelihood to Recommend/レコメンドの可能性)」に注目しているという。もう一つの重要な指標である「NPS®(Net Promoter Score/ネットプロモータースコア)」は、LTR指標の結果である。

 

同社は、商品パッケージからデジタルピックアップ、その他の手順まで、顧客の体験に加える変化について「プレッシャーテスト(特定の戦略等を評価するために設計された厳格な評価プロセス)」を行うためにLTRを使用している。これらの領域のいずれかにポジティブな変化があれば、顧客にリピートしてもらうことができる。

 

「我々のあらゆる調査から、ポジティブな顧客体験が、より多くの来店を促進することがわかっている」とFrankievich氏。「Shake Shackで最初にポジティブな体験をした新規顧客は、ネガティブな体験をした顧客に比べ、次の6か月間にリピートする可能性が40%~60%高くなる」。

 

また、Shake Shackは顧客のフィードバックから、高品質の食材と「心地よい体験」がブランドの強みであることも認識している。フィードバックでこれらの価値観に言及する顧客は、その考えに同意しない顧客に比べ、過去3か月間におけるShake Shackへの来店可能性が3倍高い。

 

「強固な顧客体験を確立し、顧客に期待される『心地よい』体験を提供することは、これからもコアなゲストを惹きつける最も効果的な戦略となる」と、Frankievich氏は述べる。

 

顧客体験を向上させるドライブスルー

Shake Shackは、レストラン経営者Danny Meyer氏のレストラン「Eleven Madison Park」のキッチンから、2000年に1台のホットドッグカートとしてスタートした。Meyer氏はMadison Square Park Conservancy(マディソン・スクエア・パークの保護団体)の設立に協力。同団体は、2004年に同パーク内で長く営業を続けている初代Shake Shackを作り上げた。

 

当初の店舗ではドライブスルーの設置はできなかったが、同社はこの10年で急拡大し、現在では全米32州、海外150か所以上に展開している。ドライブスルーでの注文は、新しい市場を開拓し、売上を伸ばして既存の市場を強化するために重要な役割を果たしている。

 

Shake Shackのカーブサイドでサービス係が注文を受け付ける。

画像提供:Shake Shack

 

「米国国内ではドライブスルー事業に重点を置いて、国内のコアマーケットで当社のリーチを拡大している」とFrankievich氏は語る。「これにより、Shake Shackを最も好んで注文する場所で顧客と出会うための、全く新しい場所とエンゲージメントの機会が生まれる」。

 

同ブランドにとってドライブスルーは新しいチャネルであるため、Shake Shackは「他のチャネルと比較して、このチャネルで顧客がどのように行動するかを学び続け、そのニーズに最適に応えるためにアプローチを調整している」と、Frankievich氏は説明する。

 

さらにFrankievich氏は、次のように付け加えた。「マディソン・スクエア・パークにある最初のシャック(店舗)がオープンして以来、啓発されたホスピタリティはShake Shackの成功の秘訣の基盤となっている。我々の体験測定プログラムは、これらの柱を数値化したもので、これによって当社のチームは、拡大を続ける店舗全体で体験の質を効果的に管理することができるのだ」。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の6/13公開の記事を翻訳・補足したものです。