米国のマーケティング分析コンサルティング企業TrustInsightのChristopher Penn氏とのQ&A形式で、AIを搭載したチャットボットがマーテックをより強力にするいくつかの方法について紹介しよう。
米国のOpenAI社が開発した自然な文章を生成する人工知能「ChatGPT」をはじめとするAI搭載のチャットボットは、今転換期を迎えている。
現在最も注目されているのは、MicrosoftとGoogleによる活用だ。これまでの議論は、マーケティングやSEOへの影響に関するものがほとんどだった。しかし、マーテックへの影響はどうだろうか?
TrustInsights.aiの共同創業者兼チーフデータサイエンティストのChristopher Penn氏は、すでに大きな変化と機会を生み出していると語る。
Q:このAIチャットボットがマーケティングにどのような影響を与えるかが話題になっているが、マーテックはどうだろうか?そこで何をもたらすと考えているか?
A:マーテックベンダーは、AIチャットボットを物事や作業を前進させるアクセラレーター(加速装置)として見るべきだ。これは、開発チームにとってのスピードアップツールになる。私は、既存のコードに組み込むために、Xを実行するコードの一部を大規模な言語モデルに求めることができるようになった。このおかげで、1ヶ月分の開発を数日間で終わらせることができた。まだ、その中でプログラムが生み出すおかしな部分を修正しなければならないが、AIチャットボットのおかげでその作業も速く行えるようになっている。
私は、AIチャットボットを、何よりもコーディングのために使っている。現状では、(ChatGPTは)経験豊富なプログラマーが見て、「よし、いいアイデアが浮かんだ!」と思える程度のコードを生成したり、あるコードの開発をスピードアップさせたりする。しかし、単純なものを除いては、すぐに実行できるような完璧なコードを書くことはできない。
AIチャットボットは、今のままでは代替ツールにはならないが、非常に特殊な目的のためにコードを生成できる、ファインチューニング(微調整)が可能なモデルを持つ企業は出てくるだろう。Python(1990年代初頭ごろから公開されている、オープンソースで運営されているプログラミング言語)に特化したライブラリやetc(各種プログラムの設定ファイルを格納したディレクトリ)に特化したライブラリというように。
Q: マーケティング担当者にとっては嬉しいニュースだが、マーテックを使っているマーケターにとってはどうだろうか?
マーテックにおいては他の用途もあるだろう。特に、回帰分析のような古典的な機械学習タスクは、リードスコアリング(見込み客の購買意欲をスコア化すること)のようなことを行うための例として挙げられる。繰り返しになるが、これらのツールは進捗を劇的に加速させる。また、私のお気に入りのタスクのひとつに、自分のコードを渡して、どうすればもっと効率的になるかを教えてもらうというものがあるが、10回中7回は、役に立つ提案をしてくれる。
これらのモデルがトランスフォーマーと呼ばれるのには理由がある(編集部注:ChatGPTのGPTは「Generative Pre-trained Transformer(チャット生成・事前訓練型トランスフォーマー)」の略である)。これは、何かを取り入れて、それを別のものに変えるのが得意なのだ。生成は申し分なく、精製は素晴らしく良い。そこに未開拓のパワーが多く存在する。
Q:他にどんな例があるか?
A:AIチャットボットは、コンテンツの再構築に適している。私は、子どもたちを連れて車で移動しながら、ボイスメモを録音し、それを文字に起こしてもらっている。書き起こして出てきたものは、印刷には適さないことは周知の事実だ。だが、それをモデルに取り込んで、記事に適した原稿に変換することができる。ここでも、あなたの声、あなたの事実、あなたの視点は守られる。しかし、AIチャットボットは混沌とした状態からそれらのものを文字に書き起こしているのだ。そのため、ニュースレターなどのコンテンツを大量に作成するのは非常に簡単な方法だ。またそれが、このツールが真価を発揮するところなのだ。
マーテックベンダーは、「過去10通の営業メールはこれだ。これをもっとプロフェッショナルなものに書き直そう」と言えるようになるべきだ。それでも、あなたの声、あなたの視点、あなたが取り入れた事実のデータはそのまま残る。このようなツールは、マーテックの分野でも大いに役立つだろう。
Q:コンテンツといえば、このテクノロジーは質問に答えるとき、ソースに直接リンクすることなく回答している。これは、コンテンツマーケティングに大きな影響を与える。コンテンツマーケティング担当者は、どの程度懸念すべきだろうか?
懸念される問題は、個々の企業ごとに異なってくるだろう。Google Analyticsのアカウントまたはウェブ解析のアカウントにアクセスし、オーガニック検索からのトラフィックとコンバージョンの割合を確認しよう。もしそれが大多数のチャンネルであるなら、ブランド検索と非ブランド検索の割合をもう少し掘り下げてみる必要がある。ブランド検索は、おそらくほとんど問題ないだろう。もし誰かが“Constantine von Hoffman”(本記事の執筆者)と検索したら?大規模な言語モデルでさえ、「あなたが探しているのはおそらくこの人だ」と応えるだろう。そして、Hoffman氏のウェブサイトやURLなどにアクセスすることができるようになる。
しかし、検索トラフィック、特にコンバージョン検索トラフィックの大部分を非ブランド検索が占めている場合は、非常に懸念する必要がある。そこでは、大規模な言語モデルが貴社のトラフィックを横取りし、貴社に何もメリットをもたらさないか、ほとんどメリットがないだろう。
というのも、Bingのチャット付きインターフェース、GPT、GoogleのBardインターフェースのプレビューを見たためだ。これらは、小さな脚注として出典を引用している。これに関する実際の調査を歓迎するが、私の直感では、人々は脚注をあまりよく読まずに(それを)クリックする傾向があるように思う。