マーケティングオペレーションは人材危機に直面している。ブランドを毀損することなく、AIテクノロジーはどこまで貢献できるだろうか?

最近では、どこへ行ってもAIに関する活発な会話を耳にする。多くの業界において、AIが仕事の範囲をいかに変えつつあるかを考えると、それは当然のことだ。ところが、マーテックの進化に伴い、マーケティングチームはそのペースに追いつくために奮闘している。

非常に多くのMOps(マーケティングオペレーション)に携わる人々が、疲弊し、手薄になっているのが現状だ。マーケティングオペレーションの人材不足により、企業は、熟練したプロフェッショナルの採用、トレーニング、および維持という3つの問題に直面している。

このような状況は経営資源を圧迫しており、経験豊富なマーケターの多くは戦略立案やパフォーマンスの最適化ではなく、特にコンテンツ制作などの分野で、初歩的なレベルのタスクをこなすことを余儀なくされている。


燃え尽き症候群と離職

ソフトウエア開発企業のDemandbaseによると、「新しい才能(人材)は供給源がなく、MOpsチームはトップヘビー(組織などにおいて上層部の割合が大きいこと)になりつつある」という。「理想的なMOpsチームは、ピラミッドのような構造になっていることだ。ベテランの実務担当者たちがこぞって戦略的イニシアチブに注力し、日々の運用と実行を担当する多くのジュニア(若手)チームメンバーがそれをサポートする。しかし、平均的なMOpsチームではジュニアレベルの従業員の数が少なく、上級レベルのチームメンバーがその不足分を補っていることが明らかとなった」。

マーケティングオペレーションの役割の大部分が、オペレーション機能の中のタスクやプロジェクトであるため、戦略的な作業を完了するための時間を見つけることは困難だ。 

その結果、上級および中間レベルのスタッフは、簡単すぎる仕事に飽きてしまうか、その仕事に関してより大きな戦略的責任とバランスを取ろうとする。これが燃え尽き症候群と離職率の高さにつながり、企業はマーケティングビジョンを推進する代わりに、後任者の採用とトレーニングに行き詰まることになる。

MarTechでは2022年にはじめて人材不足について論じたが、それ以来、何も問題は変わっていない。オペレーションリーダーは、新しいテクノロジーの役割を理解しながらも、自分たちの仕事を続けなければならないため、事態はさらに悪化している可能性がある。 

当然のことながら、AIはデジタルの鎧に身を包んだ輝く騎士として態勢を整えており、人材不足に正面から向き合い、企業がこれらの課題を克服するのをサポートする準備ができている。

しかし、AIは具体的にマーケティングオペレーションの人材問題をどのように改善できるのだろうか。そして、私たちはそれを受け入れるべきなのだろうか?


忙しいだけの仕事をするのではなく、AIを使って戦略に集中する

ChatGPTのようなAIテクノロジーは、MOpsの人材不足に対処する上で大きな進歩を遂げている。AIは、反復作業や単純作業を自動化することで、より高度なマーケティングオペレーションの専門家たちの作業負荷を軽減することができる。

これにより、彼らの時間とエネルギーが解放され、より戦略的で高レベルのタスクに集中できるようになり、最終的には、より効率的で効果的なマーケティングチームへとつながる。

大手テクノロジー企業のMOpsプロフェッショナルであるJessicaは、自分の仕事と会社にさらに多くの価値をもたらすことができるテクノロジーを見つけることを楽しんでいる。 

Jessicaによると、販売開発プラットフォームであるRevのようなツールは、シードリスト(メールアカウントのリスト)となる類似のターゲットアカウントを見つけるのに役立つという。 

「それは、CRMデータに集中し、優先順位を付けるのに役立つ優れたツールである。パイプラインやファネルを監視し続け、新しい取引が販売サイクルに出入りするとAIがアルゴリズムを適応・変更する。業界や企業規模などの会社の詳細や、一般的な情報だけでなく、ICPにとって重要なカスタムフィルターも調べてくれる」。

Jessicaはまた、Regie.aiのような、見込み客へのアウトリーチでカスタムパーソナライゼーションを行うツールが営業担当者の生産性を向上させていることも指摘している。そうしたツールは、趣味や見込み客のユースケースなどをクリエイティブに結び付けることができる。他にもたくさんあるが、アプリケーションを見つけてテストする時間を指定できることが重要なのだ。

ツールを多用するのではなく、販売やマーケティング業務内の戦略や機能の実行をレベルアップするために、AIを導入するのに適した場所を特定することが重要だ。すべてがつながることでワークフローの定義、プロセスの自動化、ボトルネックの特定が容易になるため、企業は統合システムの価値を認識している。


マーケティンオペレーションにおいてAIが重要な役割を果たせる分野

膨大な数のツールが市場に出回っているなか、タスクカテゴリや、AIチームメンバーに「仕事を任せる」ことができる場所という観点から、この混沌とした開拓時代をナビゲートすることが役立つ場合がある。


プロセスマッピング
AIツールを適切に組み合わせることで、効率的かつ組織化されたスケーラブルなプロセスを開発することができる。これは、ChatGPTを使って会議の議事録をタスクの項目別チェックリストに変えるような単純なことから始めることができる。

最終的に、インバウンドリクエストを受け取り、チーム内に追加の作業やパニック、焦りを生じさせることなく、24時間のタイムラインでそれを処理できるようになるはずである。


プランニング
予測や予算配分からキャンペーンの最適化、ターゲティングまで、AIはこれらのタスクに関連するボタン操作を自動化することができる。


データフロー
断絶されたシステムはいかにも2019年的だ。会社全体のデータフローを自動化していなければ、遅れをとることになる。CRM、メール、ソーシャルメトリクスから、顧客データのクリーニングと更新、レポート作成と可視化の自動化まで、もう誰もこれらを手動で行う必要はないのだ。


コードのアウトライン

大規模な開発チームはないだろうか? 開発の専門知識を持つマーケティングオペレーションの専門家は、ChatGPT(またはGitHub CopilotGhostwriterなどのツール)を使用して、最初のプロジェクトコードを素早く書き上げ、それを開発者に渡して完成させることができる。


データ抽出

誰かに単純作業をお願いしたいテキストやCSVがたくさんあるだろうか?ChatGPTを使うことで、名前や日付、キーワードを引き出したり、ソーステキストに基づいた質問に回答したりすることができる。


コンテンツマーケティングの高速化

HootsuiteHubSpotなどのソーシャルスケジューリングツールから、ChatGPTなどのライティングツールまで、AIはコンテンツの作成と配信にかかる膨大な労力を削減できる。

ChatGPTにブログ投稿やランディページの全文を作成させるべきではないが、専門知識を活かして基本的な骨子を素早く下書きすることができる。


パーソナライゼーション

カスタマーサポートでもリードジェネレーションでも、ChatGPTのような大規模な言語モデルを使ってビジネス向けカスタムチャットボットを構築することで、負荷を軽減することができる。 

これらのボットは、過去には制限があった。しかし、新しいオプションを使用すると、企業はブランドガイドラインから顧客プロファイルデータまですべてをボットに教え込むことができ、必要に応じてチームメンバーに引き継ぐことができるパーソナルな会話を作成できる。


調査や概要のまとめ

ChatGPTは、まだ事実に基づく応答を確実に提供することはできないものの、記事や調査、またはホワイトペーパーからテキストを貼り付け、その情報に基づく調査結果や意味合い、そして潜在的な行動の方向性をまとめることができる。

これらに加えて、最新のツールに注目し、マーケティングマネージャー向けにより良いリソース割り当てを、ストラテジスト向けにより強力な予測モデリングを、マーケティングアナリスト向けにより簡単な感情分析を提供しよう。


AIと人間の専門知識を両立させる

より多くのAI技術により、マーケティングオペレーションは、単純なレポートチームやスプレッドシートの戦士たちを、長期的なマーケティングおよびセールステクノロジーのビジョンを形成するのに役立つ本格的な技術戦略家へと進化させる機会を得ている。

しかし、すべての「労働者」タスクを自動化したとしても、アーキテクト(事業計画の立案)の必要性がなくなるわけではない。戦略的な設計をせずに実行することは、まさに、風が吹いた瞬間に崩壊する家を建てるのと同じことだ。

誰もがAIを使用しているなか、この技術競争で際立つのに必要なのは、AIを効果的に使用するためのフレームワークとプロセスだ。これらの基準が確立されれば、いつAIに頼るべきで、いつ人間の関与が必要なのかをチームに伝えやすくなる。

一方、間違った方法でAIに頼りすぎると、顧客の信頼を損なうようなコストのかかる間違いを犯す危険性がある。

より良いバランスを取るために、企業は、現在のMOpsチームがあらゆる形態のAIをより効果的に扱う方法を学ぶのを支援する必要がある。そうすることで、優れたマーケティングを際立たせる戦略的な人間の判断力を維持しながら、その可能性を活用できるようになるからだ。

※当記事は米国メディア「MarTech」の4/25公開の記事を翻訳・補足したものです。