消費者はAIに反発しているわけではない。AIが一線を越えず、付加価値をもたらすならば、むしろ受け入れている。
消費者はついにAIを受け入れ始めたのだろうか。この数年間の調査では、消費者がAIを嫌悪しているという結果が続いていた。しかし、米国のマーケティングソリューション企業であるOptimoveの「2025年版AIマーケティングにおける信頼とエンゲージメント調査レポート(2025 AI Marketing Trust and Engagement Report)」によると、今や57%の消費者が「体験の一部にAIを活用しているブランドはより信頼できる」と回答している。
これは、「AIの使用を明らかにする、または強調することはブランドの信頼性を損なう」というマーケターの一般的な懸念に異を唱えるものだ。しかし、この調査では、多くの消費者はすでにAIの関与を想定しており、効率の良い対応や関連性の高い提案のためだと受け止めている人が多いことが明らかになった。
同レポートによると、消費者の87%は、企業がAIを使用しているかどうかが分かると考えている。ほとんどの人は疑念を抱くどころか、むしろ受け入れる姿勢を示している。AIの関与に強い不信感を抱いているのはわずか5%だった。
AIが顧客体験の改善につながることを示す
つまり、ブランドはAIを隠すのではなく、とりわけ顧客体験の改善につながるように、有益で透明性のある形での活用に注力すべきである。
同レポートは、消費者がAIを活用したインタラクションに明確な利点を感じていることも示している。
- 回答者の32%は、時間の節約につながる場合にAIの価値を評価
- 28%は、「ブランドが自分たちのニーズを理解している証である」と回答
その影響は、消費者の実際の行動にも明確に表れている。消費者の4分の3近く(73%)がAIによるおすすめに基づいて購入した経験があると答え、半数以上が複数回購入している。
信頼が損なわれる場合
こうした利点があるにも関わらず、マーケターは依然として消費者の信頼を失う可能性がある。問題はAIを使用することではなく、不適切な使い方をした場合である。
主な懸念事項は次の通りである。
- 34%がデータプライバシーを懸念
- 24%が過度にパーソナライズされた体験に抵抗感
- 18%が的外れなおすすめが顧客体験の質を損なうと回答
これらの落とし穴は、同レポートで「不快感を生む領域(creepy zone)」と呼ばれる部分、つまり自動化が押しつけがましい場合、的外れな場合、あるいは過度に親密すぎる場合に該当する。解決策はAIの使用を減らすことではない。より適切に実行することである。
この「不快感を生む領域」を避けるには、新たなスキルが必要となる。同レポートは、「ポジションレスマーケター」という考えを提示している。これは、分析、クリエイティブ、オペレーションといった分野を横断して、AIを慎重に活用できる人材を指す。
「ポジションレスマーケター」の台頭
ポジションレスマーケターには、次のような役割が含まれる。
- 人間を意思決定のプロセスに関与させること(AIにまかせきりにしない)
- 秘密主義よりも透明性を優先すること
- データと自動化の利用方法について顧客がよりコントロールできるようにすること
この運用モデルであれば、透明性が確保され、データ安全性が保証されている限り、AIは信頼を損なう脅威ではなく、信頼を築くためのツールとなる。